「傷病手当金はいくらもらえるの?」と気になっている方のために、この記事では支給額の計算式から実際のシミュレーションまで丁寧に解説します。
難しそうに見える「平均賃金の2/3計算」も、3つのステップに分けると自分で計算できます。申請前に金額の見当をつけておくと、休業中の家計計画が立てやすくなります。
目次
- 傷病手当金とは|支給対象と基本ルール
- 支給額計算の基本構造|「平均賃金の2/3」とは何か
- 平均賃金の計算方法|3ステップ徹底ガイド
- 支給額シミュレーション|具体例で確認
- 申請期限・注意点・よくある落とし穴
- FAQ
傷病手当金とは|支給対象と基本ルール
傷病手当金とは、健康保険法第99条に基づき、被保険者が業務外の傷病で働けなくなったときに、生活費を補うために支給される給付金です。病気やけがで収入が途絶えることへの「所得補償」として機能します。
支給される4つの要件
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| ① 被保険者であること | 健康保険(協会けんぽ・組合健保)に加入していること |
| ② 業務外の傷病 | 仕事中・通勤中の事故は労災保険の対象のため除外 |
| ③ 就労不能であること | 医師が「療養のため労務不能」と診断していること |
| ④ 給与が支給されないこと | 休業期間中に給与が支払われていないこと |
⚠️ 待期期間(3日間)に注意
休み始めてから最初の連続3日間(待期期間)は支給対象外です。4日目以降から支給が始まります。この3日間は有給休暇でも欠勤でも構いません。
対象者と対象外
✅ 支給対象
– 会社員・契約社員(健康保険加入者)
– パート・アルバイト(健康保険加入者)
– 産前産後休業・育休からの職場復帰後の傷病
❌ 支給対象外
– 国民健康保険加入者(自営業者・フリーランスなど)
– 被扶養者(扶養に入っている家族)
– 公務員(共済組合の制度が別途あり)
支給額計算の基本構造|「平均賃金の2/3」とは何か
傷病手当金の基本計算式は次のとおりです。
傷病手当金(1日あたり)= 標準報酬日額 × 2/3
支給総額 = 傷病手当金の日額 × 支給日数
「標準報酬日額」とは、直近12か月の標準報酬月額の平均を30で割った金額のことです。
より具体的に展開すると:
標準報酬日額 =(直近12か月の標準報酬月額の合計 ÷ 12)÷ 30
傷病手当金の日額 = 標準報酬日額 × 2/3
📌 標準報酬月額とは?
毎年4〜6月の給与をもとに決定される「保険料計算の基準額」です。給与明細の「標準報酬月額」欄に記載されているほか、加入している健康保険組合や協会けんぽに確認できます。
なぜ2/3なのか|法的根拠と実務ルール
2/3という比率は健康保険法第99条第1項に明記されています。
背景には「完全な補償ではなく生活の最低限を保障する」という考え方があります。100%の補償にしてしまうと、働くより休んだほうが有利になるケースが生まれるため、給与の約67%を上限とした設計になっています。
また、給与の一部が支払われた場合の調整ルールがあります。
調整後の支給額 = 傷病手当金の日額 − 給与の日割り額
※給与の日割り額が傷病手当金の日額を超える場合、支給額は0円
たとえば、有給消化中で給与が満額支払われている日は傷病手当金は支給されません。
計算基準日(算定事由発生日)の決め方
傷病手当金の計算基準となるのは「療養のため労務不能になった日(起算日)」です。
- 医師の診断書に記載された「療養開始日」が起算日になります
- 申請日ではなく「休業を開始した日」がベースになる点に注意が必要です
- 過去にさかのぼって申請する場合(遡及申請)も、起算日は変わりません
平均賃金の計算方法|3ステップ徹底ガイド
ここからは実際の計算手順を、3つのステップで解説します。
ステップ1|標準報酬月額を確認する
まず、自分の標準報酬月額を把握します。
確認方法(3つ)
1. 給与明細:「標準報酬月額」「等級」として記載があることが多い
2. 年金定期便(ねんきん定期便):毎年誕生月に送られてくるハガキ
3. 健保組合・協会けんぽへの問い合わせ:電話または公式サイトのマイページ
💡 標準報酬月額は実際の給与と異なる場合があります
4〜6月の給与をもとに決定されるため、昇給・降給があった場合は最新の標準報酬月額と給与が一致しないことがあります。
ステップ2|標準報酬日額を算出する
直近12か月の標準報酬月額を使って日額を計算します。
標準報酬日額 =(直近12か月の標準報酬月額の合計 ÷ 12)÷ 30
具体例:標準報酬月額が12か月とも28万円の場合
(280,000円 × 12 ÷ 12)÷ 30 = 280,000 ÷ 30 ≒ 9,333円(端数切り捨て)
⚠️ 端数処理
計算結果に1円未満の端数が生じた場合は切り捨てとなります(健康保険法施行規則の規定による)。
ステップ3|2/3を掛けて1日あたりの支給額を算出する
傷病手当金の日額 = 標準報酬日額 × 2/3
先ほどの例を続けると:
9,333円 × 2/3 = 6,222円(端数切り捨て)
この日額に「支給される日数(待期期間3日を除いた休業日数)」をかけると支給総額が求まります。
支給額シミュレーション|具体例で確認
実際の状況をもとにシミュレーションしてみましょう。
ケース1:月給30万円・30日間休業した場合
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 標準報酬月額 | — | 300,000円 |
| 標準報酬日額 | 300,000 ÷ 30 | 10,000円 |
| 傷病手当金の日額 | 10,000 × 2/3 | 6,666円 |
| 支給対象日数 | 30日 − 待期3日 | 27日 |
| 支給総額 | 6,666 × 27 | 179,982円 |
ケース2:月給20万円・60日間休業した場合
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 標準報酬月額 | — | 200,000円 |
| 標準報酬日額 | 200,000 ÷ 30 | 6,666円 |
| 傷病手当金の日額 | 6,666 × 2/3 | 4,444円 |
| 支給対象日数 | 60日 − 待期3日 | 57日 |
| 支給総額 | 4,444 × 57 | 253,308円 |
ケース3:月給40万円・有給消化10日+傷病休業20日
- 有給消化中(10日):給与が支払われるため傷病手当金は0円
- 傷病休業(20日):支給対象(ただし待期期間3日は除く)
- 有給消化が待期期間を含む場合、別途待期の要件を満たすか確認が必要
標準報酬日額 = 400,000 ÷ 30 = 13,333円
傷病手当金の日額 = 13,333 × 2/3 = 8,888円
支給日数 = 20 − 3(待期)= 17日
支給総額 = 8,888 × 17 = 151,096円
申請期限・注意点・よくある落とし穴
申請期限(時効)
傷病手当金の申請期限は支給開始日の翌日から2年間です(健康保険法第193条)。
- 長期療養で気づいたら1年以上経っていた、という場合でも遡及申請できる可能性があります
- ただし2年を超えた分は時効により請求権が消滅するため注意が必要です
支給期間の上限
2022年1月の改正により、傷病手当金の支給期間の上限は「同一傷病につき通算1年6か月」に変更されました(改正前:支給開始から1年6か月の暦上の期間)。
【改正後のルール】
途中で仕事に復帰した期間は支給期間にカウントされない
→ 再休業した場合も通算で1年6か月になるまで受給可能
よくある落とし穴
❌ 間違いやすいポイント6選
-
標準報酬月額と手取り給与を混同する
→ 標準報酬月額は社会保険料や税金を控除する前の「総支給額ベース」で設定された等級による金額です -
待期3日間を連続でカウントしていない
→ 3日間は連続して休まないと待期が成立しません。週末をはさんでも連続とみなされます -
申請を月1回まとめてしまう
→ 申請は1か月ごとが一般的ですが、医師の記載期間と勤務先の証明期間を揃える必要があります -
有給消化との調整計算を忘れる
→ 有給を使った日は給与が支払われるため、その分の調整が行われます -
退職後の申請資格を確認していない
→ 退職後でも継続給付の要件(退職日時点で1年以上の被保険者期間・資格喪失前に受給中)を満たせば申請できます -
標準報酬月額が12か月未満の場合の計算
→ 被保険者期間が12か月に満たない場合は「①実際の被保険者期間の平均 ②28万円(全被保険者の平均標準報酬月額)」のいずれか低いほうを使用します
必要書類チェックリスト(協会けんぽの場合)
- [ ] 傷病手当金支給申請書(被保険者記入部分)
- [ ] 傷病手当金支給申請書(事業主記入部分)※勤務先に依頼
- [ ] 傷病手当金支給申請書(医師記入部分)※主治医に依頼
- [ ] (退職後申請の場合)資格喪失証明書
📮 提出先は「協会けんぽ 各都道府県支部」です。郵送・窓口持参のどちらでも受け付けています。
FAQ|よくある質問
Q1. パートタイマーでも傷病手当金を受け取れますか?
はい、受け取れます。パートやアルバイトでも健康保険(協会けんぽや組合健保)に加入していれば対象です。国民健康保険(国保)のみの加入では対象外となります。
Q2. うつ病・適応障害でも申請できますか?
できます。精神疾患も業務外の傷病であれば対象です。主治医(精神科・心療内科)が「療養のため労務不能」と診断書に記載していることが条件です。
Q3. 自分で計算した金額と実際の支給額が違う場合はなぜですか?
主な原因は以下の3点が考えられます。
- 標準報酬月額の等級が自分で把握していた金額と異なる
- 給与の一部が支払われており調整計算が入った
- 端数処理(切り捨て)による差異
実際の計算は健保組合・協会けんぽが行うため、支給決定通知書の内訳を確認のうえ、不明点は問い合わせましょう。
Q4. 標準報酬月額はどこで正確に確認できますか?
最も確実なのは健保組合・協会けんぽへの問い合わせです。協会けんぽの場合、「マイナポータル」でも自分の標準報酬月額を確認できます。
Q5. 申請書は毎月提出が必要ですか?
原則として、休業1か月ごとに申請するのが一般的です。申請書1枚に「被保険者・事業主・医師」の3者の証明が必要なため、受診のタイミングと申請期間を医師と確認しながら進めましょう。
Q6. 支給期間の「通算1年6か月」の数え方がわかりません
2022年1月以降の申請には「支給した日数の通算」が適用されます。たとえば6か月受給後に職場復帰し、再び体調を崩して休業した場合、残り12か月分を受給できます(通算1年6か月=547日まで)。
まとめ
傷病手当金の支給額計算は、以下の3ステップで求められます。
① 標準報酬月額を確認する(給与明細・健保組合・マイナポータル)
② 標準報酬日額を算出する(12か月平均 ÷ 30)
③ 2/3を掛けて日額を算出し、支給日数を掛ける
目安早見表
| 月収(標準報酬月額) | 日額の目安 | 30日休業時の支給額目安 |
|---|---|---|
| 20万円 | 約4,444円 | 約119,988円(27日分) |
| 28万円 | 約6,222円 | 約167,994円(27日分) |
| 30万円 | 約6,666円 | 約179,982円(27日分) |
| 40万円 | 約8,888円 | 約239,976円(27日分) |
計算に不安がある場合は、協会けんぽの窓口や社会保険労務士に相談することをおすすめします。申請期限は支給開始日の翌日から2年間ですが、早めに申請することで生活の不安を早期に和らげることができます。
本記事の情報は2024年時点の法令・制度に基づいています。制度改正が行われる場合がありますので、申請時は必ず協会けんぽ・加入健保組合の公式情報をご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 傷病手当金はいくらもらえますか?
A. 標準報酬日額の2/3が1日あたりの支給額です。直近12か月の平均給与を基準に計算され、通常は給与の約67%が目安となります。
Q. 傷病手当金の計算に必要な情報は何ですか?
A. 標準報酬月額(給与明細または健保から確認可能)と休業日数があれば計算できます。計算式は「標準報酬日額×2/3×支給日数」です。
Q. 待期期間とは何ですか?支給されませんか?
A. 休み始めから最初の連続3日間は支給対象外です。4日目から支給対象になります。有給休暇でも欠勤でも待期期間の扱いは同じです。
Q. 給与を一部受け取った場合、傷病手当金はどうなりますか?
A. 支給額から給与分が差し引かれます。給与が傷病手当金より多い場合は支給額は0円になることもあります。
Q. 傷病手当金を申請する前に自分で計算できますか?
A. はい。標準報酬月額を確認し、直近12か月分を合計して12で割り、さらに30で割った後に2/3を掛けると計算できます。

