高額療養費には2年の時効があります。これを過ぎると、本来受け取れたはずの額が受け取れなくなります。
問題は、この2年がいつから数えるのかが分かりにくいことです。担当者が誤解しやすい点を先に片づけます。
起算日は「受診した日」ではない
高額療養費の時効は、診療を受けた月の翌月1日から2年です。
- 2026年10月に受診した分 … 起算日は2026年11月1日。時効は2028年10月31日
正確には「診療月の翌月1日(自己負担分を支払った日が翌月以降になる場合はその翌日)」から進行します。実務では診療月の翌月1日から2年と覚えておけば、期限を過ぎることはありません。
なお傷病手当金は考え方が違い、労務不能であった日ごとに、その翌日から2年です。同じ2年でも数え方が別なので、混同しないでください。
過去2年分はさかのぼって請求できる
気づいたときに、まだ時効になっていない分はまとめて請求できます。
たとえば「限度額適用認定証を知らずに、去年1年間ずっと窓口で3割を払っていた」というケースでは、各月について個別に高額療養費の支給申請ができます。1枚にまとめることはできないので、月ごとに申請書を作ります。
社員から相談を受けたときは、まず次を聞いてください。
- 受診した月(暦月ごと)
- その月に医療機関ごとにいくら払ったか
- 限度額適用認定証やマイナ保険証を使っていたか
- 加入していた保険者はどこか(転職があれば受診時点の保険者)
時効が近いものを見つける方法
会社側で全社員の受診状況を把握することはできません。現実的にできるのは次の2つです。
- 長期療養者・入院した社員のリストを持っておく ─ 傷病手当金の申請を受けている社員は、高額療養費の対象にもなっている可能性が高い
- 年に1度、社内で案内を出す ─ 「入院・手術をした方は高額療養費の対象になることがあります。2年で時効になります」という一文を、健康診断や年末調整の案内に添える
健康保険組合によっては付加給付として自動的に払い戻していることがあり、その場合は本人が何もしなくても受け取れています。自社の保険者がどちらかを確認しておくと、案内の内容が変わります。
時効を過ぎてしまった場合
原則として請求できません。ただし次のような事情があるときは、保険者に相談する価値があります。
- 保険者側の事務処理の遅れで請求できなかった
- 本人が長期にわたり意識のない状態だった
- 第三者行為の示談が長引き、健康保険を使うかどうかが確定していなかった
認められるかどうかは保険者の判断です。「無理だろう」と担当者が決めずに、事情を伝えて確認してください。
期限がある他の給付もまとめて確認する
入院した社員に関わる給付は高額療養費だけではありません。時効の起算が違うので、一覧にしておくと漏れません。
| 給付 | 時効 | 起算 |
|---|---|---|
| 高額療養費 | 2年 | 診療月の翌月1日 |
| 傷病手当金 | 2年 | 労務不能であった日ごとに、その翌日 |
| 出産育児一時金 | 2年 | 出産日の翌日 |
| 療養費(立替払い) | 2年 | 費用を支払った日の翌日 |
| 医療費控除(確定申告) | 5年 | その年の翌年1月1日 |
医療費控除は5年なので、高額療養費の時効が過ぎていても確定申告での還付はまだ間に合うことがあります。社員に案内するときは、こちらも一緒に伝えてください。その際、高額療養費で払い戻された分は医療費控除の対象額から差し引く点に注意します。
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まとめ
- 高額療養費の時効は診療月の翌月1日から2年。受診日からではない
- まだ時効でない分は月ごとに個別にさかのぼって請求できる
- 会社側は長期療養者のリストと年1回の案内で漏れを減らす
- 健保組合の付加給付があると自動で払い戻されていることがある
- 高額療養費が2年で切れても、医療費控除は5年。あきらめる前に確認する
出典
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」および令和8年8月からの自己負担限度額
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)各種申請書・記入の手引き
- 健康保険法(高額療養費・傷病手当金・時効)
限度額や様式は改正されます。実際の手続きは、加入している健康保険組合・協会けんぽ・市区町村の窓口で最新の取り扱いをご確認ください。
