市販医薬品の医療費控除「対象・非対象」を10万円基準で徹底解説

市販医薬品の医療費控除「対象・非対象」を10万円基準で徹底解説 医療費控除

目次

  1. 医療費控除における市販医薬品の基本
  2. 対象・非対象の判定基準と具体例
  3. セルフメディケーション税制との違い
  4. 申請方法と計算式
  5. よくある質問と注意点

医療費控除における市販医薬品の基本【全体像を解説】

医療費控除とは、納税者や生計を同じくする親族が支払った医療費が一定額を超えた場合、その超過分を所得から控除できる税制優遇制度です。重要なのは、市販医薬品すべてが対象ではなく、「医学的効能が認められるもの」に限定される点です。

医療費控除の基本ルール

項目 内容
法的根拠 所得税法第73条
控除対象となる金額 (支払医療費 – 保険金・給付金) – 10万円 ※1
控除対象額の上限 200万円
申請方法 確定申告(税務署へ)
申請期間 翌年1月1日~3月15日(5年間は遡り申請可)

※1:総所得金額の5%が10万円より低い場合は、その5%の金額

この「10万円基準」が重要です。 市販医薬品の購入費をいくら集計しても、全医療費から保険金を差し引いた額が10万円以下なら控除対象外となります。

医療費控除と給付金・保険金の関係

市販医薬品購入時に保険給付がない場合が大多数ですが、以下のような給付を受けた場合は控除対象医療費から差し引く必要があります:

  • 生命保険の入院給付金
  • 健康保険の傷病手当金
  • 高額療養費制度による払戻金
  • 医療保障保険の給付金

市販医薬品の対象・非対象【判定基準と具体例】

医療費控除における市販医薬品の判定は、「医学的効能が医療行為と関連性があるか」が鍵となります。以下の判定表を参考にしてください。

医薬品分類別:対象・非対象判定表

医薬品分類 控除対象 判定根拠 具体例
一般用医薬品(第1~3類) 医学的効能が認定 風邪薬、胃薬、下痢止め
医療用医薬品(市販版) 処方薬と同成分 ロキソニンS、ガスター10
漢方薬(医学的効能あり) 厚生労働省認定 葛根湯、補中益気湯
医薬部外品 医学的効能が限定的 栄養ドリンク、のど飴
サプリメント・栄養食品 食品扱い ビタミン剤(予防目的)
化粧品・日焼け止め 医療品ではない リップクリーム、BBクリーム
医療関連用品 医薬品ではない テーピング、包帯、松葉杖

対象になる市販医薬品:詳細解説

1. 感冒薬・解熱鎮痛薬

対象:
– ルル、ベンザ、コンタック、ルメタックス
– ロキソニンS、イブA、バファリン
– ストナリニ、アスペリン

判断基準: 医師の処方が必要な医療用医薬品と同等の有効成分を含み、疾患治療が目的である場合

注意点: 「疲労回復」「予防」が主目的の栄養ドリンク(リポビタンDなど)は対象外

2. 胃腸薬

対象:
– ガスター10(市販版)
– 太田胃散、萬田白花油
– スクラート、イノキウス
– セルベックス

判断基準: 胃痛、胸焼け、消化不良など疾患症状の治療が目的

3. 花粉症・アレルギー用医薬品

対象: ✅ ※条件付き
– アレグラFX、クラリチン
– ザイザルAL
– 抗ヒスタミン成分含有製品

注意点: 予防目的での事前購入は非対象。症状出現後の購入が要件

4. 漢方薬

対象: ✅ ※医学的効能が認定されたもの
– 葛根湯(風邪初期症状)
– 補中益気湯(虚弱体質の改善)
– 桂枝茯苓丸(冷え症)

判断基準: 厚生労働省の医薬品認定を受けたもの。「健康維持」「未病対策」目的の高級漢方は非対象となる場合もあります

非対象になる市販医薬品:詳細解説

1. 医薬部外品

非対象:

医薬部外品は医薬品より効能・効果が限定的なカテゴリーです:

製品例 理由
リポビタンD、オロナミンC 栄養補給が主目的→医療行為ではない
イソジンうがい薬 医学的効能が認定されない
ハンドクリーム系医薬部外品 医療行為との関連性がない

2. サプリメント・栄養補給食品

非対象:

医薬品ではなく食品扱いのため、医療費控除の対象外です:

  • ビタミン剤(ディアナチュラ、ネイチャーメイドなど)
  • ミネラル・乳酸菌製品
  • 酵素ドリンク、青汁
  • コラーゲン、プロテイン

ただし例外: 医師の処方による医療用医薬品の栄養剤(経管栄養液など)は対象

3. 目薬・耳鼻科薬の判定

微妙なケース:

製品 判定 理由
参天製薬「サンテメディカル」 医療用医薬品の市販版
ロートゴールド40(疲労眼用) 疲労回復が主目的
ザジテンAL点眼液(アレルギー用) アレルギー症状治療

記録のコツ: 目的が「治療」か「疲労回復」かで判定が分かれるため、購入時の領収書に使用目的をメモしておくと確定申告時に説明しやすくなります


セルフメディケーション税制との違い【どちらを選ぶ?】

2017年以降、医療費控除の特例「セルフメディケーション税制」が選択肢となりました。市販医薬品の控除を受ける際、重要な判断分岐点です。

2つの制度の比較表

項目 医療費控除 セルフメディケーション税制
対象医薬品 医学的効能がある市販医薬品 対象医薬品(限定リスト)
控除額計算 (支払医療費 – 保険金) – 10万円 (対象医薬品購入額) – 12,000円 ※上限88,000円
申請要件 なし 健康診断・予防接種・健康診査の実施が必須
上限控除額 200万円 88,000円
併用 不可 – どちらか一方を選択
対象年 毎年自由に選択可 毎年自由に選択可

どちらを選ぶべき?判定フロー

Q1:年間の医療費(市販薬以外も含む)が10万円を超える?
  ├─ YES → 医療費控除を検討
  └─ NO → Q2へ

Q2:年間の対象医薬品購入額が12,000円を超える?
  ├─ YES → セルフメディケーション税制を検討
  └─ NO → いずれも申請不可

Q3:健康診断などの健康診査を実施した?
  ├─ YES(セルフメディケーション税制の要件満たし)
  │   → 医療費合計で医療費控除の方が有利か、
  │      医薬品購入額でセルフメディケーション税制の方が有利か計算
  └─ NO → 医療費控除が唯一の選択肢

具体的な計算例

ケース1:医療費控除が有利な場合

年間医療費:150万円
 ├─ 医師の診療費:120万円
 ├─ 入院費:25万円
 └─ 市販医薬品:5万円

年間対象医薬品購入額:5万円

【医療費控除の場合】
控除額 = 150万円 - 10万円 = 140万円

【セルフメディケーション税制の場合】
控除額 = 5万円 - 1.2万円 = 3.8万円

結論:医療費控除を選択すべき

ケース2:セルフメディケーション税制が有利な場合

年間医療費:25万円
 ├─ 医師の診療費:18万円
 └─ 市販医薬品:7万円

年間対象医薬品購入額:7万円
健康診断:実施済み ✓

【医療費控除の場合】
控除額 = 25万円 - 10万円 = 15万円

【セルフメディケーション税制の場合】
控除額 = 7万円 - 1.2万円 = 5.8万円

結論:医療費控除を選択すべき(この場合)

※ただし、医療費が10万円に満たない場合は
セルフメディケーション税制が唯一の選択肢

セルフメディケーション税制の対象医薬品

対象医薬品は「OTC医薬品のうち、医療用医薬品から転用されたもの」に限定されます。

対象医薬品の見分け方: 医薬品の箱に「セルフメディケーション税制対象」のマークが印字されています

代表的な対象医薬品:
– ロキソニンS(鎮痛薬)
– ガスター10(胃薬)
– アレグラFX(抗アレルギー薬)
– ザイザルAL(抗ヒスタミン薬)
– 大正漢方胃腸薬


申請方法と計算式【段階別ガイド】

Step 1:医療費領収書の集約と分類

準備物:
– 1月~12月の全医療費領収書・レシート
– 市販医薬品の購入レシート(医薬品の記載があるもの)
– 保険給付の通知書(ある場合)

チェックポイント:

□ レシートに「医薬品」「医薬部外品」の区分が明記されているか
□ 医薬品の場合は、具体的な製品名が記載されているか
□ 購入日、金額が明確か
□ 領収者の氏名(あれば)
□ 医療機関・薬局の名前

注意: ドラッグストア利用時、食料品やトイレットペーパーと混在した一括レシートは、医薬品部分を分離することが困難なため、購入時の領収書に医薬品部分をメモしておくか、ドラッグストアに分離レシートの発行を依頼することをおすすめします

Step 2:医療費額の計算

計算式

【基本式】
控除対象医療費 = (支払医療費 - 保険金・給付金) - 10万円
       ※ただし控除額の上限は200万円

【具体例】
支払医療費(全体)     :158万円
 ├─ 医師の診療費      :100万円
 ├─ 入院・手術費      :35万円
 └─ 市販医薬品        :23万円

保険金・給付金        :0円(通常は市販薬購入では発生しない)

控除対象医療費 = 158万円 - 0円 - 10万円 = 148万円

税額控除額 = 148万円 × 所得税率(※)
※ 所得税率は所得金額により5~45%で変動

所得税率による還付額の目安

所得額 税率 148万円の控除額
195万円以下 5% 74,000円
195~330万円 10% 148,000円
330~695万円 20% 296,000円
695~900万円 23% 340,400円

市販医薬品の内訳例(23万円の内訳)

ロキソニンS(8回購入)      :2,800円
ガスター10(3箱)           :4,500円
葛根湯(6包×2セット)       :5,000円
サンテメディカルプレミアム   :3,200円
花粉症用アレグラFX          :8,500円
その他の感冒薬              :3,000円
─────────────────
合計                       :27,000円

※ただし栄養ドリンク等の医薬部外品2,000円は除外
→ 医療費控除対象額:25,000円

Step 3:確定申告書の作成と提出

必要書類一覧

書類 入手先 備考
確定申告書第一表・第二表 税務署 / 国税庁HP e-Tax利用で自動作成可
医療費の内訳書 税務署 / 国税庁HP 医療費領収書の要約
領収書・レシート原本 自身で保管 提出不要(自宅保管5年)
健康保険給付の通知書 勤務先 / 健保組合 高額療養費などを受けた場合
マイナンバーカード 自身で申請 本人確認用

確定申告書の記入例

第一表(抜粋):

医療費控除
├─ 支払医療費:1,580,000円
├─ 保険金等で補填された額:0円
└─ 控除額:1,480,000円 ← 計算式で算出

申請方法(3パターン)

方法1:e-Tax(電子申告)- おすすめ
– 自宅から24時間申請可
– マイナンバーカード+カードリーダー必要
– 還付までの期間が短い(3週間程度)

方法2:税務署への書面申告
– 申告書を印刷して提出
– 返却された控除証明を保管
– 申告期限:翌年3月15日

方法3:郵送申告
– 申告書を郵送で提出
– 書留郵便推奨
– 消印有効期限までの到着が必須


よくある質問と注意点【申請時の落とし穴】

Q1:市販医薬品の領収書がない場合、申請できますか?

A:原則として申請不可です。

医療費控除の申請には「領収書等により医療費を証明できる」ことが必須要件です(所得税法施行規則99条)。以下の対応が考えられます:

  • ドラッグストア名・購入日・金額が明記されたレシートがあれば可
  • クレジットカード明細だけでは不可(医薬品と食料品の区別ができないため)
  • 後からドラッグストアで発行依頼を検討(ただし対応は店舗による)

予防策: 2024年以降の購入時は、医薬品部分が明確に分離されたレシートを保管してください

Q2:家族の医療費を合算できますか?

A:可能です(条件あり)

医療費控除は「生計を同じくする親族」の医療費を合算できます:

対象者:
– 配偶者
– 子ども(扶養関係の有無は問わない)
– 親・祖父母
– 兄弟姉妹

条件:
– 同一世帯であること
– 医療費の支払者が本人である必要がない(別居の親の医療費でも、生活費を本人が負担していれば可)

具体例:

父(別居・年金生活)の医療費をあなたが負担
→ あなたの申告で合算可能

Q3:去年買った医薬品を今年申告できますか?

A:不可。申告は購入年度に限定されます。

医療費控除は購入年の所得税申告に反映されます。去年の医薬品は去年の確定申告で申請すべきでした。

ただし救済手段あり:
– 未申告だった場合:過去5年間遡及申請可(更正請求)
– 申告済みの場合:更正の請求を検討(税理士相談推奨)

Q4:セルフメディケーション税制と医療費控除の両方を申請できますか?

A:いいえ、不可です。同一年度では選択制です。

通常、両制度は以下のルールで択一適用となります:

「セルフメディケーション税制か医療費控除か」
→ いずれか一方を選択
→ 同一年度での二重適用は不可

複数年対応:
– 2023年:医療費控除を選択
– 2024年:セルフメディケーション税制を選択
– 上記のように年度ごとに選択変更可能

Q5:症状がないのに念のため薬を買った場合は?

A:対象外の可能性が高い(予防目的)

医療費控除の対象は「医師等の指示による治療費」に限定されています:

ケース 判定 理由
症状が出てから購入 治療目的
念のため事前購入 予防目的
花粉症シーズン前購入 ❌※ 予防目的の可能性

※症状が軽微な段階での購入なら治療目的と判断される場合もあり、税務署の判断に委ねられます

Q6:医薬品と医薬部外品が混在したレシートはどうする?

A:医薬品部分を分離・明確化する必要があります。

ドラッグストアの一括レシートの場合:

対応方法:
1. レシートに区分記載がある場合 → その記載に従う
2. 区分記載がない場合 → 医薬品部分を数量×単価で計算
3. それでも判別不可の場合 → ドラッグストアに証明書を依頼

例:

サンドラッグレシート
アイボン目薬(医薬品):1,200円  ✓対象
ティッシュ(雑貨):300円       ✗除外
ロキソニンS(医薬品):1,500円  ✓対象
→ 控除対象額:2,700円

Q7:夫婦別申告の場合、医療費はどちらが申請する?

A:有利な方(高所得者)が申請するのが原則

夫婦それぞれが申告する場合、医療費控除額は高い所得税率を適用する側が得です:

例:

夫の所得:500万円(税率20%)
妻の所得:150万円(税率5%)
合算医療費:150万円

【夫が申告】
控除額 = (150万円 - 10万円) × 20% = 28万円

【妻が申告】
控除額 = (150万円 - 10万円) × 5% = 7万円

結論:夫が申告すべき(21万円の差)

Q8:漢方薬の場合、全て対象ですか?

A:いいえ。医学的効能が厚生労働省に認定されたものに限ります。

判定基準:

漢方薬 判定 理由
葛根湯(風邪初期) 医薬品として認定
高級人参製品 サプリ扱い
医師処方の漢方薬 医療用医薬品
未病対策用高級漢方 予防・健康維持目的

確認方法: 漢方薬の箱に「医薬品」表記があるか確認してください


まとめ:市販医薬品の医療費控除チェックリスト

申請前に以下を確認してください:

□ 年間医療費(保険金控除後)が10万円を超える
□ 市販医薬品が医学的効能を持つ一般用医薬品である
□ 医薬部外品・サプリメント・栄養剤は除外している
□ 全領収書・レシートが保管されている
□ セルフメディケーション税制との比較検討を実施した
□ 生計を同じくする家族の医療費を合算した
□ 控除額が200万円を超えないことを確認した
□ 確定申告の期限内(翌年3月15日)に提出予定

最後に重要なお知らせ: 本記事は一般的な基準を記載していますが、個別の医薬品や状況によって税務署の判断は異なる場合があります。不安な場合は管轄の税務署に事前相談することを強くおすすめします。


関連情報

  • 国税庁「医療費控除について」 https://www.nta.go.jp/
  • セルフメディケーション税制対象医薬品リスト 日本OTC医薬品協会公開
  • 高額療養費制度との併用 厚生労働省公開情報を参照

この記事が対象医療費の判定と申請手続きを明確化し、適切な節税を実現するお手伝いになれば幸いです。

よくある質問(FAQ)

Q. 市販医薬品の購入費はいくらから医療費控除の対象になりますか?
A. 市販医薬品の金額ではなく、全医療費が基準です。保険金を差し引いた総医療費が10万円を超えた場合、超過分が控除対象になります。

Q. 栄養ドリンクやサプリメントは医療費控除の対象になりますか?
A. いいえ。栄養ドリンクやサプリメントは食品扱いのため対象外です。医学的効能が認定された医薬品のみが対象になります。

Q. ロキソニンSやガスター10などの市販医薬品は控除対象になりますか?
A. はい。医療用医薬品と同成分の市販医薬品は対象になります。感冒薬、胃薬、鎮痛薬など一般用医薬品は控除対象です。

Q. 医療費控除で市販医薬品を申請する際、何が必要ですか?
A. レシートまたは領収書が必須です。医薬品の購入履歴を記録し、確定申告時に税務署に提出してください。5年間遡り申請可能です。

Q. セルフメディケーション税制と医療費控除どちらを選ぶべきですか?
A. 所得が高い場合は医療費控除、市販医薬品購入が少ない場合はセルフメディケーション税制が有利です。両方の申請はできません。

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