結論から書きます。マイナ保険証を使わずに窓口の支払いを自己負担限度額(1か月の医療費の自己負担の上限)までに抑えるには、方法が2つあります。1つは、資格確認書に「限度額の適用区分」を記載してもらう方法です。もう1つは、限度額適用認定証の交付を受けて、資格確認書と一緒に出す方法です。どちらになるかは加入している保険者(健康保険を運営する市区町村・協会けんぽ・健康保険組合・後期高齢者医療広域連合など)で違います。区分の記載がない資格確認書だけでは、原則として限度額は窓口で適用されません(協会けんぽの70〜74歳の「一般」「現役並みⅢ」のように、所得区分によっては認定証が要らない場合があります)。
この記事は、手元の資格確認書で入院費の限度額が使えるのか分からない本人・家族の方と、窓口でその説明をする病院の医事課や保険者の担当者向けです。「自分の場合はどちらの方法か」「後期高齢者の資格確認書はどうなっているか」「有効期限はいつか」「限度額適用認定証はまだ要るのか」を、判断する順番に沿って説明します。
まず判断:手元の資格確認書だけで限度額が使えるか
資格確認書は、マイナ保険証(健康保険証として使う登録をしたマイナンバーカード)を持っていない人に、保険者が交付する書面です。厚生労働省は、当分の間、マイナ保険証を持っていない人全員に、申請がなくても無償で資格確認書を交付するとしています。資格確認書は従来の健康保険証と同じように、それ1枚で受診できます。ただし、限度額が窓口で適用されるかどうかは別の問題です。次の順に確認してください。
- 資格確認書の券面に、限度額の適用区分が書かれているか。書かれていれば、それを出すだけで済みます。厚生労働省のよくある質問でも、マイナ保険証を使えば持参が不要になる証として、限度額適用認定証と並んで「限度額適用認定などの記載がある資格確認書」が挙げられています。
- 書かれていない場合、加入先がどちらの方法をとっているか。市区町村の国民健康保険では、資格確認書の交付を申請するときに記載を希望できる仕組みがあります(次の章で説明します)。協会けんぽは、限度額適用認定証を別に申請し、資格確認書と一緒に出すよう案内しています。
- 70〜74歳の場合は、所得区分を確認する。協会けんぽの案内では、所得区分が「一般」と「現役並みⅢ」の人は、資格確認書と高齢受給者証を出せば自己負担限度額までの支払いになり、限度額適用認定証は不要です。
- マイナ保険証を使えるようにするか。マイナ保険証で受診すれば、限度額適用認定証の申請は要りません。ただし、協会けんぽは、被保険者が低所得者に当たる場合はマイナ保険証を使うときでも「限度額適用・標準負担額減額認定証」の申請が必要だとしています。
資格確認書に限度額区分を記載してもらう申請
厚生労働省の説明資料(2025年9月時点)には、資格確認書の交付申請書の記入例が載っています。その中に、「任意記載事項」を資格確認書に記載するかどうかの希望をチェックする欄があります。任意記載事項とは、保険者が申請者の希望を受けて券面に載せる追加の情報のことで、次の3つです。
| 任意記載事項 | 記載すると申請・交付が不要になる証 |
|---|---|
| 一部負担金限度額の適用区分 | 限度額適用認定証 |
| 食事療養標準負担額または生活療養標準負担額の減額の適用区分 | 限度額適用・標準負担額減額認定証 |
| 認定を受けた特定疾病および自己負担限度額の区分 | 特定疾病療養受療証 |
同じ資料では、任意記載事項を記載すれば、これらの証を別に申請して交付を受ける必要がなくなると説明しています。
市区町村の国民健康保険については、国民健康保険法施行規則第6条に根拠があります。交付申請書の記載事項の一つが「市町村が定める事項であって申請者が資格確認書への記載を求めるもの」です(第1項第5号)。券面にも、そのうち申請者が記載を求めたものを載せることになっています(第4項第7号)。つまり、申請して交付を受ける場合、区分は申請者が記載を求めたときに載る事項で、何を記載できるかは市町村が決めます。
申請先は加入している保険によって違います。厚生労働省の資料では、次のように案内されています。
| 加入している保険 | 申請書の入手先・相談先 |
|---|---|
| 市区町村の国民健康保険 | 住所地の市町村(特別区を含む)の窓口 |
| 国民健康保険組合 | 国民健康保険組合または各都道府県の窓口 |
| 被用者保険(協会けんぽ・健康保険組合など) | 保険者のWebサイトや問い合わせ先 |
資格確認書の申請は、従来の健康保険証と同じく、親族などの法定代理人や介助者などが代わりに行うこともできます。入院中の本人に代わって家族が手続きする場合の流れは、限度額適用認定証の申請方法と使い方もあわせて参考にしてください。
協会けんぽなど被用者保険の場合:認定証を資格確認書と一緒に出す
会社員などが加入する被用者保険では、資格確認書に区分を記載するのではなく、限度額適用認定証を別に交付している保険者があります。協会けんぽは、マイナ保険証を使えない場合は「限度額適用認定証」を資格確認書と一緒に医療機関の窓口に出すよう案内しています。認定証を受けるには事前の申請が必要です。
70〜74歳の人は、所得区分によって窓口に出すものが変わります。協会けんぽの案内(資格確認書などで受診する場合)をまとめると次のとおりです。
| 所得区分(協会けんぽ) | 高齢受給者証 | 限度額適用認定証等 |
|---|---|---|
| 現役並みⅢ(標準報酬月額83万円以上) | 必要 | 不要 |
| 現役並みⅡ(標準報酬月額53万〜79万円) | 必要 | 必要 |
| 現役並みⅠ(標準報酬月額28万〜50万円) | 必要 | 必要 |
| 一般 | 必要 | 不要 |
| 低所得Ⅱ・低所得Ⅰ | 必要 | 必要(限度額適用・標準負担額減額認定証) |
協会けんぽでは、低所得者に当たる人は「健康保険限度額適用認定申請書」では申請できず、「健康保険限度額適用・標準負担額減額認定申請書」を出すことになっています。健康保険組合に加入している場合は、どちらの方式か、どの様式を使うかを組合の案内で確かめてください。
後期高齢者の資格確認書:暫定措置と2026年8月以降
後期高齢者医療制度の加入者は、75歳以上の人と、65〜74歳で一定の障害の状態にあると後期高齢者医療広域連合から認定を受けた人です。この制度の従来の健康保険証は、2025年7月31日に有効期限を迎えました。
後期高齢者には、ほかの制度とは違う暫定措置がとられてきました。厚生労働省とデジタル庁の案内の要点は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 交付の対象 | マイナ保険証を持っているかどうかに関係なく、加入者全員(新たに加入する人を含む) |
| 申請の要否・費用 | 申請不要・無償 |
| 暫定措置の期間 | 2026年7月末まで |
| 交付された資格確認書の有効期限 | 2026年7月末まで |
| 2026年8月以降 | 厚生労働省は、交付などの詳細は加入している広域連合の情報を確認するよう案内 |
今日(2026年10月19日)の時点では、暫定措置の期間はすでに過ぎています。2026年8月以降の扱いについて、厚生労働省のページは全国共通の内容を示さず、各広域連合の案内を見るよう求めています。そのため、手元の資格確認書の有効期限と、限度額の区分が書かれているかを券面で確かめてください。分からない点は、加入している広域連合の案内で確認してください。なお、暫定措置の間は、マイナ保険証を持つ後期高齢者もマイナ保険証と資格確認書の両方を持つことができるとされていました(厚生労働省資料、2025年9月時点)。
ご高齢の方や障害のある方など、マイナンバーカードでの受診が難しく配慮が必要な人は、申請すれば資格確認書が交付されます。こうして交付された場合は、更新のときに改めて申請する必要はありません。後期高齢者の現役並み所得の判定や払い戻し額の計算は、後期高齢者の限度額適用認定証【現役並み所得判定と還付額計算】で扱っています。
有効期限:資格確認書と限度額適用認定証は別々に決まる
資格確認書と限度額適用認定証は、有効期限の決まり方が違います。資格確認書は5年以内で保険者が決め、協会けんぽの認定証は最長1年です。窓口で「資格確認書は有効なのに限度額が効かない」と言われる原因になりやすいところです。
| 書類 | 有効期限 | 根拠・出典 |
|---|---|---|
| 資格確認書(全般) | 5年以内で保険者が設定 | 厚生労働省「資格確認書について」 |
| 資格確認書(市区町村国保) | 交付の日から5年を超えない範囲で市町村が定める | 国民健康保険法施行規則第6条第3項 |
| 資格確認書(後期高齢者・暫定措置で交付されたもの) | 2026年7月末まで | 厚生労働省「資格確認書について」 |
| 限度額適用認定証(協会けんぽ) | 申請書を受け付けた月の1日(資格を取得した月は資格取得日)から最長1年 | 協会けんぽ「限度額適用認定証」 |
| 限度額適用認定証(協会けんぽ・2026年8月以降の交付分) | 最長で2027年7月31日まで | 協会けんぽ「限度額適用認定証」 |
協会けんぽの認定証の期限が2027年7月31日までに短くなっているのは、2027年8月に高額療養費の制度改正にともなう所得区分の見直しが予定されているためです。協会けんぽは、その後も必要な場合は2027年8月以降に改めて申請するよう案内しています。また、申請書を受け付けた月より前の月の分の認定証は交付されません。入院が決まったら早めに申請してください。
限度額適用認定証との関係と、窓口での扱い
病院の医事課や保険者の担当者が案内するときに押さえておきたい点を、場面ごとにまとめます。
| 患者が出したもの | 限度額の扱い |
|---|---|
| マイナ保険証 | オンライン資格確認で限度額情報が医療機関に提供される。高齢受給者証、限度額適用認定証、限度額適用・標準負担額減額認定証、特定疾病療養受療証の提示は不要(協会けんぽでは、被保険者が低所得者に当たる場合は限度額適用・標準負担額減額認定証の申請が必要) |
| 区分の記載がある資格確認書 | 限度額適用認定証などを別に出す必要はない |
| 区分の記載がない資格確認書+限度額適用認定証 | 認定証の区分で窓口負担が限度額までになる(協会けんぽの方式) |
| 区分の記載がない資格確認書のみ | 原則として窓口では限度額が適用されない。ただし、協会けんぽの70〜74歳の「一般」「現役並みⅢ」は、高齢受給者証と一緒に出せば認定証なしで限度額までの支払いになる |
マイナ保険証の場合、顔認証付きカードリーダーで限度額情報の提供に同意する画面は省略されています。2024年10月7日にリリースが始まった改修で、同意は不要になりました。厚生労働省のよくある質問では、マイナ保険証による窓口での限度額適用は同一月・同一医療機関の支払いに限るとされています。
認定証を月の途中で受け取った場合、協会けんぽの案内では、同じ月のうちに病院へ提示すれば、その月の分はさかのぼって適用されます。病院で精算できることもあり、できなければ後日「高額療養費支給申請書」を出します。前の月以前にはさかのぼれません。限度額は医療機関ごと、入院と外来の別に適用されます。そのため、同じ月に複数の医療機関でそれぞれ21,000円以上の自己負担があり、合計で限度額を超えるときも、高額療養費支給申請書の提出が必要です。窓口で一度全額を払った場合の払い戻しの計算は、限度額適用認定証を忘れたら?全額負担時の払戻請求と計算方法を参照してください。
移行期の扱いも確認しておきます。有効期限が切れた健康保険証や「資格情報のお知らせ」だけを持ってきた患者について、厚生労働省は令和7年6月27日の事務連絡で暫定的な対応を示しました。被保険者番号などでオンライン資格確認システムに照会し、3割などの負担割合で請求してよいというものです。この対応は当初、令和8年3月末までとされていましたが、令和8年3月25日の事務連絡で令和8年7月末まで続けることになりました。そして2026年7月31日に終わっています。今は、マイナ保険証か資格確認書を持ってきてもらうのが基本です。
よくある質問
Q. 申請しないで届いた資格確認書に区分が書かれていません。入院前に何をすればよいですか。
市区町村の国民健康保険では、資格確認書の交付を申請する場合、区分は申請者が記載を求めたときに載る事項です(国民健康保険法施行規則第6条第4項第7号)。区分を記載した資格確認書が欲しい場合は、加入先の窓口に申し出てください。すでに持っている資格確認書に区分を追加する場合の手続き(再交付になるかどうかなど)は保険者によって違うので、窓口で確かめてください。協会けんぽに加入している場合は、限度額適用認定証を申請します。
Q. 協会けんぽの資格確認書に区分を書いてもらうことはできますか。
協会けんぽの案内では、マイナ保険証を使えない場合は限度額適用認定証を資格確認書と一緒に出すことになっています。認定証の申請は「健康保険限度額適用認定申請書」で、低所得者に当たる場合は「健康保険限度額適用・標準負担額減額認定申請書」を使います。
Q. マイナ保険証を持っている後期高齢者は、どちらを出せばよいですか。
暫定措置の間(2026年7月末まで)、後期高齢者はマイナ保険証と資格確認書の両方を持てるとされていました。マイナ保険証で受診すれば、限度額情報はオンライン資格確認で医療機関に提供されるので、認定証などを出す必要はありません。資格確認書で受診する場合は、券面の有効期限と区分の記載を確認してください。2026年8月以降の資格確認書の扱いは、加入している広域連合の案内で確認してください。
Q. 資格確認書の有効期限が近づいたら、自分で更新の申請が必要ですか。
有効期限は5年以内で保険者が決めます。更新の手順も保険者ごとの案内によります。厚生労働省は、配慮が必要な人として申請により資格確認書の交付を受けた人は、更新のときの申請は不要だとしています。
💡 実務で限度額を判定する立場の方へ。2026年8月改正の所得区分・世帯合算・年間上限をまとめた実務チェックガイドを無料で配布しています。
まとめ
- 資格確認書だけで受診はできますが、窓口で限度額を適用するには、原則として、券面に区分が記載されているか、限度額適用認定証を一緒に出すことが必要です(協会けんぽの70〜74歳の「一般」「現役並みⅢ」など、所得区分によっては認定証が要らない場合があります)。
- 市区町村の国民健康保険では、資格確認書の交付申請のときに任意記載事項として区分の記載を希望できます。記載されれば認定証は別に要りません。
- 協会けんぽは、限度額適用認定証を資格確認書と一緒に出す方式です。2026年8月以降に交付される認定証の有効期限は最長2027年7月31日までです。
- 後期高齢者には2026年7月末まで有効な資格確認書が全員に交付されました。2026年8月以降の扱いは各広域連合の案内で確認します。
- 資格確認書の有効期限は5年以内で保険者が決め、協会けんぽの認定証は最長1年です。2つの期限を別々に確認してください。
出典
- 国民健康保険法施行規則 第6条(資格確認書の交付等)第1項第5号・第2項・第3項・第4項第7号
- 厚生労働省「資格確認書について(マイナ保険証を使わない場合の受診方法)」
- 厚生労働省保険局「マイナ保険証と資格確認書について(2025年9月時点)」
- 厚生労働省「マイナンバーカードの健康保険証利用についてよくある質問」
- 厚生労働省保険局「12月2日以降の医療機関・薬局の窓口における資格確認方法等について」
- 厚生労働省保険局医療課・医療介護連携政策課 事務連絡(令和7年6月27日)「健康保険証の有効期限切れに伴う暫定的な取扱いに関する疑義解釈資料の送付について」
- 厚生労働省保険局医療介護連携政策課 事務連絡(令和8年3月25日)「マイナ保険証の円滑な利用に向けた対応について(周知)」
- 厚生労働WEBマガジン「医療機関・薬局では、マイナ保険証か資格確認書をご提示ください」
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「限度額適用認定証」
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「医療費が高額になりそうなとき(限度額適用認定証等)」
- デジタル庁ニュース「2025年8月以降順次切り替え!健康保険証の注意点は?(後期高齢者医療制度・国民健康保険の被保険者の方)」(2025年7月22日)
取り扱いは加入している保険者(協会けんぽ・健康保険組合・市町村国保・後期高齢者医療広域連合など)によって異なる場合があります。実際の手続きは、各保険者の窓口で最新の取り扱いをご確認ください。
