紹介状を持たずに特定機能病院や、一般病床200床以上の地域医療支援病院・紹介受診重点医療機関を外来で受診すると、通常の窓口負担(3割など)とは別に「特別の料金」がかかります。金額は初診が医科7,000円以上・歯科5,000円以上、再診が医科3,000円以上・歯科1,900円以上です。2026年度(令和8年度)の診療報酬改定でもこの額は変わっていません。2022年(令和4年)10月1日から適用されている金額が今も使われています。この料金は高額療養費の計算に入りません。
この記事では、次の4つの疑問に、厚生労働省の通知と療養担当規則をもとに順番に答えます。行こうとしている病院で特別の料金がかかるのか。自分は払わなくてよい人に当たるのか。救急で行った場合はどうなるのか。払った料金を高額療養費や医療費控除で取り戻せるのか。病院の医事課や健康保険組合で説明を担当する方が根拠を確かめるのにも使えるよう、「病院の義務」と「病院の判断に任されていること」を分けて書きます。
特別の料金がかかる病院かどうかを確かめる
特別の料金は、健康保険の「選定療養」の一つです。選定療養とは、患者が自分で選んで受ける療養のうち、保険診療に加えて追加の料金を取ることが認められているものをいいます。病院の種類によって、料金を取るのが義務か、病院の判断に任されているかが違います。
| 病院の種類 | 特別の料金の扱い | 金額 |
|---|---|---|
| 特定機能病院(大学病院など、高度な医療の提供・開発・研修を行う病院) | 取らなければならない(療養担当規則第5条第3項) | 国が決めた最低額以上 |
| 地域医療支援病院(救急医療や紹介患者の診療を行い、かかりつけ医を支える病院)のうち一般病床200床以上 | 同上 | 同上 |
| 紹介受診重点医療機関(紹介患者の外来を基本とする病院として都道府県が公表した病院)のうち一般病床200床以上 | 同上(新しく公表された病院は、公表日から6か月間は取らなくてよいという経過措置あり) | 同上 |
| 上記以外で一般病床200床以上の病院 | 取ることができる(病院の判断) | 病院が決める(社会的にみて妥当で適切な範囲) |
基準になるのは「一般病床」の数です。療養病床なども含めた病床の合計ではありません。地域医療支援病院や紹介受診重点医療機関でも、一般病床が200床未満なら取る義務はありません。
その病院で実際に特別の料金がかかるかは、病院の掲示で確かめられます。保険医療機関は、選定療養の内容と費用を院内の見やすい場所に掲示しなければなりません。ウェブサイトにも原則として載せる決まりです(療養担当規則第5条の4)。受診前に病院のウェブサイトで「選定療養」や「紹介状をお持ちでない方」といった案内を見ておくのが確実です。
いくらかかるか:初診・再診の金額と窓口負担の内訳
義務がある3種類の病院は、次の額「以上」を取ります。これは最低額なので、もっと高く設定している病院もあります。金額には消費税が含まれます。
| 区分 | 対象になる患者 | 医科 | 歯科 |
|---|---|---|---|
| 初診 | 他の医療機関などからの紹介を受けずに受診した患者 | 7,000円以上 | 5,000円以上 |
| 再診 | 病院が他の病院(一般病床200床未満)や診療所への紹介を文書で申し出たのに、同じ病院を受診し続けた患者 | 3,000円以上 | 1,900円以上 |
この金額は2022年10月1日に引き上げられました。それまでは、初診が医科5,000円・歯科3,000円、再診が医科2,500円・歯科1,500円でした。厚生労働省の令和8年度診療報酬改定の資料では、この料金は「今改定では変更なし」とされています。
特別の料金を払う患者については、保険で計算する点数も減らされます。減る点数は、初診が200点(医科・歯科とも)、再診が医科50点・歯科40点です。そのため窓口の3割負担分は少し下がりますが、特別の料金を足すと合計は大きく増えます。厚生労働省のリーフレットの例(医科の初診、医療費10,000円、3割負担)では次のとおりです。
| 項目 | 金額 | 計算 |
|---|---|---|
| 一部負担金(3割) | 2,400円 | (10,000円-2,000円)×3割 |
| 特別の料金 | 7,000円 | 最低額に設定している場合 |
| 患者が払う合計 | 9,400円 | 2,400円+7,000円 |
| 保険から病院に払われる額 | 5,600円 | (10,000円-2,000円)×7割 |
初診の扱いには細かい決まりがあります。料金を取れるのは、医学的に初診といえる診療をしたときです。同時に2つ以上の病気で初診を受けても、料金は1回分です。1つの病気で通っている途中に別の病気で初診を受けても、料金は最初の初診のときだけです。医科と歯科がある病院では、互いに関係する病気でなければ、医科と歯科で別々に取ることができます。
再診の特別の料金は、「紹介状を持って受診した人が2回目以降に払う料金」ではありません。病院から「病状が落ち着いたので地域の診療所などに移ってください」と文書で申し出(逆紹介)を受けたのに、同じ病院を受診し続けた場合にかかります。申し出の文書には、紹介の用意があること、紹介先の医療機関名、次回からいくら特別の料金を取るかが書かれます。申し出を受けた日は料金を取られません。
かからないケース:「求めてはならない」と「求めなくてもよい」の違い
紹介状がなくても特別の料金がかからない場合は、2種類あります。病院が料金を取ってはいけない場合と、病院の判断で取らなくてもよい場合です。後者は取るかどうかを病院が決めるので、同じ事情でも病院によって扱いが違うことがあります。
| 区分 | 初診 | 再診 |
|---|---|---|
| 病院が取ってはならない(緊急その他やむを得ない場合) | 救急の患者/国の公費負担医療制度の受給対象者/地方単独の公費負担医療の受給者(特定の障害や病気に着目した事業に限る)/無料低額診療事業を行う医療機関で、その制度の対象になる人/エイズ拠点病院でのHIV感染者 | 初診と同じ |
| 病院の判断で取らなくてもよい(正当な理由がある場合) | 同じ病院の他の診療科から院内紹介された患者/医科と歯科の間で院内紹介された患者/特定健康診査・がん検診などの結果で精密検査を指示された患者/救急医療事業・周産期事業などで休日や夜間に受診した患者/外来からそのまま入院した患者/地域にその診療科を掲げる医療機関がほかになく、その病院が実質的に外来を担っている診療科の患者/治験協力者/災害の被災者/労働災害・公務災害・交通事故・自費診療の患者/その他、病院が直接受診の必要性を特に認めた患者 | 救急医療事業・周産期事業などで休日や夜間に受診した患者/外来からそのまま入院した患者/災害の被災者/労働災害・公務災害・交通事故・自費診療の患者/その他、病院が直接受診の必要性を特に認めた患者 |
「その他、病院が直接受診の必要性を特に認めた患者」について、通知は、急ぐ必要のない時間外の受診や単なる予約受診など、患者の都合による受診は含まないと明記しています。「予約を取ったから」「夜なら空いているから」という理由では、この免除には当たりません。
健診で精密検査を指示された人は、「病院の判断で取らなくてもよい」側に入ります。健診結果を持っていけば必ず無料になるとは限らないので、受診前に病院へ確認しておくと安心です。地方単独の公費負担医療も、事業の目的が特定の障害や病気に着目したものかどうかで扱いが変わります。当てはまるかどうかは、病院か、事業を行っている自治体に確かめてください。
救急で受診した場合の扱い
救急の患者は「緊急やむを得ない場合」に当たり、病院は特別の料金を取ってはなりません。病院が決められることではなく、料金を取ること自体が認められていません。
ただし通知の言葉は「救急の患者」です。救急車で来たかどうかや、来た時間帯で一律に区切る書き方にはなっていません。一方で、急ぐ必要のない時間外の受診は、病院の判断で免除できる場合からも外されています。つまり「夜間・休日だから」「救急外来から入ったから」というだけで免除されるとは限りません。
これとは別に、救急医療事業や周産期事業の中で休日・夜間に受診した患者は、「病院の判断で取らなくてもよい」場合に入っています。外来受診からそのまま入院した患者も、同じく「取らなくてもよい」側です(救急の患者に当たる場合は、もともと料金を取ってはなりません)。
救急搬送そのものの費用の税金上の扱いは、救急車の費用は医療費控除の対象外?例外ケースも解説で説明しています。
高額療養費・医療費控除の対象になるか
高額療養費:特別の料金は対象外
高額療養費は、1か月の医療費の自己負担が上限額を超えたときに、超えた分が払い戻される制度です。この制度では、保険外併用療養費の差額部分は対象になりません。特別の料金は、選定療養について保険で計算した額を超えて病院が受け取るお金なので、この差額部分に当たります。
上の例では、高額療養費の計算に入るのは一部負担金の2,400円の方で、特別の料金の7,000円は入りません。協会けんぽの高額療養費は令和8年8月から自己負担の上限額が見直されましたが、差額部分が対象外であることは見直し後も変わらず案内されています。
医療費控除:判断の材料と申告のときの注意
医療費控除は、その年の1月1日から12月31日までに払った医療費が一定額を超えたときに受けられる所得控除です。控除額は、払った医療費から保険金などで補てんされる額(高額療養費を含む)を引き、さらに10万円を引いた額です。総所得金額等が200万円未満の人は、10万円の代わりにその5%を引きます。上限は200万円です。対象になるのは、医師などによる診療などの対価のうち、病状などに応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分です。
厚生労働省の通知は、特別の料金を「初診料を算定する初診に相当する療養部分」の費用として患者から取るものと位置づけています。再診の場合は「外来診療料または再診料に相当する療養部分」の費用です。一方で、国税庁のタックスアンサーや確定申告の手引きには、この特別の料金を名指しして医療費控除での扱いを書いた箇所が、今回確認した範囲では見つかりませんでした。なお、タックスアンサーNo.1122には、後発医薬品(ジェネリック医薬品)がある先発医薬品を希望したときに払う「特別の料金」を医療費控除の対象とするQ&Aがあります。これは名前が同じでも別の選定療養で、紹介状なしの特別の料金のことではありません。申告に含めるか迷うときは、領収書を持って所轄の税務署に確認してください。
申告の準備では、次の2点に気をつけてください。
- 病院は、費用ごとに分けて書いた領収証を無料で渡さなければなりません(療養担当規則第5条の2)。特別の料金と一部負担金が分けて書かれた領収証を取っておくと、どの支払いを申告に入れたかを説明しやすくなります。
- 健康保険の「医療費のお知らせ」(医療費通知)を添付すると、明細書の記入を省略できます。ただし省略できるのは、通知に書かれている医療費だけです。通知に載っていない支払いは、自分で明細書に書き込みます。
紹介状の作成料(診療情報提供料(Ⅰ))は健康保険の対象になる費用です。東京国税局は、この作成料の医療費控除での扱いについて文書回答事例を公表しています(紹介先での治療に必要な費用として対象になるかを問い合わせた事例です)。控除の対象外になる費用を混ぜて申告した場合の扱いは、医療費控除で損する費用一覧でまとめています。
病院・保険者の担当者が案内で押さえておくこと
医事課や健康保険組合で問い合わせを受ける方のために、通知が病院に求めている手順を順に挙げます。患者さんに「なぜ払うのか」「どこに書いてあるのか」を説明するときの根拠になります。
- 掲示:特別の料金の額と、緊急その他やむを得ない事情で紹介なしに来た場合は取らないことを、病院の見やすい場所に分かりやすく示します。選定療養の内容と費用は、原則としてウェブサイトにも載せます。
- 説明と同意:選定療養で料金を受け取るときは、事前に患者に内容と費用を説明し、同意を得ます(療養担当規則第5条の4)。
- 報告:特別の料金の内容を決めたり変えたりするときは、別紙様式2で地方厚生(支)局長に報告します。料金を取った患者数、取らなかった患者数とその理由などを記録し、毎年の定例報告で実施状況を報告します。
- 再診の逆紹介:紹介先と事前に調整したうえで、紹介の用意があること・紹介先の名前・次回からの特別の料金の額を書いた文書を渡します。文書を渡した日は料金を取れません。
- 免除の判断:「取ってはならない」患者からは取りません。「取らなくてもよい」患者は、病院の方針に沿って判断します。予約受診や急ぐ必要のない時間外受診など、患者の都合による受診は「取らなくてもよい」に含まれません。
保険者の窓口では、加入者から「特別の料金を高額療養費で戻せないか」と聞かれることがあります。差額部分は対象外であることに加えて、他の医療機関から紹介を受けて受診すれば初診の特別の料金はかからないことを伝えると、次の受診から負担を抑えられます。
よくある質問
Q. 以前その病院にかかったことがあれば、紹介状なしでも初診の料金はかかりませんか。
A. 初診の特別の料金は、医学的に初診といえる診療をしたときに取られます。前に受診したことがあっても、新しい病気で改めて初診として診てもらえば対象になり得ます。一方、ある病気で通っている途中に別の病気で初診を受けた場合は、料金は最初の初診のときだけと決まっているので、追加ではかかりません。
Q. 同じ病院の別の診療科を受診するときも、紹介状が必要ですか。
A. 同じ病院の他の診療科から院内紹介を受けて受診する患者は、病院の判断で特別の料金を取らなくてもよい場合に入っています。院内紹介を受けずに自分で別の科にかかった場合は、この理由には当たりません。ただし、ある病気でその病院に通っている途中に別の病気で初診を受けた場合は、料金は最初の初診のときだけです。受付で院内紹介の扱いを確認してください。
Q. 労災や交通事故のけがで受診した場合はどうなりますか。
A. 労働災害、公務災害、交通事故、自費診療の患者は、病院の判断で特別の料金を取らなくてもよい場合に入っています。「取ってはならない」ではないので、扱いは病院の方針によります。
Q. 紹介状を持って受診すれば、その後はずっと特別の料金はかかりませんか。
A. 紹介を受けて受診した場合、初診の特別の料金はかかりません。ただしその後、病状が落ち着いて病院から他の病院(一般病床200床未満)や診療所への紹介を文書で申し出られたのに、同じ病院を受診し続けると、再診の特別の料金(医科3,000円以上・歯科1,900円以上)がかかります。
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まとめ
- 特定機能病院と、一般病床200床以上の地域医療支援病院・紹介受診重点医療機関は、紹介状なしの患者から特別の料金を取る義務があります。それ以外の一般病床200床以上の病院は、病院の判断で取ることができます。
- 最低額は、初診が医科7,000円・歯科5,000円、再診が医科3,000円・歯科1,900円(消費税込み)です。2022年10月1日から使われており、令和8年度の改定でも変わっていません。
- 救急の患者や国の公費負担医療の対象者などからは取ってはなりません。院内紹介、健診後の精密検査、労災や交通事故などは、病院の判断で免除できます。患者都合の時間外受診や予約受診は免除の理由になりません。
- 特別の料金は保険外併用療養費の差額部分に当たるので、高額療養費の対象外です。
- 医療費控除については、国税庁がこの料金を名指しした資料は確認できませんでした。費用ごとに分けて書かれた領収証を取っておき、迷うときは税務署に確認するのが確実です。
出典
- 保険医療機関及び保険医療養担当規則(昭和32年厚生省令第15号)第5条第2項・第3項、第5条の2、第5条の4
- 厚生労働省保険局医療課長ほか「「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」及び「保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等」の実施上の留意事項について」の一部改正について(令和8年3月27日 保医発0327第6号、令和8年6月1日適用)別添第3の17〜20
- 厚生労働省「紹介状を持たずに特定の病院を受診する場合等の「特別の料金」の見直しについて」および制度案内リーフレット
- 厚生労働省「令和4年度診療報酬改定の概要 外来Ⅰ」
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定 7.外来医療の機能分化・強化等」
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「高額療養費」「ちゃんと知ろう!大病院の特別の料金」
- 国税庁 タックスアンサー No.1120「医療費を支払ったとき(医療費控除)」、No.1119「医療費控除に関する手続について」、No.1122「医療費控除の対象となる医療費」、「医療費控除を受けられる方へ」
- 東京国税局 文書回答事例「診療情報提供書に係る診療情報提供料の自己負担額の医療費控除の取扱いについて」
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