マイナ保険証の限度額適用|認定証なしで窓口負担を抑える条件と非課税世帯の食事代の手続き

限度額適用認定

マイナ保険証(健康保険証として利用登録したマイナンバーカード)で受診すれば、事前に限度額適用認定証を申請していなくても、保険診療の窓口負担は自己負担限度額までで済みます。ただし対象は「同じ月・同じ医療機関での支払い」に限られます。オンライン資格確認に対応していない医療機関では、これまでどおり認定証が必要です。住民税非課税世帯の方は、マイナ保険証を使う場合でも加入先への申請が要ることがあります。協会けんぽはそのように案内しています。

この記事は、入院や高額な治療を前に「認定証を取っておくべきか、マイナ保険証だけで足りるか」で迷っている本人・家族の方と、窓口で制度を案内する医事課や健康保険組合などの担当者に向けたものです。判断の順番と手続きを整理しました。内容は2026年10月時点の制度にもとづいています。

マイナ保険証で窓口負担が限度額までになる仕組み

高額療養費制度は、医療機関や薬局の窓口で払った額が、ひと月(月の初めから終わりまで)で上限額を超えたときに、超えた分が支給される制度です。以前は、いったん窓口で全額を払ってから支給申請書を出すか、事前に「限度額適用認定証」を申請して窓口に出す必要がありました。

マイナ保険証で受付をすると、オンライン資格確認(医療機関が加入先の資格情報をオンラインで照会する仕組み)を通じて、加入先が持っている限度額の情報が医療機関に渡ります。そのため認定証がなくても、保険診療については限度額を超える分を窓口で払わずに済みます。厚生労働省によると、オンライン資格確認のシステムはほぼ全ての医療機関・薬局に導入されています。

限度額情報を渡すには、本人の同意が前提です。協会けんぽ群馬支部のリーフレット(2024年2月作成)は、マイナ保険証を使う場合はカードリーダーの画面で「限度額情報を提供する」を選べば、認定証の準備は不要と案内しています(同じリーフレットにある窓口で口頭で申し出る方法は、従来の健康保険証を出す場合のものとして書かれており、健康保険証の有効期限が切れた今は当てはまりません)。会計で限度額が反映されていないときは、まず受付時に限度額情報の提供に同意したかを確かめてください。

窓口で限度額までに抑えられるもの・抑えられないものは次のとおりです。

支払いの種類 マイナ保険証で受診したときの扱い
同じ月・同じ医療機関での保険診療の自己負担 窓口での支払いは限度額まで
別の医療機関や薬局での支払い 窓口では合算されない(同じ月・同じ医療機関の支払いに限るため)
入院時の食費 高額療養費の対象外。1食ごとの標準負担額を別に払う
差額ベッド代など 高額療養費の対象外

複数の医療機関・薬局での支払いは、窓口では合算して調整されません。加入先の定める合算の条件に当てはまれば、加入先の案内に沿って、後から高額療養費の支給を受けられます。

認定証の申請が今も必要か:判断の順番

判断のポイントは次の3つです。「受診先がオンライン資格確認に対応しているか」「マイナ保険証を使えるか(加入先にマイナンバーが登録されているか)」「住民税非課税などの低所得に当たるか」。協会けんぽの案内をもとに整理すると次のようになります。

状況 必要な対応(協会けんぽの案内)
対応している医療機関でマイナ保険証を使う(低所得に当たらない) 認定証の申請は不要
対応している医療機関でマイナ保険証を使う(被保険者が住民税非課税などの低所得) 「限度額適用・標準負担額減額認定」の申請が必要。認定後は窓口での認定証の提示は不要
オンライン資格確認に対応していない医療機関で受診する 事前に認定証を申請し、窓口に出す
協会けんぽにマイナンバーが登録されていない 認定証を申請して窓口に出す(マイナンバー新規(変更)登録申出書で登録することもできる)

70歳以上75歳未満の方がマイナ保険証ではなく資格確認書で受診する場合は、所得区分によって認定証が必要かどうかが分かれます。協会けんぽの案内は次のとおりです。

所得区分(70〜74歳) マイナ保険証で受診 資格確認書で受診
現役並みⅢ(標準報酬月額83万円以上) 高齢受給者証・認定証とも不要 高齢受給者証は必要、認定証は不要
現役並みⅡ(標準報酬月額53万〜79万円) 高齢受給者証・認定証とも不要 高齢受給者証・認定証とも必要
現役並みⅠ(標準報酬月額28万〜50万円) 高齢受給者証・認定証とも不要 高齢受給者証・認定証とも必要
一般 高齢受給者証・認定証とも不要 高齢受給者証は必要、認定証は不要
低所得Ⅱ・低所得Ⅰ 認定証の提示は不要だが申請は必要 高齢受給者証・認定証とも必要

厚生労働省のよくある質問によると、マイナ保険証を使えば次のものを窓口に持っていく必要はなくなります。限度額適用認定証、限度額適用・標準負担額減額認定証(その記載がある資格確認書を含む)、特定疾病療養受療証などです。国民健康保険・後期高齢者医療制度・健康保険組合に加入している方は、低所得区分で申請が必要かどうかを加入先に確認してください。

対応していない医療機関や、マイナ保険証で受付できないとき

オンライン資格確認を使えない医療機関では、限度額の情報が自動では伝わりません。協会けんぽは、この場合の受診方法として次の組み合わせを示しています。

窓口に出すもの 補足
マイナポータルの画面とマイナ保険証 資格情報をマイナポータルで示す
資格情報のお知らせとマイナ保険証 資格情報のお知らせだけでは受診できない
資格確認書 マイナ保険証を持たない方に交付されるもの
被保険者資格申立書(当面の措置) 資格があるのに「資格無効」「資格情報なし」と表示された場合や、機器の不具合で確認できない場合に限り、申し立てた自己負担割合(3割など)で受診できる

これらはどれも資格を確認するためのものです。窓口負担を限度額までにするには、事前に限度額適用認定証を申請して出しておく必要があります。協会けんぽは、申請を受け付けた月より前の月の分の認定証は交付できないとしています。入院や手術が決まったら、その月のうちに申請しておくのが安全です。申請の流れは限度額適用認定証の申請方法と使い方で説明しています。

認定証が間に合わず限度額を超えて払ってしまっても、超えた分は高額療養費として後から支給を受けられます。払い戻しの計算と手順は限度額適用認定証を忘れたら?全額負担時の払戻請求と計算方法にまとめています。

住民税非課税世帯の食事代を減らす手続き

入院中の食事代は高額療養費の対象外です。患者は1食ごとに国が定める「標準負担額」を払います(1日3食分が上限)。住民税非課税世帯の方などは、この額が減額されます。金額は2026年6月1日に改定されました。

区分 2025年4月1日〜2026年5月31日 2026年6月1日から
一般の方 510円 550円
難病患者、小児慢性特定疾病患者の方(住民税非課税世帯を除く) 300円 330円
住民税非課税世帯の方 240円 270円
住民税非課税世帯の方で、過去1年間の入院日数が90日を超えている場合 190円 220円
住民税非課税世帯に属し、所得が一定基準に満たない70歳以上の高齢受給者 110円 130円

医療療養病床に入院する65歳以上の方は、食費と居住費を合わせた「生活療養標準負担額」の対象です。2026年6月1日からの額は次のとおりです。低所得者Ⅱ(住民税非課税世帯)は食費1食270円・居住費1日430円です。低所得者Ⅰ(年金収入80万円以下等)は食費1食160円・居住費1日430円です。

減額を受けるには、加入先の認定が必要です。協会けんぽの場合の流れは次のとおりです。

  1. 「健康保険限度額適用・標準負担額減額認定申請書」を電子申請するか、加入している協会けんぽの都道府県支部に郵送します。
  2. 申請書でマイナンバーを使った情報照会を希望すれば、住民税非課税を確かめるための非課税証明書は添付しなくてかまいません。ただし、協会けんぽがマイナンバーを収録していない場合や、照会で情報を取得できない場合は、書類の提出を求められることがあります。
  3. 長期入院(申請月以前の1年間に90日を超えて入院)に当たる場合は、申請書の長期入院欄に入院期間を書き、入院期間がわかる領収書などを添付します。日数に数えられるのは、低所得者と認められていた期間の入院だけです。
  4. 認定を受けた後は、オンライン資格確認に対応した医療機関にマイナ保険証で受診すれば、認定証を出さなくても限度額と食事代の減額が適用されます。対応していない医療機関で受診する場合や、マイナンバーが未登録の場合は、認定証を窓口に出します。

認定の有効期間は、申請した月の初日(加入した月に申請した場合は資格を取得した日)から、最初に来る7月末日までです。有効期間は申請月の初日からで、それより前の月にはさかのぼらないため、入院が決まったら早めに申請しておくと安心です。協会けんぽの説明ページには、マイナ保険証で受診する場合もあわせて認定証を出すよう求める記載もあります。交付された認定証は入院時に持っていくと確実です。

低所得区分の収入要件や限度額は限度額適用認定証の低所得者区分で解説しています。国民健康保険や後期高齢者医療制度の方は、市区町村や後期高齢者医療広域連合の窓口で手続きを確認してください。

2024年12月以降の保険証の扱いと、今の受診方法

従来の健康保険証は2024年12月2日以降は新しく発行されなくなり、マイナ保険証を基本とする仕組みに移りました。従来の保険証の有効期限はすでに切れています。今はマイナ保険証か資格確認書を窓口に出す運用です。経過は次のとおりです。

時期 主な変更
2024年12月2日 従来の健康保険証の新規発行が終了。協会けんぽは、新規加入者全員への「資格情報のお知らせ」と、マイナ保険証で受診できない方への資格確認書の発行を開始
2025年12月1日 従来の健康保険証の有効期限が終了(協会けんぽの表記では、2025年12月2日に発行済みの保険証すべての有効期限が到来)
2026年7月31日 協会けんぽで、期限切れに気付かず持ってきた従来の保険証を使えるようにしていた対応が終了。後期高齢者医療制度の加入者に暫定措置で交付された資格確認書の有効期限(2026年7月末)
2026年8月以降 後期高齢者医療制度の資格確認書の交付は、加入している後期高齢者医療広域連合の案内による

マイナ保険証を持っていない方には、当分の間、資格確認書が無料・申請なしで交付されます。対象は、マイナンバーカードを取得していない方、利用登録をしていない方、利用登録を解除した方、電子証明書の有効期限が切れた方などです。マイナンバーカードでの受診が難しい高齢の方や障害のある方などと、カードを紛失・更新中の方は、申請すれば交付を受けられます。資格確認書の有効期限は5年以内で保険者が決めます。親族などの法定代理人や介助者などによる代理申請もできます(デジタル庁の案内)。

マイナンバーカードの電子証明書の有効期限が切れても、有効期限満了日が属する月の末日から3か月間はマイナ保険証として使えます(この間は資格情報の確認だけで、診療情報・薬剤情報などは提供できません)。限度額の扱いを途切れさせないためにも、更新の案内が届いたら早めに手続きをしてください。

2026年8月からの限度額の見直しと認定証の有効期限

高額療養費の自己負担限度額は、2026年8月から月額の上限が見直されました。年単位の上限額(年間上限)も新しく設けられています。2027年8月からは、所得区分をさらに細かく分ける予定です。厚生労働省の資料に載っている、2026年8月〜2027年7月の70歳未満の月単位の上限額は次のとおりです。

年収換算(厚生労働省資料の表記) 健康保険(標準報酬月額) 国民健康保険(旧ただし書き所得) 月単位の上限額
約1,160万円〜 83万円以上 901万円超 270,300円+(医療費−901,000円)×1%
約770万円〜約1,160万円 53万〜79万円 600万〜901万円 179,100円+(医療費−597,000円)×1%
約370万円〜約770万円 28万〜50万円 210万〜600万円 85,800円+(医療費−286,000円)×1%
〜約370万円 26万円以下 210万円以下 61,500円
住民税非課税 ― ― 36,900円

70歳以上の上限額や年間上限の金額は、厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」に載っている資料で確認できます。

協会けんぽは、2027年8月の所得区分の見直しに合わせて、2026年8月以降に交付する限度額適用認定証の有効期限を最長で2027年7月31日までとしています。その後も必要な場合は、2027年8月以降に改めて申請します。オンライン資格確認に対応した医療機関でマイナ保険証を使う方は、低所得に当たらなければ認定証そのものが要りません。そのため、こうした有効期限を管理する必要もありません。

よくある質問

Q. 限度額適用認定証を持っていますが、マイナ保険証で受診してもよいですか。

受診できます。厚生労働省は、マイナ保険証を使えば限度額適用認定証や限度額適用・標準負担額減額認定証を窓口に持っていく必要はなくなると説明しています。ただし受診先がオンライン資格確認に対応していない場合は、認定証を出す必要があります。

Q. 病院と院外の薬局の支払いは、窓口で合わせて限度額までになりますか。

なりません。マイナ保険証による窓口での限度額の適用は、同じ月・同じ医療機関の支払いに限られます。合算の条件に当てはまれば、上限を超えた分は加入先の案内に沿って後から高額療養費として支給を受けられます。

Q. 住民税非課税世帯です。マイナ保険証を使えば、食事代も自動的に安くなりますか。

協会けんぽは、被保険者が低所得に当たる場合、マイナ保険証を使うときでも「限度額適用・標準負担額減額認定」の申請が必要と案内しています。入院日数が90日を超えて、さらに低い額を受けたい場合は、入院期間の証明書類を付けて申請します。ほかの保険者に加入している方は、加入先に確認してください。

Q. 有効期限が切れた従来の保険証しか手元にありません。

従来の健康保険証の有効期限は2025年12月1日で終わっています。協会けんぽでは、期限切れの保険証を持ってきた場合の対応も2026年7月31日で終了しました。マイナ保険証の利用登録をするか、加入先から交付される資格確認書で受診してください。

💡 実務で限度額を判定する立場の方へ。2026年8月改正の所得区分・世帯合算・年間上限をまとめた実務チェックガイドを無料で配布しています。

まとめ

  • オンライン資格確認に対応した医療機関でマイナ保険証を使い、限度額情報の提供に同意すれば、認定証がなくても窓口負担は自己負担限度額までになります。
  • 窓口での適用は同じ月・同じ医療機関の支払いに限られます。食費や差額ベッド代は対象外です。
  • 対応していない医療機関で受診する場合や、加入先にマイナンバーが登録されていない場合は、事前に限度額適用認定証を申請します。申請した月より前の月の分は交付されません。
  • 協会けんぽでは、住民税非課税世帯の食事代の減額はマイナ保険証を使う場合でも申請が必要です。2026年6月1日からの標準負担額は1食270円、長期入院(過去1年で90日超)の場合は220円です。
  • 従来の健康保険証は2025年12月1日で有効期限が終わりました。今はマイナ保険証か資格確認書で受診します。

出典

  • 厚生労働省「マイナンバーカードの健康保険証利用のメリット」
  • 厚生労働省「マイナンバーカードの健康保険証利用についてよくある質問」
  • 厚生労働省「マイナンバーカードの健康保険証利用(マイナ保険証)について」
  • 厚生労働省「資格確認書について(マイナ保険証を使わない場合の受診方法)」
  • 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」、同「患者負担割合及び高額療養費自己負担限度額(令和8年8月~令和9年7月)」
  • 全国健康保険協会「限度額適用認定証」「高額療養費」「健康保険限度額適用・標準負担額減額認定申請書」「同 記入例」
  • 全国健康保険協会「入院時食事療養費・入院時生活療養費・保険外併用療養費・訪問看護療養費」「マイナ保険証等での受診」
  • 全国健康保険協会群馬支部「限度額適用認定証の準備が不要です」(2024年2月作成)
  • デジタル庁ニュース「2025年8月以降順次切り替え!健康保険証の注意点は?(後期高齢者医療制度・国民健康保険の被保険者の方)」

取り扱いは加入している保険者(協会けんぽ・健康保険組合・市町村国保・後期高齢者医療広域連合など)によって異なる場合があります。実際の手続きは、各保険者の窓口で最新の取り扱いをご確認ください。

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