限度額適用認定証は、交付して終わりではありません。有効期限・所得区分・資格の3つが動くたびに、担当者側の処理が発生します。
この記事は、社員に認定証を交付した後に起きることと、その処理の順番を整理したものです。制度そのものの説明ではなく、運用の話です。
認定証には有効期限がある
認定証の有効期限は、多くの保険者で7月31日に設定されています。これは所得区分の判定が住民税の課税年度に合わせて切り替わるためです。
- 年度をまたぐ長期入院では、7月31日で一度切れる
- 8月以降も使うには、あらためて交付を受ける必要がある
- 切れたことに気づかず窓口に出すと、その月は限度額が適用されず全額を立て替えることになる
長期入院の社員がいる場合は、6月のうちに次年度分の申請を案内してください。入院中は本人が手続きしにくいので、会社側から動くほうが確実です。
所得区分が変わったとき
所得区分は、標準報酬月額(健康保険の場合)で決まります。次の場合に区分が変わることがあります。
- 定時決定(毎年9月に標準報酬月額が改定される)
- 随時改定(昇給・降給で大きく変わったとき)
- 年度が替わって住民税の課税情報が更新されたとき
区分が変わったら、認定証を差し替える必要があります。古い区分の認定証を使い続けると、後から差額の精算が発生します。
また2026年8月から、70歳未満・70歳以上ともに自己負担限度額の金額そのものが改定されています。金額を社員に説明するときは、いつの診療分かを必ず確認してください。診療月が2026年7月以前か8月以降かで額が違います。
退職・資格喪失のとき ─ 返納が要る
認定証は保険者から交付されたものなので、資格を失ったら返すのが原則です。
| いつ | やること |
|---|---|
| 退職が決まった時点 | 本人に認定証を持っているか確認する |
| 資格喪失日 | 保険証と一緒に認定証も回収する |
| 回収後 | 保険者へ返納(保険証の返却と同時に送るのが一般的) |
実務では保険証だけ回収して認定証を忘れるのが典型的なミスです。退職手続きのチェックリストに「限度額適用認定証の有無」を1行足しておいてください。
本人が入院中で手元にない、紛失した、といった場合は保険者に連絡します。返せないこと自体が問題になるわけではありませんが、連絡なしに放置しないことです。
マイナ保険証を使う場合は認定証が要らない
医療機関がオンライン資格確認に対応していれば、マイナ保険証を使うことで認定証がなくても窓口の支払いが限度額までになります。
担当者としては、社員から相談を受けたときにこの順で確認するのが早くなります。
- 受診する医療機関がオンライン資格確認に対応しているか
- 本人がマイナ保険証を使える状態か(利用登録が済んでいるか)
- 使えるなら、認定証の申請は不要
- 使えない、または対応していないなら、認定証を申請する
ただしマイナ保険証でも、住民税非課税世帯の区分の適用には別途の手続きが必要な場合があります。該当しそうなときは保険者に確認してください。
認定証が間に合わなかったときの説明
入院が急で認定証が間に合わなかった場合でも、後から高額療養費として払い戻しを受けられます。損はしません。
ただし窓口では一度全額(3割など)を支払うことになり、払い戻しまで受診月から3か月以上かかります。立て替えの負担が大きい場合は、保険者の高額療養費貸付制度が使えることがあります。社員に案内できるよう、自社の保険者に制度があるか確認しておいてください。
担当者が持っておく確認リスト
- 交付した社員の一覧と、それぞれの有効期限
- 6月:翌年度分の申請案内(長期療養者)
- 9月:定時決定で区分が変わった人がいないか
- 退職手続き:認定証の回収
- 自社の保険者に貸付制度があるか
💡 実務で限度額を判定する立場の方へ。2026年8月改正の所得区分・世帯合算・年間上限をまとめた実務チェックガイドを無料で配布しています。
まとめ
- 認定証の有効期限は多くの保険者で7月31日。年度をまたぐ入院は6月に次年度分を案内する
- 定時決定などで所得区分が変わったら差し替える
- 退職時は保険証と一緒に認定証も回収して返納。忘れやすいのでチェックリストに入れる
- マイナ保険証が使えるなら認定証は不要。まずそちらを確認する
- 間に合わなくても後から払い戻しは受けられる。立て替えが重いなら貸付制度を案内する
出典
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」および令和8年8月からの自己負担限度額
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)各種申請書・記入の手引き
- 健康保険法(高額療養費・傷病手当金・時効)
限度額や様式は改正されます。実際の手続きは、加入している健康保険組合・協会けんぽ・市区町村の窓口で最新の取り扱いをご確認ください。

