高額療養費の支給申請書は、書く欄そのものは多くありません。それでも返戻(差し戻し)が起きるのは、いつも同じ数か所です。この記事では、その数か所だけを扱います。
社員から「申請書の書き方が分からない」と聞かれる総務の方、窓口で説明する立場の方に向けた内容です。
まず確認する ─ 申請が要るのか、要らないのか
次のどれかに当てはまるなら、そもそも支給申請書が不要か、後から自動で振り込まれます。
- マイナ保険証または限度額適用認定証を窓口に出していた … 窓口での支払いが最初から限度額までになるので、原則として申請不要
- 加入先が自動払い(自動支給)を行っている … 一部の健康保険組合や共済は、申請なしで指定口座に振り込む
加入先によって扱いが違います。「うちは自動だと思っていた」で2年経つと時効になるので、自社が加入している保険者がどちらなのかを一度確認しておいてください。
つまずく欄1|療養を受けた期間
高額療養費は暦月(1日から末日)ごとに計算します。月をまたいだ入院は、月ごとに分けて申請します。
- 10月20日〜11月10日の入院 … 10月分と11月分で2枚
1枚にまとめて書くと返戻されます。領収書も月ごとに分けて集めてください。
つまずく欄2|医療機関ごとに分けて書く
同じ月でも、病院ごと・入院と外来ごと・医科と歯科ごとに行を分けます。院外処方の薬局も別の行です。
「合計いくら払ったか」を1行に書いてしまうケースが多いのですが、限度額の計算は行ごとの積み上げで行われるため、分けないと計算できません。
つまずく欄3|他の給付を受けているかどうか
次に当てはまるものがあれば、必ず記入してください。書かずに受け取ると、後から返還を求められます。
- 第三者行為(交通事故など)による負傷か
- 労災の申請をしているか
- 公費負担医療(難病・自立支援医療など)を受けているか
- 市区町村の医療費助成(子ども医療費など)を受けているか
とくに交通事故は、健康保険を使う場合に「第三者の行為による傷病届」が別に必要です。これが出ていないと支給が止まります。
つまずく欄4|振込口座
- 原則は被保険者名義。家族の受診分でも、口座は被保険者のもの
- 被保険者が亡くなっている場合は、相続人からの請求になり、別の書類が要る
- ネット銀行を指定するときは、支店名の書き方が通常の銀行と違う
添付書類
| 書類 | いる/いらない |
|---|---|
| 領収書の写し | 加入先による。協会けんぽは原則不要だが、健保組合は求めることが多い |
| マイナンバー確認書類・本人確認書類 | マイナンバーを記入する場合に必要 |
| 第三者の行為による傷病届 | 交通事故など第三者行為の場合は必須 |
| 戸籍謄本・相続の分かる書類 | 被保険者が死亡している場合 |
「領収書は不要」と書かれていても、原本は保管しておいてください。確定申告の医療費控除で使います。
提出してから振り込みまでの目安
受診した月から数えて、おおむね3か月以上かかります。保険者が医療機関からのレセプト(診療報酬明細書)を受け取ってから審査するためで、書類の不備がなくてもこの期間は短くなりません。
社員に説明するときは、この点を先に伝えておくと「まだ振り込まれない」という問い合わせが減ります。
よくある質問
申請書はどこで手に入りますか
加入している保険者のサイトからダウンロードします。協会けんぽと健康保険組合では様式が違います。国民健康保険は市区町村ごとに様式が異なり、多くは対象者へ通知が届きます。
会社が代わりに提出できますか
できます。ただし高額療養費は本人(被保険者)の請求なので、本人の記入・署名が必要な欄があります。会社が全部書くことはできません。
何回も申請するのが手間です
治療が続く見込みがあるなら、限度額適用認定証の交付を受けるか、マイナ保険証を使うほうが確実です。窓口での支払いが最初から限度額までになるので、後から申請する必要がなくなります。
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まとめ
- マイナ保険証・限度額適用認定証を使っていたなら、そもそも申請は原則不要
- 返戻の原因は月またぎ・医療機関ごとの行分け・他制度の記入漏れのほぼ3つ
- 口座は原則被保険者名義
- 振り込みまで受診月から3か月以上。書類が完璧でも短くならない
- 様式は保険者ごとに違う。協会けんぽの様式を健保組合に出さない
出典
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」および令和8年8月からの自己負担限度額
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)各種申請書・記入の手引き
- 健康保険法(高額療養費・傷病手当金・時効)
限度額や様式は改正されます。実際の手続きは、加入している健康保険組合・協会けんぽ・市区町村の窓口で最新の取り扱いをご確認ください。

