オンライン診療を利用したとき、「この医療費は高額療養費の計算に含まれるの?」「限度額認定証は使えるの?」と不安になる方は多いはずです。
結論から伝えます。オンライン診療の診療料・処方箋料・薬の調剤料は、すべて健康保険の保険診療として扱われるため、高額療養費制度の対象です。 限度額認定証も条件次第で使えます。ただし、薬の配送料・通信料・システム利用料など「患者が自分で選んで負担する費用」は対象外になるため、混同しないよう注意が必要です。
この記事では、費目ごとの対象・非対象の一覧表、限度額認定証の使い方と窓口での提示手順、事後申請の手続きフロー、そして薬配送料の扱いに関する厚生労働省の通知内容まで、2025年時点の最新情報にもとづいて詳しく解説します。
オンライン診療の医療費は高額療養費の対象になる
オンライン診療が保険診療になった経緯
高額療養費制度(健康保険法第115条)は、1か月の保険診療にかかる自己負担額が一定の限度額を超えた場合に、超過分を健康保険が後から支給する制度です。対象になるのは「保険診療」として認められた医療費に限られます。
オンライン診療が保険診療として位置づけられたのは比較的最近のことです。
- 2018年度診療報酬改定:「オンライン診療料」「オンライン医学管理料」が診療報酬点数表に新設され、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの慢性疾患管理を中心に保険適用が始まりました。
- 2020年4月(新型コロナウイルス特例): 初診からのオンライン診療が時限的・特例的に認められ、その後恒久化への議論が進みました。
- 2022年度診療報酬改定: 「かかりつけ医の要件」「前回受診から3か月以内」などの算定要件が緩和され、初診・再診ともにオンライン診療が広く保険診療として認められるようになりました。
この経緯から、2025年現在においてオンライン診療は健康保険法上の「保険診療」であり、高額療養費制度の計算対象に含まれます。
費目別の対象・非対象一覧
オンライン診療を利用したときに発生する費用は複数の費目に分かれます。どれが高額療養費の対象になり、どれがならないのかを以下の表に整理しました。
| 費目 | 高額療養費の対象 | 解説 |
|---|---|---|
| オンライン診療料 | ✅ 対象 | 診療報酬点数表に収載された保険診療費 |
| オンライン医学管理料 | ✅ 対象 | 慢性疾患の継続管理に対する診療報酬 |
| 処方箋料 | ✅ 対象 | 医師が処方箋を交付する際の保険診療費 |
| 薬局での調剤料・薬剤費 | ✅ 対象 | 保険調剤として算定される費用全般 |
| オンライン服薬指導料 | ✅ 対象 | 薬剤師がオンラインで行う服薬指導の報酬 |
| 薬の配送料(薬局が設定) | ⚠️ 原則対象外 | 後述の厚労省通知による区分あり(詳細は次節) |
| 通信料(患者負担) | ❌ 対象外 | 診療そのものの費用ではなく患者側の設備費用 |
| システム利用料(患者負担) | ❌ 対象外 | プラットフォームへの手数料は自由診療扱いの選択費用 |
| 自由診療のオンライン診察 | ❌ 対象外 | 保険外診療は制度の計算に含まれない |
ポイント: 「保険診療として診療報酬点数表に収載されているかどうか」が判断の基準です。診察・処方・調剤は収載されており対象になります。一方、通信料やシステム利用料は医療行為そのものではなく患者が任意で負担するものなので対象外です。
薬の配送料はどう扱われるか
オンライン診療では、処方された薬を薬局窓口ではなく自宅に郵送・宅配してもらえる「医薬品配送サービス」を利用するケースが増えています。この配送料の扱いについては誤解が多いため、厚生労働省の通知内容とあわせて丁寧に解説します。
厚生労働省の通知(令和2年7月13日付)の内容
2020年7月13日付の厚生労働省保険局通知では、オンライン診療・オンライン服薬指導による処方薬の配送に関して以下の方針が示されました。
調剤報酬の算定に付随する配送(薬局が保険診療の一環として送付する場合)は、高額療養費計算上の自己負担に含まれる可能性があるとされた一方、患者が任意に選択する配送オプション(患者負担として別途請求される送料)は保険外費用とされています。
実務上は以下のように整理されます。
| 配送形態 | 費用の性質 | 高額療養費の対象 |
|---|---|---|
| 薬局が処方薬の送付時に負担する配送費(薬局側経費) | 薬局の業務コスト(調剤報酬に内包) | ✅ 計算に含まれる |
| 患者が別途支払う配送手数料(例:送料300円など) | 患者の任意選択による自己負担 | ❌ 対象外 |
| 薬局での対面受け取り(オンライン診療後に薬局に行く) | 通常の保険調剤と同じ | ✅ 対象 |
実際の請求書(領収書)で「調剤料」「薬剤料」として記載されている部分は対象、「配送手数料」「送料」として別建てで記載されている部分は対象外と考えると分かりやすいでしょう。
電子処方箋と薬局受け取りの場合
2023年以降、電子処方箋の普及が進み、オンライン診療後にアプリ上で処方箋データを受け取り、近くの薬局で薬を受け取るケースも増えています。この場合、薬局での対面受け取りになるため配送料自体が発生せず、調剤費用全額が高額療養費の対象になります。配送料の問題を避けたい方には、電子処方箋+薬局受け取りの組み合わせが最もシンプルです。
限度額認定証はオンライン診療でも使えるか
使える場面と使い方
オンライン診療でも限度額適用認定証(以下、限度額認定証)は使用できます。 ただし、適用できる場面は「薬局での調剤費用の支払い時」が基本になります。
オンライン診療そのものは「医療機関窓口での対面支払い」が発生しないケースが多く、支払いはクレジットカードやキャリア決済で行われることが一般的です。限度額認定証は「窓口での支払い」を限度額内に抑えるための証明書であるため、オンライン診療プラットフォームの決済画面に直接提示することはできません。
ただし、以下のパターンでは有効に機能します。
パターン①:オンライン診療後、薬局に対面で薬を取りに行く場合
薬局の窓口で限度額認定証を提示すると、薬局での調剤費用の支払いが自己負担限度額の範囲内に抑えられます。オンライン診療での診察料は別途支払い済みのため、薬局での支払い分だけが認定証の対象になります。
パターン②:同月に対面の入院・外来もある場合
オンライン診療と対面診療を同じ月に利用している場合、それぞれの保険診療費を合算した上で高額療養費の計算が行われます。対面での入院や外来では限度額認定証を提示して窓口負担を抑え、オンライン診療分は事後に還付申請する、というハイブリッドな対応が現実的です。
パターン③:同月の医療費が多くなる見込みで事前申請する場合
オンライン診療だけでなく、対面受診・入院・手術なども予定されており、月の医療費合計が限度額を超えると見込まれるなら、事前に限度額認定証を取得しておくことをお勧めします。
限度額認定証の申請方法
| ステップ | 手続き内容 |
|---|---|
| ①加入保険を確認 | 会社員→協会けんぽ or 組合健保、自営業→国民健康保険(市区町村) |
| ②申請書を入手 | 各保険者のウェブサイトからダウンロード、または窓口・郵送で取り寄せ |
| ③申請書に記入・提出 | 氏名・生年月日・被保険者証番号・所得区分の確認が必要 |
| ④認定証を受け取る | 協会けんぽは申請後約1週間で郵送。マイナンバーカード保険証対応医療機関なら認定証不要 |
| ⑤窓口・薬局で提示 | 月初めから有効、提示忘れは事後に高額療養費申請で還付可能 |
マイナンバーカード活用のヒント: マイナンバーカードを健康保険証として利用している場合、限度額認定証の事前申請が不要になることがあります。オンライン資格確認システムが導入されている薬局・医療機関では、カード1枚で自己負担限度額が自動的に適用されます。2025年現在、対応窓口は急速に拡大中です。
自己負担限度額の計算方法と所得区分
高額療養費の還付額を把握するには、自分の所得区分と自己負担限度額を知る必要があります。
2025年現在の自己負担限度額(70歳未満・被用者保険)
| 所得区分 | 標準報酬月額の目安 | 自己負担限度額の計算式 |
|---|---|---|
| 区分ア(高所得) | 83万円以上 | 252,600円+(総医療費-842,000円)×1% |
| 区分イ | 53万〜79万円 | 167,400円+(総医療費-558,000円)×1% |
| 区分ウ | 28万〜50万円 | 80,100円+(総医療費-267,000円)×1% |
| 区分エ(一般) | 26万円以下 | 57,600円(定額) |
| 区分オ(低所得) | 住民税非課税 | 35,400円(定額) |
計算例(区分ウ・総医療費50万円の場合):
自己負担限度額 = 80,100円 +(500,000円 - 267,000円)× 1%
= 80,100円 + 233,000円 × 0.01
= 80,100円 + 2,330円
= 82,430円
3割負担なら窓口支払いは150,000円ですが、高額療養費として150,000円-82,430円=67,570円が還付されます。
同一月・同一世帯の合算: 同じ月に同じ世帯内の複数人が医療機関を受診した場合、それぞれの自己負担額を合算して限度額と比較できます。オンライン診療での自己負担分も、対面診療や薬局での支払いと合算の対象になります。
事後申請(還付申請)の手続きフロー
申請が必要になるのはどんなケース
限度額認定証を提示せずに支払いを終えた場合や、オンライン診療のプラットフォーム決済で限度額が適用されなかった場合は、事後に高額療養費の還付申請を行います。
申請期限:診療を受けた月の翌月1日から2年間(時効に注意)
申請の流れ
① 医療機関・薬局・オンライン診療サービスから領収書を受け取る
↓
② 同月分の保険診療費をすべて合計し、限度額を超えているか確認
↓
③ 加入している保険者(協会けんぽ・組合健保・市区町村等)に申請書を請求
↓
④ 必要書類を揃えて申請書に記入・提出
↓
⑤ 保険者が審査・支給決定(申請から約3か月が目安)
↓
⑥ 指定口座に還付金が振り込まれる
申請に必要な書類
| 書類 | 入手先・備考 |
|---|---|
| 高額療養費支給申請書 | 保険者のウェブサイト・窓口で取得 |
| 健康保険証(写し) | 被保険者・被扶養者の分 |
| 医療機関・薬局の領収書 | オンライン診療の明細書も含む(原本保管推奨) |
| 振込先口座の通帳・キャッシュカード(写し) | 本人名義の口座 |
| マイナンバー確認書類 | 一部の保険者で必要 |
オンライン診療の領収書に関する注意: オンライン診療サービスによっては、領収書がPDF形式でアプリ内に発行されます。印刷して保管しておくか、申請時に提示できる状態にしておきましょう。「診療費明細書」として診療内容(点数・費目)が記載されているものが望ましいです。
協会けんぽの場合の申請先
会社員で協会けんぽに加入している場合、申請先は全国健康保険協会の各都道府県支部です。郵送申請が可能で、マイページ(e-Gov連携)からのオンライン申請にも順次対応しています。
医療費控除との違い・組み合わせ方
高額療養費制度と似た制度に「医療費控除」がありますが、目的・タイミング・対象費用が異なります。
| 比較項目 | 高額療養費制度 | 医療費控除(確定申告) |
|---|---|---|
| 目的 | 1か月の医療費が高額になったときの給付 | 年間の医療費が10万円超の場合の所得控除 |
| 手続きタイミング | 月単位で申請(診療翌月以降) | 年1回・確定申告時 |
| 通信料・配送料 | 対象外 | 配送料は対象になる場合あり(詳細後述) |
| 交通費(通院) | 対象外 | 対象(公共交通機関利用分) |
| 高額療養費との関係 | 還付後の実際の自己負担額が控除の計算ベース |
重要:医療費控除の計算では、高額療養費として還付を受けた金額を差し引いた「実際の自己負担額」を使います。 還付前の医療費全額で申告すると過少申告になるため注意してください。
オンライン診療の医療費控除における配送料の扱い:
確定申告上の医療費控除では、「治療のために必要な費用」と認められれば配送料も対象になる場合があります。薬の配送が治療上必要だったことを説明できる状況(外出困難・感染症対策等)では、税務署に相談のうえ申告するとよいでしょう。ただし、高額療養費とは扱いが異なる点に注意が必要です。
慢性疾患患者がオンライン診療を賢く活用するポイント
高血圧・糖尿病・脂質異常症などの慢性疾患を管理しながらオンライン診療を継続的に利用している方向けに、医療費を最小化するための実践的なポイントをまとめます。
毎月の支払いを「見える化」する
オンライン診療、対面診療、薬局での支払いがバラバラに発生するため、同月内の保険診療費の合計を把握しにくくなりがちです。以下を月ごとに記録する習慣をつけましょう。
- オンライン診療の決済明細(アプリ・メール)
- 薬局の領収書(保険調剤分の金額)
- 対面診療の領収書
同月合計が自己負担限度額を超えていれば、事後申請で還付を受けられます。
多数回該当を活用する
同一世帯で直近12か月以内に3回以上高額療養費が支給されている場合、4回目以降は「多数回該当」として自己負担限度額がさらに低くなります。
| 所得区分 | 多数回該当後の限度額 |
|---|---|
| 区分ア | 140,100円 |
| 区分イ | 93,000円 |
| 区分ウ | 44,400円 |
| 区分エ | 44,400円 |
| 区分オ | 24,600円 |
オンライン診療と対面診療を組み合わせて医療費が高い月が続いている場合、この多数回該当に当たる可能性があります。必ず直近12か月の申請履歴を保険者に確認してください。
世帯合算で還付額を増やす
同一世帯・同一月であれば、オンライン診療を使っている家族Aの自己負担と、対面診療を受けた家族Bの自己負担を合算して高額療養費を申請できます。個別では限度額に届かなくても、合算すると超える場合があるため、世帯全員分の領収書をまとめて管理することが重要です。
よくある質問
Q1. オンライン診療のシステム利用料(月額制のアプリ代など)は医療費控除の対象になりますか?
オンライン診療プラットフォームへのシステム利用料・月額会費は、医療費控除の対象にはなりません。これは「治療のための費用」ではなく「通信・情報サービス利用のための費用」と判断されるためです。高額療養費制度でも同様に対象外です。
Q2. オンライン診療後、薬が手元に届く前に月が変わってしまいました。どの月の医療費として計算しますか?
高額療養費の計算は「診療を受けた月」が基準です。薬の配送が翌月に届いたとしても、処方が行われた月(診療月)の医療費として集計されます。月をまたぐ場合でも、処方日・調剤日が記載された領収書の日付を確認してください。
Q3. 自由診療のオンライン診療(美容・予防接種のみ・検診目的など)は高額療養費の対象になりますか?
なりません。高額療養費制度は健康保険が適用される「保険診療」にのみ適用されます。保険外の自由診療・自費診療は全額自己負担であり、制度の計算には含まれません。ただし、一部の費用は医療費控除の対象になる場合があります。
Q4. 限度額認定証を取得するのに所得証明が必要ですか?
協会けんぽや組合健保の場合、申請書提出時に改めて所得証明書を求められることは原則ありません。保険者側で所得区分(標準報酬月額)を把握しているためです。ただし、国民健康保険の場合は前年の所得情報が必要になるケースがあるため、加入の市区町村窓口に確認してください。
Q5. オンライン診療を提供するクリニックが閉院してしまい、領収書を再発行してもらえません。申請できますか?
領収書がない場合でも、診療報酬明細書(レセプト)の開示請求を通じて医療費の証明を得られる場合があります。加入保険者に相談し、「診療報酬明細書の開示請求」を行うか、代替書類での申請が可能かどうか確認してみてください。
Q6. 家族がオンライン診療を使っていますが、私の会社の健保で合算申請できますか?
被扶養者の医療費は被保険者(会社員本人)の健保で合算申請できます。同一月・同一健保組合に属する世帯員の保険診療費であれば、オンライン診療分も含めて合算の対象になります。家族分の領収書・申請書もまとめて提出してください。
まとめ:オンライン診療と高額療養費の要点
オンライン診療と高額療養費制度の関係を整理すると、以下の5点が核心です。
- オンライン診療の診察料・処方箋料・調剤費は保険診療として高額療養費の対象になる
- 患者が自己負担する通信料・システム利用料・配送手数料は対象外
- 限度額認定証はオンライン診療後の薬局窓口で使用でき、マイナンバーカード対応窓口なら認定証不要
- オンライン診療分も対面診療・入院費と同月に合算して申請できる(世帯合算も可能)
- 申請期限は診療月の翌月1日から2年間。領収書はPDF含めて必ず保管する
デジタル医療の普及とともに、オンライン診療はますます日常的な医療の選択肢になっています。「オンラインだから制度が使えないのでは」と思い込んで申請をあきらめるのは非常にもったいないことです。受診のたびに領収書を保管し、月単位で医療費を集計する習慣が、医療費節約の第一歩になります。
免責事項: 本記事は2025年時点の制度・通知にもとづく一般的な情報提供を目的としています。保険者の判断・申請の可否は個別の状況によって異なる場合があります。具体的な申請については、加入保険者(協会けんぽ・組合健保・市区町村国保)または社会保険労務士・医療ソーシャルワーカーにご相談ください。

