病気やけがで休んでいる社員が退職する場合、条件を満たせば退職後も傷病手当金を受け取り続けられます。これを「資格喪失後の継続給付」といいます。
ただし、退職日の過ごし方ひとつで対象外になることがあります。この記事は、休職者の退職に立ち会う人事・総務の方に向けて、条件と説明のポイントを整理したものです。
受け取れる条件は2つ
- 退職日(資格喪失日の前日)までに、継続して1年以上の被保険者期間がある
任意継続被保険者の期間、共済組合の組合員である被保険者の期間、国民健康保険に加入していた期間は含みません - 資格を失ったときに、傷病手当金を受けているか、受ける条件を満たしている
2つめの「受ける条件」とは、療養のために働けず、連続した3日間(待期期間)を終えていることなどです。待期期間は暦日で数え、土日や有給休暇の日も含みます。
退職日に出勤すると対象外になる
協会けんぽは「退職日に出勤したときは、継続給付を受ける条件を満たさない」としています。退職日に働けたのであれば、その時点で「働けない状態」ではなかったことになるためです。
よくあるのが、最終日にあいさつや引き継ぎ、私物の片付けのために出社するケースです。本人は数時間のつもりでも、出勤の扱いになれば継続給付を受けられなくなります。
- 引き継ぎや返却物のやりとりは、退職日より前か、郵送・オンラインで済ませる
- 退職日の勤怠を出勤として記録しないよう、勤怠の担当者とも共有する
退職後に受け取れる期間
支給期間は、同じ病気・けがについて支給を開始した日から通算して1年6か月です。退職しても、この期間の残りの範囲で支給が続きます。
ただし、退職後にいったん働ける状態になると、そこで終わりです。その後にまた働けなくなっても、傷病手当金は支給されません。
ほかの給付との関係
| 給付 | 関係 |
|---|---|
| 老齢年金 | 退職後に老齢年金を受けられる場合、原則として傷病手当金は支給されない。ただし年金額の360分の1が傷病手当金の日額より低ければ、差額が支給される |
| 出産手当金 | 両方を受けられる期間は出産手当金が優先。傷病手当金の額のほうが多ければ差額が支給される |
| 雇用保険の基本手当(失業給付) | 基本手当は「働ける状態」が前提なので、働けない期間は受けられない。病気で長く働けない場合は、ハローワークで受給期間の延長を相談する |
支給額
1日あたりの額は、支給開始日以前の12か月間の各標準報酬月額を平均した額 ÷ 30日 × 3分の2です。退職後も在職中に決まった額で支給されます。
会社がやること ─ 退職前の説明と記録
- 退職の話が出たら、被保険者期間が継続して1年以上あるかを確認する(入社日と、前の健康保険から空白なく続いているか)
- 本人に、退職日に出勤しないことと、その理由を説明する
- 退職後の申請先(加入していた協会けんぽ・健康保険組合)と、申請書の入手方法を伝える
- 在職中の期間を含む申請には事業主の証明が必要になるので、退職後の連絡先と、証明の依頼を受ける窓口を決めておく
- 台帳に、休業開始日・待期期間が終わった日・支給開始日・退職日の勤怠(出勤なし)・説明した日を残す
よくある質問
退職後に任意継続被保険者になれば、新しく傷病手当金を受けられますか
継続給付の条件の「1年以上」には任意継続の期間は含まれません。任意継続に加入するかどうかとは別に、退職時点で上の2つの条件を満たしているかで判断してください。
退職日に有給休暇を使うのは問題ありませんか
扱いは加入している健康保険によって確認が必要です。少なくとも「出勤した」扱いにならないよう、勤怠の記録を本人と会社でそろえてください。
転職したばかりで1年に届きません
判断は「継続して1年以上」です。前の勤務先の健康保険から空白なく続いている場合の扱いは、加入している協会けんぽ・健康保険組合に確認してください。
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まとめ
- 退職後も受け取れる条件は、継続1年以上の被保険者期間と、退職時に受けているか受ける条件を満たしていること
- 退職日に出勤すると対象外。引き継ぎや片付けは退職日より前か、郵送・オンラインで
- 期間は支給開始から通算1年6か月の残り。いったん働ける状態になったら終わり
- 老齢年金とは調整あり(差額支給)、出産手当金が優先、失業給付とは同時に受けられない
- 会社は、退職前に期間の確認と退職日の説明をし、勤怠の記録を残す
出典
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「資格喪失後の保険給付」
- 健康保険法(傷病手当金・資格喪失後の継続給付)
取り扱いは加入している健康保険によって異なる場合があります。協会けんぽ・健康保険組合の窓口で最新の取り扱いをご確認ください。

