訪問看護の高額療養費|計算対象・申請方法・還付額【2026年】

訪問看護の高額療養費|計算対象・申請方法・還付額【2026年】 高額療養費制度

在宅医療・訪問看護を受けている患者さん・ご家族の多くが「訪問看護の費用って高額療養費の対象になるの?」という疑問を持っています。答えは「なります」。ただし、すべての在宅サービスが対象になるわけではありません。

このガイドでは、どの費用が計算対象となり、どの費用が対象外かを明確に区分し、実際の申請方法と還付額の計算式までを詳しく解説します。月額で数万円~十数万円の違いが生じることもあるため、正確な理解が医療費節約に直結します。


在宅医療・訪問看護と高額療養費の基本【制度の仕組みを5分で理解】

高額療養費制度とは

高額療養費制度とは、病気やケガで医療機関にかかったとき、患者さんが負担する医療費が一定額を超えた場合、その超過分を健康保険が負担する制度です。

項目 内容
法的根拠 健康保険法第115条~118条
制度開始 1973年(昭和48年)
対象範囲 健康保険診療全般(在宅医療含む)
計算単位 暦月(1日~末日)ごと
支給方法 申請による返金方式

高額療養費制度は在宅医療にも完全に適用されます。訪問診療、訪問看護、在宅医療管理料など、医療保険が使えるサービスであれば、医療機関での診療と同じ扱いで計算されます。

自己負担額の上限(2026年度現在)

患者さんの月額自己負担の上限は、年齢と年収によって決まります。以下は最新の基準です。

70才未満の人

年収区分 月額自己負担の上限
約1,160万円以上 252,600円 +(医療費-842,000円)×1%
約770万~1,160万円 167,400円 +(医療費-558,000円)×1%
約370万~770万円 80,100円 +(医療費-267,000円)×1%
~約370万円 57,600円
住民税非課税世帯 35,400円

70才以上75才未満

年収区分 月額自己負担の上限(1割負担) 月額自己負担の上限(2~3割負担)
課税所得690万円以上 252,600円 +(医療費-842,000円)×1% 同左
課税所得380万円以上 167,400円 +(医療費-558,000円)×1% 同左
課税所得145万円以上 80,100円 +(医療費-267,000円)×1% 同左
課税所得145万円未満 57,600円 57,600円
住民税非課税世帯 24,600円 24,600円

在宅医療が対象になる理由

在宅医療サービスは「医療保険診療」です。医師の判断に基づき、診療報酬点数が設定された医療行為であるため、医療機関での診療と同じ扱いで高額療養費の対象になります。

これは以下の法的根拠に基づいています:
健康保険法第115条:「被保険者が療養を受けた場合の医療費」
同法第118条:「計算方法」での「療養」に在宅医療も含まれる
厚生労働省告示第320号:具体的な計算基準で在宅医療を明記


計算対象となるサービス【訪問看護・在宅医療の全種類】

高額療養費に含まれる在宅医療サービス

以下のサービスは、すべて高額療養費の計算対象となります。患者さんが負担した金額(1割~3割)がカウントされます。

訪問診療・往診

項目 詳細
訪問診療 医師が定期的に患者宅を訪問して行う診察
往診 患者の求めに応じて緊急時などに医師が患者宅を訪問
計算対象 ✓ 患者負担分(診療費+往診料)
診療報酬例 訪問診療料:522点(月4回の場合)、往診料:1,500点~

在宅医療管理料

項目 詳細
対象疾患 がん末期、神経難病、COPD、心不全など
計算対象 ✓ 患者負担分(月1回~数回の管理料)
診療報酬例 在宅悪性腫瘍患者指導管理料:2,000点/月
セット内容 医師の往診 + 薬学管理 + 看護管理

訪問看護・訪問リハビリテーション

サービス種類 対象者例 計算対象
訪問看護 寝たきり患者、創傷処置が必要な患者 ✓ 患者負担分
訪問リハビリテーション 脳卒中後、骨折後、手術後のリハビリが必要な患者 ✓ 患者負担分
複合型サービス提供 看護+リハビリ実施時 ✓ 各々の費用

具体例
– 訪問看護(週3回):1回あたり診療報酬1,500~3,000点
– 訪問リハビリテーション(週2回):1回あたり診療報酬1,350~2,700点

在宅薬学管理料

項目 詳細
対象者 医師の処方により薬剤師の管理が必要な患者
計算対象 ✓ 患者負担分
報酬例 在宅患者薬剤管理指導料:1,000点/月
実施内容 薬剤の適正使用、相互作用チェック、患者教育

訪問栄養食事指導

項目 詳細
対象者 栄養管理が必要な患者(糖尿病、腎臓病など)
計算対象 ✓ 患者負担分
報酬例 訪問栄養食事指導料:2,000点
実施者 管理栄養士

在宅医療に関連する通院診療

在宅医療を受けながら、同じ疾患で同じ月内に医療機関へ通院した場合、その通院診療費も同月の高額療養費計算に含まれます。


– 訪問診療で月3回 + 月1回病院受診 → 月4回分がすべて計算対象
– 訪問看護の契約医(大学病院)への診察 → 当月計算に含める


計算対象外となるサービス【介護保険との違いを完全解説】

高額療養費の計算対象外となるサービス

以下のサービスは、どれだけ費用がかかっても高額療養費の計算対象にはなりません。混同しやすいものが多いため、正確に理解することが重要です。

介護保険サービス全般

介護保険は医療保険と別の制度です。在宅で受けられる介護保険サービスは、高額療養費の計算に含まれません。

サービス 運営 計算対象 理由
訪問介護(身体介護) 介護保険 介護保険が優先適用
訪問介護(生活援助) 介護保険 生活支援は医療ではない
通所介護(デイサービス) 介護保険 介護保険対象(医療費ではない)
通所リハビリ 介護保険 介護保険対象
短期生活施設 介護保険 施設サービス(介護保険)
福祉用具貸与 介護保険 介護保険の範囲
住宅改修費 介護保険 物品・工事費

重要ポイント
– 在宅医療と介護保険サービスを同時に受けることは可能です
– ただし、介護保険が優先適用される部分は高額療養費から除外されます

医療保険対象でないサービス・物品

項目 詳細 理由
成人用おむつ・衛生用品 購入品 医学的必要性が認められない
医療用ベッド・マットレス購入 購入品 福祉用具購入(介護保険対象か自費)
医療用弾性ストッキング購入 購入品 医療費ではなく衛生用品
栄養チューブ・バッグ購入 消耗品購入 自由診療扱い
在宅人工呼吸器レンタル ✓ 対象 ただし「保険適用レンタル」に限定
医療用ガス(酸素) ✓ 対象 医師の処方による医療用物品

細かいが重要な区分

✓ 対象:医師が処方し、診療報酬が発生する医療用物品
✗ 対象外:自由診療扱いの物品購入、介護用品

健康診査・予防接種

サービス 計算対象 理由
健康診査 予防医療(治療ではない)
特定健診 検診(医療ではない)
予防接種 予防目的(治療ではない)
定期健康診断 予防医療

自由診療・自費医療

項目 計算対象 理由
保険外診療 医療保険の対象外
美容医療 自由診療
高度先進医療(非承認) 保険外
民間療法・整骨院未指定 医療保険対象外
差額ベッド代 施設利用費
食事代 生活費

通院に関わる費用

項目 計算対象 理由
交通費(タクシー・救急車) 医療費ではない
駐車場料金 医療費ではない
診断書作成料(自費分) 自由診療

月額計算式と実際の還付額【具体例で完全解説】

高額療養費の計算方法

高額療養費は、以下の手順で月額ごとに計算されます。

計算ステップ

【ステップ1】該当月の「計算対象となる医療費」を集計
   ↓
【ステップ2】患者負担額を算出(医療費 × 自己負担割合:1割~3割)
   ↓
【ステップ3】患者負担額から「自己負担限度額」を控除
   ↓
【ステップ4】超過分が「還付される高額療養費」

具体的な計算式

還付額 = 患者負担額 ー 自己負担限度額

【例】70才未満、年収約370万~770万円の場合

医療費(診療報酬点数換算):600,000円
患者負担額 = 600,000円 × 30% = 180,000円
自己負担限度額 = 80,100円 + (600,000円 - 267,000円)× 1% 
         = 80,100円 + 3,330円 = 83,430円

還付額 = 180,000円 - 83,430円 = 96,570円

実例1:訪問看護で月額還付された患者

患者プロフィール
– 70才女性、脳卒中による麻痺で訪問サービス利用中
– 年収:約500万円(課税所得:約370万~770万円区分)

医療サービス 診療報酬額 患者負担(3割)
訪問診療(月4回) 2,088点 6,264円
訪問看護(週3回) 12,000点 36,000円
訪問リハビリテーション(週2回) 5,400点 16,200円
在宅医療管理料 2,000点 6,000円
月合計 21,488点 64,464円

計算

患者負担額:64,464円
自己負担限度額:80,100円 + (214,880円 - 267,000円)× 1%
         = 80,100円 + 0円(医療費が限度額未満)
         = 80,100円

還付額 = 64,464円 - 80,100円 = 0円(この月は対象外)

結果:この月は高額療養費の対象にはなりませんでした。

実例2:複数の在宅医療で高額になった患者

患者プロフィール
– 65才男性、がん末期で訪問医療多数利用
– 年収:約600万円(課税所得:約370万~770万円区分)

医療サービス 診療報酬額 患者負担(3割)
訪問診療(月6回) 3,132点 9,396円
訪問看護(週4回) 16,000点 48,000円
在宅悪性腫瘍患者指導管理料 2,000点 6,000円
在宅薬学管理料 1,000点 3,000円
緩和ケア関連の指導料 3,000点 9,000円
同月内の通院診療(放射線治療) 80,000点 240,000円
月合計 105,132点 315,396円

計算

患者負担額:315,396円
自己負担限度額:80,100円 + (1,051,320円 - 267,000円)× 1%
         = 80,100円 + 7,843円
         = 87,943円

還付額 = 315,396円 - 87,943円 = 227,453円

結果月額227,453円が還付されます。これは大きな経済的支援になります。

実例3:訪問介護との混在ケース【対象外の区別】

患者プロフィール
– 78才女性、要介護3で在宅医療 + 介護サービス利用
– 年収:年金のみ(1割負担)

項目 内容 負担額 計算対象
医療保険分
訪問診療 月2回 1,500円
訪問看護 週2回 18,000円
介護保険分
訪問介護(身体) 週3回 45,000円
デイサービス 週2回 32,000円
自費分
成人用おむつ購入 月1箱 8,000円
月合計患者負担 104,500円
高額療養費計算対象 19,500円

計算

高額療養費対象の患者負担(医療保険のみ):19,500円
自己負担限度額(70才以上1割、非課税世帯):24,600円

還付額 = 19,500円 - 24,600円 = 0円(対象外)

ポイント
– 介護保険と医療保険は完全に分離計算されます
– 介護保険分(45,000円 + 32,000円)は高額療養費の対象にならない
– 医療保険分(19,500円)のみで計算される


申請方法と必要書類【郵送・窓口どちらでも可能】

申請窓口と期限

高額療養費は、以下の3つの方法で申請できます。

加入している健康保険の窓口で申請

保険種別 申請窓口
会社員(社保) 勤務先の健康保険組合、または全国健保協会支部
公務員(共済) 各共済組合の窓口
自営業者(国保) 市区町村役場の国民健康保険課
後期高齢者医療 市区町村役場の後期高齢者医療課

郵送での申請も可能です。加入している保険者に申請書を郵送することで、窓口に行かずに申請できます。

健康保険組合や自治体によっては、マイナポータルなどを通じたオンライン申請に対応しています。

申請期限(重要)

高額療養費の申請期限:医療費が発生した月の翌月1日から2年以内

【例】2024年3月に在宅医療を受けた場合
  → 申請期限:2024年4月1日~2026年3月31日

申請を忘れてしまうと、2年後は一切還付されません。

必要書類一覧

基本となる必要書類

書類 入手先 備考
高額療養費支給申請書 保険者窓口またはウェブサイト 保険者によって書式が異なる
健康保険証のコピー 自宅 両面のコピーが必要
領収書 医療機関・訪問看護ステーション 合計額が確認できるもの
印鑑 自宅 認め印で可(シャチハタは不可)
申請者本人確認書類 自宅 マイナンバーカードまたは運転免許証

訪問看護・在宅医療の場合に追加で必要な書類

書類 入手先 なぜ必要か
訪問看護ステーションの領収書 訪問看護事業所 訪問看護料が分かるため
医師の診療報酬明細(在宅医療分) 医療機関 訪問診療料を証明する
月ごとの利用実績記録 在宅医療サービス提供者 医療保険対象分を確認
通院診療分の領収書 医療機関 同月内の通院も計算対象

申請書の記入例

患者情報

【被保険者氏名】 山田太郎
【被保険者番号】 *--
【生年月日】     昭和40年4月15日
【住所】         東京都渋谷区〇〇町1-2-3
【電話番号】     090--

医療費に関する情報

【対象年月】     令和6年3月(2024年3月)
【医療機関名】   〇〇医院(訪問診療)
           △△訪問看護ステーション(訪問看護)
【医療費総額】   1,051,320円
【患者負担額】   315,396円(3割負担)
【自己負担限度額】87,943円
【還付申請額】   227,453円

申請時の注意点

  1. 月をまたぐ医療費は分けて計算
  2. 3月31日の医療費 → 3月分として計算
  3. 4月1日の医療費 → 4月分として計算
  4. 月をまたぐサービスでも、請求月で判定

  5. 小数点の扱い

  6. 1点=10円として計算
  7. 計算結果に端数が出た場合は四捨五入

  8. 複数の医療機関がある場合

  9. すべての医療費を合算して計算
  10. 領収書は医療機関ごとに整理

  11. 訪問看護ステーションが複数の場合

  12. 複数ステーションの費用も合算対象
  13. 各ステーションの領収書を用意

  14. 介護保険分の除外確認

  15. 訪問介護・デイサービス・福祉用具などは除外
  16. 医療機関からもらう領収書に「医療保険分」と明記されているか確認

還付額の目安と複数月利用時の計算【患者さん向けチェックリスト】

月額還付額の目安表

以下の表で、大まかな還付額を推定できます。

70才未満、年収370万~770万円の場合

月額患者負担額 自己負担限度額 還付額
50,000円 83,430円 0円
100,000円 83,430円 16,570円
150,000円 83,430円 66,570円
200,000円 83,430円 116,570円
300,000円 83,430円 216,570円

70才以上75才未満、課税所得145万円以上の場合

月額患者負担額 自己負担限度額 還付額
30,000円 80,100円 0円
80,100円 80,100円 0円
100,000円 80,100円 19,900円
150,000円 80,100円 69,900円
200,000円 80,100円 119,900円

複数月に続く在宅医療の場合【通年でいくら戻るか】

多くの在宅医療患者さんは数ヶ月~数年にわたって訪問看護・訪問診療を受けます。以下の例で、年間の還付額を計算できます。

:65才男性、年収約500万円(年間6ヶ月の在宅医療利用)

【月平均患者負担額】120,000円
【自己負担限度額】83,430円
【月平均還付額】36,570円

【年間還付額の推定】
36,570円 × 6ヶ月 = 219,420円

※この額は医療費節約の大きな助けになります

高額療養費とは別の制度【限度額認定証・医療費控除との併用】

在宅医療の患者さんは、高額療養費制度以外の医療費節約制度を組み合わせることで、さらに負担を軽減できます。

限度額認定証【事前申請で自動計算される】

高額療養費制度とセットで使う制度です。

項目 内容
仕組み 事前に申請して認定証を取得 → 医療機関に提示 → その場で自己負担が限度額に
申請窓口 加入している保険者
書類 「限度額適用認定申請書」(保険者ウェブサイトでダウンロード可)
申請期限 利用開始前(遡及申請も可能)

高額療養費との違い

❌ 高額療養費:後から還付される(2~3ヶ月後)
✓ 限度額認定証:その場で限度額に調整される(待たずに済む)

訪問看護ステーションに限度額認定証を提示すれば、その月の患者負担額が自動的に限度額に抑えられます。

医療費控除との重複申請【所得税還付の追加メリット】

高額療養費で還付を受けた患者さんは、さらに医療費控除で所得税還付を受けられる可能性があります。

制度 還付元 対象費用 申請時期
高額療養費 健康保険 医療保険対象の治療費 医療費発

よくある質問(FAQ)

Q. 訪問看護の費用は高額療養費の対象になりますか?
A. はい、対象になります。訪問看護は医療保険診療であり、患者さんが負担した金額(1割~3割)が高額療養費の計算対象に含まれます。

Q. 高額療養費の月額自己負担の上限はいくらですか?
A. 年齢と年収によって異なります。70才未満で年収370万円以下なら57,600円、住民税非課税世帯なら35,400円が上限です。詳細は所得区分表をご確認ください。

Q. 在宅医療サービスのすべてが高額療養費の対象ですか?
A. いいえ、医療保険対象のサービス(訪問診療、訪問看護など)は対象ですが、介護保険サービスや自費診療は対象外です。サービスの種類を確認が必要です。

Q. 高額療養費の申請方法はどうしたらいいですか?
A. 加入している健康保険に申請書を提出します。月額自己負担が上限を超えた場合、その超過分が返金されます。領収書が必要な場合もあります。

Q. 訪問看護と医療機関の診療費は一緒に計算されますか?
A. はい。同じ月内に訪問看護と病院診療を受けた場合、両方の患者負担額を合算して高額療養費の計算対象となります。

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