医療費控除で認知症検査は対象?MRI・PET・診察料を徹底解説

医療費控除で認知症検査は対象?MRI・PET・診察料を徹底解説 医療費控除

認知症の疑いで病院を受診したとき、「この検査代って確定申告で戻ってくるの?」と思ったことはないでしょうか。

MRI・PET・神経心理検査など、認知症の診断に使われる検査は種類も費用もさまざま。しかも「運転免許の認知機能検査は対象外」など、似て非なる費用が混在しているため、何が控除できて何がダメなのかを正確に把握するのは簡単ではありません。

この記事では、認知症検査・診断にかかった医療費の控除対象判定を早見表で整理したうえで、申告手順・計算式・必要書類まで2026年最新情報をもとに徹底解説します。



1. 医療費控除の基本と法的根拠

制度の根拠法令

医療費控除は所得税法第73条に定められた所得控除制度です。自己負担した医療費が一定額を超えた場合に、超過分を課税所得から差し引くことができます。

所得税法第73条(要旨)
居住者が、自己または自己と生計を一にする配偶者その他の親族のために医療費を支払った場合において、その年中に支払った医療費が10万円を超えるときは、その超える部分の金額を、その年分の総所得金額等から控除する。

控除対象となる医療費の範囲は所得税施行令第211条で具体的に規定されており、「医師・歯科医師による診療・治療の対価」「医師の指示による検査費用」などが含まれます。

控除の基本スペック

項目 内容
控除の種類 所得控除(課税所得を減らす)
控除下限額 10万円(所得200万円未満の方は総所得金額等の5%)
控除上限額 年間200万円
申告方法 確定申告(還付申告)
申告期限 翌年2月16日〜3月15日(還付申告は翌年1月1日から5年間可)
法的根拠 所得税法第73条、所得税施行令第211条

ポイント:「控除」=支払う税金が減る仕組み
医療費控除は「払ったお金が全額戻る」制度ではなく、課税所得が減ることで所得税・住民税の支払額が下がる制度です。実際の還付額は「控除額 × 適用税率」で計算されます(詳しくは第7章で解説)。


2. 認知症検査費用の対象判定早見表

認知症に関係する費用は「医療行為か否か」「医師の指示があるか否か」の2軸で判定します。以下の早見表で確認してください。

検査・費用の種類 保険適用 医療費控除 判定理由・条件
初診料・再診料(認知症専門外来) 対象 医師による診察行為そのもの
神経心理検査(MMSE・MoCA等) ✅一部 対象 医師の指示による検査費用
MRI検査(脳萎縮・形態評価) 対象 医師の指示による画像診断
CT検査(脳血管障害の除外等) 対象 医師の指示による画像診断
脳脊髄液検査(アミロイドβ等) 対象 バイオマーカー検査・医療行為
SPECT検査(脳血流画像) 対象 医師の指示による核医学検査
PET検査(アミロイドPET等) △限定 条件付 保険適用外の場合も診断目的なら対象(詳細は第5章
自由診療の認知症検査 対象 診断目的の医療行為であれば対象
医師作成の診断書料 対象外 診断・治療目的ではなく証明書の作成費用
処方薬(抗認知症薬等) 対象 医師の処方に基づく薬代
通院交通費(公共交通機関) 対象 電車・バス等の実費(領収書不要・記録が必要)
通院タクシー代 条件付 歩行困難など医療上の必要性がある場合のみ
運転免許更新の認知機能検査 対象外 行政手続きであり医療行為ではない
健康診断目的の認知機能テスト 対象外 疾病の診断・治療目的ではない
認知症予防教室・講座費用 対象外 医療行為ではなく自己啓発
認知症カフェ利用費 対象外 福祉サービス・医療行為ではない

判定の大原則
医療費控除の対象になるのは、「医師(または歯科医師)による診療・治療・医師の指示に基づく検査の対価」です。行政手続きの費用・予防目的の活動費・証明書取得費用は原則として対象外となります。


3. 「初期症状での受診」が特に重要な理由

認知症の医療費控除を考えるうえで、「初期症状の段階で受診した費用も対象になるのか?」という疑問は非常に多く寄せられます。

結論:初期症状での受診費用は対象になる

「もの忘れが気になる」「言葉が出にくくなった」といった初期症状の段階で医療機関を受診した場合の費用も、医療費控除の対象です。

理由は明確です。医療費控除の要件は「確定診断がついた医療費」ではなく、「疾病の診断・治療を目的として医師が行った医療行為の対価」だからです。

つまり次のような流れで発生する費用は、すべて対象になります。

【初期症状での受診〜診断確定までの費用フロー】

①もの忘れ外来・認知症専門外来への初診(初診料)
  ↓ ◎対象
②問診・神経学的診察(再診料・検査料)
  ↓ ◎対象
③神経心理検査(MMSE・MoCA等)
  ↓ ◎対象
④MRI・CT検査(脳萎縮・血管病変の評価)
  ↓ ◎対象
⑤血液検査・脳脊髄液検査(鑑別診断)
  ↓ ◎対象
⑥確定診断・処方(抗認知症薬)
  ↓ ◎対象

診断がついていない段階の検査費用も対象です。「結果が正常だったから控除できないのでは?」と心配する方もいますが、診断の結果ではなく「医師が医療行為として行ったか否か」で判断されます。

「医師の指示」がキーワード

神経心理検査(MMSE・MoCAなど)は、医師の指示に基づいて実施される場合は医療費控除の対象です。一方、インターネット上の無料認知症チェックや、ドラッグストアで購入する認知症チェックキットなどは、医師による医療行為ではないため対象外となります。


4. 運転免許の認知機能検査はなぜ対象外なのか

「高齢者講習で受けた認知機能検査の費用は控除できますか?」という質問は非常に多いですが、答えは明確に「対象外」です。

法的性質の違いが判定を分ける

項目 病院での認知症検査 運転免許更新時の認知機能検査
実施根拠 医師による医療行為 道路交通法第97条の2
目的 疾病の診断・治療 運転適性の行政的判定
実施者 医師 公安委員会指定の検査員
費用の性質 医療費 行政手続き費用
医療費控除 ◎ 対象 ✗ 対象外

運転免許更新時の認知機能検査は「道路交通法に基づく行政手続き」であり、「疾病の診断・治療を目的とした医療行為」ではありません。所得税法上の医療費控除の対象は「医師による診療・治療の対価」に限られるため、行政手続きの費用は除外されます。

混同しやすいケース
「運転免許更新の認知機能検査で問題があり、医師の診断書提出を求められたため、病院を受診した」という場合。この場合、病院での受診費用(診察料・MRIなど)は医療費控除の対象になります。ただし、診断書の作成費用(文書料)は「証明書の発行費用」であるため対象外です。


5. PET検査の医療費控除:条件付き対象の詳細

アミロイドPETなどのPET検査は高額になりやすく(自由診療の場合は15〜30万円程度)、控除対象かどうかが特に重要です。

PET検査の保険適用状況(2026年時点)

PET検査の種類 保険適用状況 医療費控除
アミロイドPET(早期アルツハイマー診断) 限定的(軽度認知障害〔MCI〕の診断補助として特定条件下で保険適用) 対象(診断目的であれば保険外でも対象)
FDG-PET(脳代謝評価) 一部保険適用 対象
タウPET 原則保険適用外(研究段階) 対象(診断目的の医療行為として実施の場合)

自由診療のPET検査でも対象になる理由

医療費控除の対象は「保険適用の医療費」に限られません。自由診療(全額自己負担)であっても、医師の判断による医療行為であれば対象になります。

所得税施行令第211条は「医師・歯科医師による診療・治療の対価」と規定しており、保険適用の有無は問いません。したがって、アミロイドPETを自費で受けた場合も、医師の指示に基づく診断目的の検査であれば医療費控除の対象です。

注意点
PET検査を「ドック(人間ドック)」として受けた場合、原則として対象外になります。ただし、ドック結果で異常が発見され、引き続き医師の指示で精密検査を受けた場合は、精密検査以降の費用が対象になります(人間ドック費用自体は対象外のまま)。


6. 生計を一にする親族の医療費も合算できる

「生計を一にする」とは

親が認知症の疑いで検査を受けた場合、その費用を子どもの確定申告で合算して控除できます。条件は「生計を一にしている」こと。

「生計を一にする」とは、必ずしも同居を意味しません。以下のケースも含まれます。

  • 別居しているが、子どもが仕送りをして親の生活費・医療費を負担している
  • 親の施設入居費・医療費を子どもが一括で支払っている
  • 週末だけ帰省して世話をしており、主たる生計を子どもが支えている

扶養控除の有無は関係ない

「扶養に入れていないと合算できない」と誤解している方が多いですが、扶養控除の対象でなくても、生計を一にしていれば合算可能です。

たとえば、親の年金収入が103万円を超えているため扶養控除の対象外であっても、実質的に子どもが医療費を負担していれば、その医療費を子どもの医療費控除に含めることができます。

合算できる家族の範囲

続柄 合算の可否 条件
配偶者 生計を一にする
子ども(未成年) 生計を一にする
子ども(成人・同居) 生計を一にする
子ども(成人・別居) 仕送り等で生計を一にする
親(同居) 生計を一にする
親(別居) 仕送り等で生計を一にする
兄弟姉妹(別居・独立) 生計が別であれば不可

実務上のポイント
親の医療費の領収書は、支払った人(子ども)が保管し、子どもの確定申告で使用します。親が先に領収書を受け取った場合も、後から子どもが保管できます。ただし、医療費を支払った人が申告するのが原則ですので、実際に誰が支払ったかを明確にしておきましょう。


7. 医療費控除の計算式と還付額のシミュレーション

基本の計算式

【医療費控除額の計算式】

医療費控除額 = 実際に支払った医療費の合計額
             − 保険金等で補填された金額
             − 10万円(※所得200万円未満の場合は総所得金額等 × 5%)

※控除額の上限:200万円

実際の還付額の計算式

【所得税の還付額】
還付額(所得税)= 医療費控除額 × 所得税率(5%〜45%)

【住民税の軽減額】
軽減額(住民税)= 医療費控除額 × 10%
※住民税は翌年度の税額が軽減される形になります

認知症検査費用を含む還付シミュレーション例

前提条件
– 申告者:55歳、給与所得者、課税所得400万円(所得税率20%)
– 父親(80歳・別居・仕送りあり)が認知症疑いで受診

費用の内訳 金額
父の初診料・再診料(計5回) 15,000円
父の神経心理検査(MMSE・MoCA) 12,000円
父のMRI検査 25,000円
父のアミロイドPET検査(自由診療) 180,000円
父の通院交通費(バス・電車) 8,000円
申告者本人の年間医療費(歯科・内科等) 65,000円
合計 305,000円
保険金等の補填 0円
【計算】
医療費控除額 = 305,000円 − 0円 − 100,000円
             = 205,000円

所得税還付額 = 205,000円 × 20% = 41,000円
住民税軽減額 = 205,000円 × 10% = 20,500円

合計節税効果 = 61,500円

この例では、アミロイドPET検査(18万円)を含む認知症関連費用を申告することで、約6万円以上の税負担軽減が実現できます。

10万円の壁を超えるための考え方
認知症検査費用だけでは10万円を超えない場合でも、同一生計内の家族全員の医療費を合算すれば超えられることがあります。年間を通じて「生計を一にする家族全員の医療費領収書」を一括管理する習慣をつけましょう。


8. 確定申告の申告手順(ステップ別)

STEP 1:医療費の領収書を集める(1月〜申告時まで)

  • 受診した医療機関の領収書をすべて保管
  • 通院に使った公共交通機関の交通費を記録(メモ・手帳・スマホのメモアプリでOK。領収書は不要)
  • 生計を一にする家族分も含めて収集

領収書がない場合
2017年以降、「医療費控除の明細書」への記入が必要になり、領収書の添付は原則不要になりました。ただし5年間は領収書の保管義務があり、税務署から提出を求められた際は提示しなければなりません。「医療費のお知らせ」(健康保険組合発行)を使う場合は、明細書の記載を一部省略できます。


STEP 2:医療費控除の明細書を作成する

国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で作成するか、書面(「医療費控除の明細書」)に手書きで記入します。

明細書に記入する主な項目

記入項目 記入例
医療を受けた人の氏名 山田太郎(父)
病院・薬局等の名称 ○○大学病院 認知症センター
医療費の区分 診療・治療
支払った医療費の額 180,000円
保険金等で補填された額 0円

STEP 3:確定申告書を作成・提出する

推奨:国税庁「確定申告書等作成コーナー」(e-Tax)

【e-Taxでの申告フロー】

① 国税庁サイトにアクセス
   → 「確定申告書等作成コーナー」を選択

② 申告書の種類を選択
   → 「所得税」→「給与所得者の還付申告」を選択

③ 給与情報を入力
   → 源泉徴収票の内容を転記

④ 医療費控除を入力
   → 「医療費控除の明細書」データを入力
   → 合計額・補填額を確認

⑤ 控除額・還付額を確認
   → 自動計算された還付額を確認

⑥ 提出
   → マイナンバーカード+スマホでオンライン提出
   → または印刷して郵送・持参提出

⑦ 還付金の受け取り
   → 申告から約3〜4週間後に指定口座へ振込

9. 必要書類チェックリスト

確定申告(還付申告)に必要な書類を確認しましょう。

全員が必要な書類

  • [ ] 源泉徴収票(給与所得者の場合。勤務先から1月下旬〜2月に発行)
  • [ ] 医療費控除の明細書(国税庁書式。e-Taxで入力する場合は不要)
  • [ ] 医療費の領収書(提出不要だが5年間保管)
  • [ ] マイナンバーカードまたは番号確認書類+身元確認書類
  • [ ] 還付金振込先の銀行口座情報

認知症検査費用に関して追加で準備するもの

  • [ ] 通院交通費の記録(日付・交通機関・経路・金額をメモしたもの)
  • [ ] 親など別居家族の医療費を合算する場合:仕送りの実績が分かる書類(振込明細等)を手元に保管しておくと安心
  • [ ] 「医療費のお知らせ」(健康保険組合から送付される場合。明細書記載の一部省略に使用可)

診断書料(文書料)の領収書は控除対象外
病院からもらった「文書料」「診断書料」の領収書は医療費控除の対象外です。明細書に記入しないよう注意してください。


10. 申告期限と還付申告の特例

通常の確定申告期限

申告区分 期間
確定申告(通常) 翌年2月16日〜3月15日
還付申告(医療費控除のみ等) 翌年1月1日〜5年間

還付申告の特例が使える方

給与所得者で医療費控除のみを申告する場合は、確定申告期間(2月16日)を待たずに1月1日から申告できます。また、過去の年分の申告漏れも、5年以内であれば遡って申告可能です。

【遡り申告が可能な年数】
2026年に申告できる最古の年分:2021年分(5年前)

過去に認知症検査費用を申告し忘れていた方は、今からでも手続きできる可能性があります。税務署または税理士に相談することをお勧めします。


11. FAQ

Q1. 認知症の診断がつかなかった場合でも、検査費用は医療費控除の対象になりますか?

A. はい、対象になります。医療費控除の対象は「確定診断がついた医療費」ではなく「医師が診断・治療目的で行った医療行為の対価」です。「異常なし」の結果でも、医師の指示で行ったMRI・神経心理検査等は控除できます。


Q2. 認知症専門外来への通院タクシー代は対象になりますか?

A. 原則として対象外ですが、歩行が困難な状態・公共交通機関の利用が著しく困難な医療上の理由がある場合は対象になります。電車・バスなどの公共交通機関の交通費は領収書がなくても対象です。


Q3. 健康保険組合から「医療費のお知らせ」が届きました。これだけで申告できますか?

A. 「医療費のお知らせ」を使うと「医療費控除の明細書」の一部記入を省略できますが、記載されていない費用(自由診療・交通費等)は別途記入が必要です。また、1〜11月分しか記載されていない場合は12月分を別途記入する必要があります。


Q4. 市販の認知症予防サプリや書籍代は対象になりますか?

A. なりません。医療費控除の対象は「医師による医療行為の対価」に限られます。サプリメント・健康食品・書籍・講座費用などは、いずれも対象外です。


Q5. 親が介護施設に入居しています。施設での認知症治療費・服薬管理費用は対象になりますか?

A. 介護施設での医療費は施設の種類によって扱いが異なります。特別養護老人ホーム(特養)・介護老人保健施設(老健)は医療費控除の対象となる費用が一部あります(施設から発行される「医療費控除対象額証明書」を確認)。グループホームや有料老人ホームの場合は、医療機関への受診費用のみが対象です。


Q6. 共働き夫婦の場合、認知症検査費用はどちらの申告に含めるべきですか?

A. どちらでも構いませんが、所得税率が高い(所得が多い)方の申告に含める方が、節税効果が大きくなります。たとえば夫の所得税率が20%、妻が10%の場合、同じ医療費控除額でも夫の申告に含めた方が還付額が2倍になります。


Q7. 過去3年分の認知症検査費用を今年まとめて申告できますか

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