治療用装具の療養費|コルセット代の払い戻し額・必要書類・2年の申請期限

高額療養費制度

医師の指示で作ったコルセットや膝の装具、靴型装具などの「治療用装具」は、代金をいったん全額支払い、あとから加入している健康保険に「療養費」(いったん全額を立て替えた費用を、あとで請求して払い戻してもらう給付)を申請すると、国の基準で計算した額から自己負担分を除いた額が戻ります。申請できるのは、代金を支払った日の翌日から2年以内です。

この記事は、装具の代金を払ったばかりの本人・家族と、病院の医事課や健康保険組合で手続きを案内する担当者に向けて、「この装具は対象になるのか」「何をそろえて、いつまでに出すのか」「いくら戻り、医療費控除ではどう扱うのか」を、法令と厚生労働省の通知、協会けんぽの案内にそって順に整理します。

対象になるかは「医師の指示」と「装着確認」で決まる

治療用装具の療養費の根拠は健康保険法第87条で、被扶養者(家族)の分は同法第110条第7項で準用されます。国民健康保険では国民健康保険法第54条、後期高齢者医療では高齢者の医療の確保に関する法律第77条が同じ趣旨の規定です。

支給の細かな基準は厚生労働省の通知で定められています。2023年4月1日から適用されている「治療用装具に係る療養費の支給の留意事項等について」(以下「留意事項通知」)では、対象を「症状が固定する前に、医師の指示のもと装具療法として用いる、治療上必要な範囲のもので、オーダーメイド装具か既製品装具に限る」としています。判断の分かれ目は次のとおりです。

確認すること 対象になる例 対象にならない例
医師の関与 保険医が診察して必要と認め、指示(処方)し、義肢装具士が採型・採寸と適合調整をして、保険医が装着を確認したもの 保険医の診察や指示、装着確認を経ずに採寸・販売されたもの
使う目的 病気やけがの治療のための装具療法 日常生活や仕事のためのもの(眼鏡〔小児弱視等の治療用を除く〕、補聴器、人工肛門受便器など)、美容目的、スポーツなどの一時的な使用
既製品の扱い オーダーメイドと同等の機能があり治療上必要なもの。厚生労働省のリストに載った製品は支給対象とすることが適当とされる(最終判断は保険者) リスト外の製品は、保険者が個別に判断
処置で使う固定帯 ― 診療報酬で評価される腰部・胸部・頸部固定帯(J119-2、J200)や保険医療材料に当たる装具
数 1回の処方につき1部位1装具 1回の処方で同じ部位に2つ目を作るもの

仕事中や通勤途中のけがや病気は、原則として労災保険の給付対象で、健康保険の対象外です(労災保険の給付対象にならない場合は健康保険の対象になります)。また、弾性ストッキングなどの弾性着衣や、小児弱視等の治療用眼鏡は別の通知で扱われ、添付書類も異なります。この記事はコルセット・サポーター型の装具と靴型装具を中心に説明します。

申請までの流れ:いったん全額を払い、あとで払い戻しを受ける

厚生労働省の通知「治療用装具の療養費支給申請に係る手続き等について」は、手続きの順序を次のように示しています。どこか一つでも欠けると支給されない可能性があるため、順番そのものが大切です。

  1. 保険医が診察し、治療上、装具が必要だと認める
  2. 保険医の指示(処方)で、義肢装具士が装具を製作(または既製品を購入)する
  3. 保険医が装着(適合)を確認する。留意事項通知では、この確認は患者・保険医・義肢装具士の立ち会いで行い、保険医が証明書に記載するとされています
  4. 患者が装具業者に代金を全額支払い、領収書を受け取る
  5. 被保険者が保険者に支給申請書を出し、証明書と領収書(靴型装具は写真も)を添付する

申請するのは被保険者本人です。家族の装具でも被保険者が申請し、協会けんぽでは装具を作った人ごとに申請書を1枚作ります。協会けんぽの提出先は加入している都道府県支部で、郵送のほか電子申請もできます。国民健康保険では市町村または国保組合、後期高齢者医療では後期高齢者医療広域連合が療養費を支給します。

必要書類:証明書・領収書・靴型装具の写真

協会けんぽが案内している添付書類と、厚生労働省の通知が求める記載事項をまとめると次のとおりです。健康保険組合や共済組合では申請書の名称などが異なる場合があるため、加入先の様式を確認してください。

書類 用意する人 記載が必要な事項・注意点
療養費支給申請書(治療用装具) 被保険者 協会けんぽの様式名。傷病名、医師による装着指示日、装具を装着した日、購入日と金額などを書く
治療用装具製作指示装着証明書 医師 患者の氏名・生年月日・傷病名、医療機関の名称・所在地と医師名、装具が必要と認めた日、指示した装具の名称、装着を確認した日
領収書 装具業者(義肢装具士が所属) 内訳別の名称・製品名・メーカー名・価格、オーダーメイドか既製品かの別、担当した義肢装具士の氏名。リストにない既製品は「リスト外」と基準価格の算定根拠も記載
靴型装具の写真 本人 2018年4月1日から保険者が原則として添付を求めている。患者が実際に履く現物だと確認できるもの

医師の証明書は、2023年4月1日から厚生労働省の基準様式「治療用装具製作指示装着証明書」が示され、協会けんぽもこの名称の書類を求めています。協会けんぽ広島支部の以前の案内では「医師の意見及び装具装着証明書」と呼ばれていました。

協会けんぽでは、提出した添付書類は返却されません。ほかの手続きで必要になる場合に備えて、コピーを手元に残しておくよう案内しています。案内担当者向けには、留意事項通知で、領収書は別添の参考例に準じて必要事項を漏れなく書くこととされている点を押さえておくと、保険者からの照会に対応しやすくなります。同じ通知では、義肢装具士が製作記録を装着日から5年間保管することも、日本義肢協会・日本義肢装具士協会が会員に周知・指導している事項として紹介されています。

払い戻される額:基準額と支払額の低いほうから自己負担分を引く

療養費の額は、健康保険法第87条第2項・第3項により、保険診療の例で算定した額(実際に支払った額のほうが低ければその額)から、窓口負担と同じ割合の額を差し引いた額を基準に保険者が決めます。

装具の「基準額」は次のように決まります。

  • オーダーメイド:障害者総合支援法に基づく補装具の基準(平成18年厚生労働省告示第528号)の「購入基準」で、基本価格・製作要素価格・完成用部品の価格を合計した額の100分の106が上限。106としているのは、装具自体は消費税非課税でも材料や部品の仕入れには消費税がかかるためです。
  • 既製品:厚生労働省のリストに載った製品はリストの基準価格、載っていない製品は通知の算出方法による基準価格を上限とし、その100分の106が基準。リストは2026年3月18日の通知で改正され、2026年4月1日から適用されています。

差し引かれる割合は、健康保険では次のとおりです。

装具を作った人 差し引かれる割合 根拠
被保険者(70歳に達する月まで) 3割 健康保険法第74条第1項第1号
被保険者(70歳に達する月の翌月以後) 2割(一定以上の報酬がある人は3割) 同項第2号・第3号
被扶養者(6歳に達した日以後の最初の3月31日まで) 2割 健康保険法第110条第2項第1号ロ
被扶養者(上記の後、70歳に達する月まで) 3割 同号イ
被扶養者(70歳に達する月の翌月以後) 2割(現役並みの報酬がある被保険者の家族は3割) 同号ハ・ニ

70歳未満の被保険者で、基準額が仮に5万円の装具だった場合の計算は次のようになります。

ケース 実際の支払額 計算のもとになる額 療養費 最終的な自己負担
支払額=基準額 50,000円 50,000円 35,000円 15,000円
支払額が基準額より高い 60,000円 50,000円 35,000円 25,000円
支払額が基準額より低い 40,000円 40,000円 28,000円 12,000円

基準額を超えた部分は戻りません。厚生労働省の通知は、治療目的と関係のない本人の希望でデザインや素材、機能を選んだと認められる場合は療養費の対象外とする扱いも示しています。

申請期限:代金を支払った日の翌日から2年

保険給付を受ける権利は、行使できる時から2年を経過すると時効で消えます。どの保険でも期間は同じです。

加入している保険 根拠条文 期間
健康保険(協会けんぽ・健康保険組合) 健康保険法第193条第1項 2年
国民健康保険 国民健康保険法第110条第1項 2年
後期高齢者医療 高齢者の医療の確保に関する法律第160条第1項 2年

数え始める日は、処方された日や装着した日ではありません。厚生省(当時)の昭和31年の通知(回答)は、コルセットの例で「代金を支払った日の翌日」から時効を数えるとしています。協会けんぽも、費用を支払った日の翌日から2年以内を申請期限として案内しています。たとえば2026年10月19日に代金を支払った場合、数え始めるのは10月20日です。支払日は領収書の日付で確認できるので、領収書の日付を控えておくと期限を管理しやすくなります。

医療費控除との関係:払い戻し分を差し引いて計上する

医療費控除(1年間に払った医療費が一定額を超えたときに受けられる所得控除)では、国税庁のタックスアンサーNo.1122が、医師の診療を受けるために直接必要な「コルセットなどの医療用器具等の購入代」で通常必要なものを対象として挙げています。

ただし、療養費で戻る分は自分の負担ではないため差し引きます。控除額は「支払った医療費-保険金などで補てんされる金額-10万円(総所得金額等が200万円未満の人はその5%)」で、上限は200万円です。補てんされる金額の例として、健康保険の家族療養費なども挙げられています。補てん額はその給付の対象になった医療費が限度で、引ききれなくてもほかの医療費からは引きません。

項目 金額(前の計算例で支払額60,000円の場合)
装具の代金として支払った額 60,000円
療養費として払い戻される額 35,000円
医療費控除の計算に含まれる額(支払額-補てん額) 25,000円

医療費控除は、その年の1月1日から12月31日までに実際に支払った医療費が対象です。12月に代金を払い、確定申告の時点で療養費の額がまだ決まっていないときは、受け取る額を見積もって差し引き、あとで確定額が違えばさかのぼって訂正します(所得税基本通達73-10、国税庁の質疑応答事例)。

高額療養費と医療費控除を両方使う場合の手続きの順番は「医療費控除と高額療養費、どちらが得?併用時の手続き順序と申請先」、補てん額を差し引く計算の順序は「高額療養費と医療費控除「計算順序」で還付額最大化ガイド」で説明しています。

よくある質問

Q. ドラッグストアで買ったサポーターも療養費の対象になりますか

対象になりません。療養費の対象は、保険医が診察して必要と認め、義肢装具士に指示して採寸・装着を行い、保険医が装着を確認した装具に限られます。自分で選んで買ったものはこの流れを経ていないため、支給対象外です。

Q. 手術や骨折の処置のときに病院で付けた固定帯は申請できますか

診療報酬で評価される腰部・胸部・頸部の固定帯(J119-2、J200)や保険医療材料に当たる装具は、すでに保険診療で扱われているため療養費の対象外です。手術や処置の際の固定帯・サポーターについては、保険者が必要に応じて保険医に確認するとされています。

Q. 装具が壊れたときの修理や作り直しも対象ですか

保険医の指示による修理も対象です。補装具の基準にある耐用年数は一律に当てはめず、個々の状況に応じて対応するよう通知されています。なお、装着確認後9か月以内に起きた破損や不具合は、災害や本人の過失などによるものを除き、装具業者の責任で改善することとされています。

Q. 2年を過ぎてしまったらどうなりますか

代金を支払った日の翌日から2年を過ぎると、療養費を受け取る権利は時効で消え、申請しても支給されません。証明書は医師が装着を確認する際に記載するものなので、その受診時に受け取り、領収書とあわせて早めに提出するのが確実です。

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まとめ

  • 治療用装具の療養費は、保険医の診察・指示・装着確認を経た、症状固定前の治療用の装具が対象です。
  • 代金をいったん全額払い、申請書に「治療用装具製作指示装着証明書」と内訳入りの領収書を添付します。靴型装具は現物の写真も必要です。
  • 戻る額は、基準額と支払額の低いほうから自己負担割合分を引いた額で、基準額を超えた分は戻りません。
  • 申請期限は、代金を支払った日の翌日から2年です(健康保険法第193条など)。
  • 医療費控除では、装具代から療養費で戻る額を差し引いて計上し、未確定なら見積額で差し引きます。

出典

  • 健康保険法 第1条、第74条第1項、第87条、第110条第2項・第7項、第193条第1項
  • 国民健康保険法 第54条、第110条第1項
  • 高齢者の医療の確保に関する法律 第77条、第160条第1項
  • 厚生労働省「治療用装具に係る療養費の支給の留意事項等について」(令和5年3月17日 保医発0317第1号)
  • 厚生労働省「治療用装具の療養費支給申請に係る手続き等について」(平成30年2月9日 保医発0209第1号、令和4年10月21日改正反映版)
  • 厚生労働省「『療養費の支給対象となる既製品の治療用装具について』の一部改正について」(令和8年3月18日 保発0318第3号)
  • 厚生省保険局健康保険課長回答「療養費の請求権消滅時効の起算日について」(昭和31年3月13日 保文発第1903号)
  • 厚生労働省「治療用装具に係る療養費について」
  • 協会けんぽ「治療用装具・治療用眼鏡等」「療養費」「健康保険療養費支給申請書(立替払等、治療用装具)」「対象申請(電子申請)」「健康保険給付について(よくあるご質問)」、健康保険療養費支給申請書(治療用装具)記入の手引き
  • 協会けんぽ広島支部「医療費の立替払い、治療用装具を作成した時など編」
  • 国税庁 タックスアンサー No.1120「医療費を支払ったとき(医療費控除)」、No.1122「医療費控除の対象となる医療費」、質疑応答事例「医療費を補填する保険金等が未確定の場合」

取り扱いは加入している保険者(協会けんぽ・健康保険組合・市町村国保・後期高齢者医療広域連合など)によって異なる場合があります。実際の手続きは、各保険者の窓口で最新の取り扱いをご確認ください。

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