健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)の加入者が仕事以外の理由で亡くなったときは、申請すると「埋葬料」5万円などが出ます。国民健康保険や後期高齢者医療制度の加入者だった場合は「葬祭費」になります。葬祭費の額は市区町村や広域連合の条例で決まるため、地域によって違います。健康保険の埋葬料は申請しないと支給されないので、遺族などが手続きをする必要があります。健康保険の埋葬料も、国民健康保険・後期高齢者医療の葬祭費も、法律で2年の時効が定められています。
この記事は、家族を亡くした方の「自分は申請できるのか」「どの窓口に何を出すのか」「退職後に亡くなった場合はどうなるのか」という迷いに答えます。そのために、亡くなった方が入っていた保険ごとに整理しました。病院の医事課や健康保険組合で遺族を案内する担当の方は、窓口での確認にも使えます。
まず確認すること:亡くなった方が入っていた保険はどれか
給付の名前も窓口も、亡くなった方がどの医療保険に入っていたかで決まります。申請する人の保険で決まるわけではありません。後期高齢者医療制度の被保険者(原則75歳以上)は、働いていても健康保険の被保険者になれません(健康保険法第3条第1項第7号)。健康保険の被扶養者(扶養家族)にもなれません(同条第7項ただし書)。
| 亡くなった方の加入先 | 給付の名前 | 金額 | 申請先 |
|---|---|---|---|
| 健康保険の被保険者本人(会社員など) | 埋葬料(受け取る人がいなければ埋葬費) | 5万円(埋葬費は5万円までの実費) | 協会けんぽの支部、または健康保険組合 |
| 健康保険の被扶養者(扶養家族) | 家族埋葬料 | 5万円 | 同上(被保険者が申請) |
| 国民健康保険(市区町村・国保組合) | 葬祭費(または葬祭の給付) | 市区町村の条例・国保組合の規約で決まる額 | 市区町村、または国保組合 |
| 後期高齢者医療制度(原則75歳以上) | 葬祭費(または葬祭の給付) | 広域連合の条例で決まる額 | 後期高齢者医療広域連合 |
後期高齢者医療制度の被保険者は、広域連合の区域内に住む75歳以上の方です。65歳以上75歳未満で一定の障害があると広域連合の認定を受けた方も含まれます(高齢者の医療の確保に関する法律第50条)。
健康保険の埋葬料・埋葬費・家族埋葬料:誰がいくら受け取れるか
健康保険の給付は3種類あります。亡くなったのが本人か家族か、申請する人がどんな立場かで分かれます。埋葬料の金額は、健康保険法施行令第35条で5万円と決められています。
| 亡くなった人 | 申請する人 | 給付 | 支給額 | 根拠 |
|---|---|---|---|---|
| 被保険者 | 被保険者に生計を維持されていた人 | 埋葬料 | 5万円 | 健康保険法第100条第1項 |
| 被保険者 | 生計維持の関係がなく、実際に埋葬を行った人(埋葬料を受け取る人がいない場合だけ) | 埋葬費 | 5万円を上限に、埋葬に実際にかかった費用 | 同条第2項 |
| 被扶養者 | 被保険者 | 家族埋葬料 | 5万円 | 同法第113条 |
「生計を維持されていた人」かどうかの判断
協会けんぽの案内では、被保険者に生活費の一部でも頼っていれば対象です。民法上の親族や遺族である必要はありません。被保険者が世帯主かどうか、同じ世帯かどうかも問われません。たとえば別居していても、定期的に仕送りを受けていた人は対象になり得ます。その場合は仕送りの記録を添付します(後述)。
埋葬費の対象になる「実費」
埋葬費は、生計維持の関係にある人がいないときに、埋葬を行った人へ実費を支給するものです。協会けんぽは、対象の費用として霊柩車代、霊柩運搬代、霊前供物代、火葬料、僧侶への謝礼などを挙げています。上限は5万円なので、実費が5万円より少なければその額になります。
健康保険組合の上乗せ給付
健康保険組合は、規約で決めれば、法律で定められた給付に加えて別の給付を行えます(健康保険法第53条)。埋葬料に上乗せがあるかは組合ごとに違います。加入していた組合の規約や案内で確認してください。
退職後・資格喪失後に亡くなった場合
会社を辞めて健康保険の資格を失ったあとに亡くなっても、次のどれかに当てはまれば埋葬料が出ます(健康保険法第105条)。支給するのは最後に加入していた健康保険です。受け取る人がいなければ埋葬費になります。
| 状況 | 支給されるか |
|---|---|
| 資格を失った日から3か月以内に亡くなった | 支給される(資格を失う前の加入期間の長さは問われない) |
| 資格を失ったあとも傷病手当金・出産手当金の継続給付を受けている間に亡くなった | 支給される |
| 上の継続給付を受けなくなった日から3か月以内に亡くなった | 支給される |
| 被扶養者だった家族が、被保険者の資格喪失後に亡くなった | 家族埋葬料は支給されない |
継続給付とは、資格喪失時に受けていた傷病手当金・出産手当金を退職後も受け続けられる仕組みです。資格を失う日の前日まで、続けて1年以上被保険者だった人が対象です(同法第104条)。任意継続被保険者だった期間などは、この1年に含めません。
退職後に別の保険に入っていた場合は注意が必要です。協会けんぽは、資格喪失後の埋葬料に当てはまっても、資格喪失後に入った健康保険で埋葬料を請求していれば支給しないとしています。また、資格喪失後に船員保険の被保険者になった人には、この給付はありません(同法第107条)。国民健康保険に移っていた場合の扱いは、次の章で説明します。
国民健康保険・後期高齢者医療の葬祭費
国民健康保険の市区町村と国保組合は、条例または規約に従って、葬祭費の支給か葬祭の給付を行うこととされています。ただし、特別な理由があれば、その全部または一部を行わないこともできます(国民健康保険法第58条第1項)。後期高齢者医療広域連合も、条例に従って葬祭費の支給か葬祭の給付を行います(高齢者の医療の確保に関する法律第86条第1項)。
このように、葬祭費の金額は法律では決まっておらず、各市区町村・国保組合・広域連合の条例や規約で決まります。健康保険の5万円をそのまま当てはめないでください。亡くなった方が住んでいた市区町村、または広域連合の公式サイトや窓口で確認してください。
誰が申請するか
厚生労働省が示す国民健康保険組合の規約例では、被保険者が亡くなったときに「その者の葬祭を行う者」へ葬祭費を支給する形になっています。健康保険の埋葬料のような「生計を維持されていた人」という条件はありません。市区町村の国保についても、厚生労働省の国民健康保険条例準則では、同じく「葬祭を行う者」に葬祭費を支給する形です。実際に申請できる人の範囲や必要書類は、市区町村・広域連合の各窓口の案内で確認してください。
健康保険の埋葬料と重ねて受け取れるか
同じ規約例では、同じ死亡について健康保険法、船員保険法、国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法、高齢者医療確保法で同じ種類の給付を受けられる場合、国保組合の葬祭費は支給しないとしています。たとえば退職後3か月以内に亡くなり、そのとき国保に入っていた場合は、前の健康保険の埋葬料と国保の葬祭費のどちらの対象にもなり得ます。どちらに申請すべきかは、両方の窓口に事情を伝えて確認してください。
健康保険の埋葬料を申請する手順と必要書類
協会けんぽの場合を例に、申請の流れを示します。健康保険組合に入っていた場合は、その組合の様式と案内に従ってください。
- 会社側の手続き:亡くなった方の保険証・資格確認書(持っている場合)を会社に返します。会社は日本年金機構の事務センターに届出を出します。被保険者が亡くなった場合は被保険者資格喪失届(死亡日の翌日が資格喪失日)、被扶養者が亡くなった場合は被扶養者異動届(死亡日の翌日が扶養解除日)です。埋葬料は、年金機構で資格喪失・扶養解除の処理が終わってから支給されます。
- 申請書を作る:様式は「健康保険埋葬料(費)支給申請書」です。被保険者の記号・番号を書けば、マイナンバーは書かなくてかまいません。
- 提出する:電子申請するか、紙の申請書を加入していた協会けんぽ支部へ郵送します。加入支部は「資格情報のお知らせ」やマイナポータルで確認できます。
- 支給:協会けんぽは、審査の結果支払える場合は受付日から10営業日以内に支払うと案内しています(2026年10月時点の協会けんぽ申請書ページ)。
ケース別の添付書類(協会けんぽ)
| ケース | 主な添付書類 |
|---|---|
| 被保険者が亡くなり被扶養者が申請する/被扶養者が亡くなり被保険者が申請する | 事業主による死亡の証明(申請書の証明欄)。証明を受けられない場合は、下の〔A〕のどれか |
| 被保険者が亡くなり、被扶養者以外で生計を維持されていた人が申請する | 亡くなった被保険者と申請者が載っている住民票。住まいが別なら、定期的な仕送りがわかる預貯金通帳・現金書留のコピー、または被保険者が申請者の公共料金などを払ったことがわかる領収書など |
| 生計を維持されていた人がおらず、埋葬を行った人が埋葬費を申請する | 支払った人のフルネームと費用額が書かれた領収書、費用の内訳がわかる明細書 |
| 〔A〕事業主の証明を受けられない場合/任意継続被保険者(その被扶養者を含む)が亡くなった場合 | 次のうちどれか一つ:埋葬許可証または火葬許可証のコピー、死亡診断書・死体検案書・検視調書のコピー、亡くなった方の戸籍(除籍)謄本・抄本、住民票など |
| 死因が仕事中・通勤途中の災害で、労災の給付を請求中 | 労働基準監督署への照会に関する同意書 |
| 亡くなる原因になったけがが、第三者の行為によるもの | 第三者行為による傷病届 |
申請書にマイナンバーを書いた場合は、本人確認書類も必要です。協会けんぽは、これらは主な書類で、状況によってほかの書類が必要になることもあるとしています。
申請期限は2年:数え始める日に注意
保険給付を受ける権利は、受け取れるようになった時から2年で時効によりなくなります(健康保険法第193条第1項)。国民健康保険の給付も(国民健康保険法第110条第1項)、後期高齢者医療の給付も(高齢者の医療の確保に関する法律第160条第1項)、同じく2年です。健康保険では、給付の種類によって数え始める日が違います。
| 給付 | 時効を数え始める日(起算日) |
|---|---|
| 埋葬料・家族埋葬料 | 死亡日の翌日 |
| 埋葬費 | 埋葬を行った日の翌日 |
国保・後期高齢者医療の葬祭費で時効をいつから数えるかは、市区町村・国保組合・広域連合の案内で確認してください。死亡後の医療費の精算も進める場合は、死亡後の高額療養費を相続人が請求する方法も参考にしてください。埋葬料と高額療養費は、申請先が同じ保険者でも申請は別々です。
よくある質問
Q. 仕事中や通勤中の事故で亡くなった場合も、埋葬料は出ますか?
健康保険の埋葬料は、仕事以外の理由で亡くなった場合が対象です。同じ死亡について労働者災害補償保険法などで同じ種類の給付を受けられるなら、健康保険の埋葬料・家族埋葬料は出ません(健康保険法第55条第1項)。労災の給付を請求している間に埋葬料を申請するときは、協会けんぽでは労働基準監督署への照会に関する同意書を添付します。
Q. 76歳の父は会社で働き続けていました。会社の健康保険の埋葬料は出ますか?
75歳以上の方は、生活保護を受けている世帯の方などを除き、後期高齢者医療制度の被保険者になります(高齢者の医療の確保に関する法律第50条・第51条)。健康保険の被保険者にはなれません(健康保険法第3条第1項第7号)。そのため、申請するのは後期高齢者医療の葬祭費です。申請先はお父様が加入していた後期高齢者医療広域連合なので、受付窓口は広域連合の案内で確認してください。
Q. 交通事故で亡くなりました。埋葬料の申請で気をつけることはありますか?
第三者の行為が原因の場合、協会けんぽでは申請時に「第三者行為による傷病届」の添付が必要です。保険者は、給付した額の範囲で、遺族などが加害者に対して持つ損害賠償請求権を引き継ぎます。また、同じ理由で加害者から損害賠償を受けたときは、その額の範囲で保険給付が行われません(健康保険法第57条)。示談の前に、加入していた保険者に相談しておくと行き違いを防げます。
Q. 亡くなった被保険者に生計を維持されていた人がいない場合はどうなりますか?
埋葬料を受け取る人がいない場合は、実際に埋葬を行った人が埋葬費を申請できます(健康保険法第100条第2項)。協会けんぽはこれを「実際に埋葬を行った人(費用を支払った人)」と案内しています。申請には、領収書と費用の明細書が必要です。
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まとめ
- 給付の種類は、亡くなった方が入っていた保険で決まります。健康保険なら埋葬料・埋葬費・家族埋葬料、国保・後期高齢者医療なら葬祭費です。
- 健康保険の埋葬料・家族埋葬料は5万円、埋葬費は5万円を上限とする実費です。埋葬料は、生活費の一部でも被保険者に頼っていた人が申請できます。
- 国保・後期高齢者医療の葬祭費の額は条例・規約で決まり、地域によって違います。
- 退職後3か月以内の死亡や、傷病手当金などの継続給付中・終了後3か月以内の死亡でも、最後に入っていた健康保険から埋葬料が出ます。ただし、被扶養者だった家族の死亡は対象外です。
- 期限は健康保険・国保・後期高齢者医療とも2年です。健康保険では、埋葬料は死亡日の翌日から、埋葬費は埋葬日の翌日から数えます。
出典
- 健康保険法 第3条、第53条、第55条、第57条、第100条、第104条、第105条、第107条、第113条、第193条
- 健康保険法施行令 第35条
- 国民健康保険法 第58条、第110条
- 高齢者の医療の確保に関する法律 第50条、第51条、第86条、第160条
- 厚生労働省「国民健康保険組合規約例について」(昭和34年2月20日保発第13号)
- 厚生労働省「国民健康保険条例準則について」(昭和34年1月27日保発第5号)
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「埋葬料・埋葬費」
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「ご本人・ご家族が亡くなったとき(埋葬料・埋葬費)」(よくあるご質問)
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「健康保険埋葬料(費)支給申請書」
取り扱いは加入している保険者(協会けんぽ・健康保険組合・市町村国保・後期高齢者医療広域連合など)によって異なる場合があります。実際の手続きは、各保険者の窓口で最新の取り扱いをご確認ください。

