人工透析を受けている慢性腎不全などの患者は、「特定疾病療養受療証」の交付を受けると、1か月の窓口負担が原則1万円までになります。高額療養費の「長期高額疾病」の特例です。
この記事は、医療機関の受付・医事課と、保険者の給付担当に向けて、対象・限度額・申請の流れと、窓口で起きやすい行き違いを整理したものです。
対象になる3つの疾病
| 疾病 | 条件(申請書の表記) |
|---|---|
| 血友病 | 血漿分画製剤を投与している先天性血液凝固第Ⅷ因子障害または第Ⅸ因子障害 |
| 慢性腎不全 | 人工腎臓(人工透析)を実施している |
| HIV感染症を含む後天性免疫不全症候群 | 抗ウイルス剤を投与している(厚生労働大臣の定める者に限る) |
1か月の自己負担限度額
| 対象 | 限度額 |
|---|---|
| 人工透析を実施している慢性腎不全 | 10,000円 |
| 上のうち、診療のある月の標準報酬月額が53万円以上の70歳未満の被保険者またはその70歳未満の被扶養者 | 20,000円 |
| 血友病、抗ウイルス剤を投与している後天性免疫不全症候群 | 10,000円 |
(協会けんぽの案内。2026年8月の見直し後のページでも同じ額です)
2万円になるのは人工透析の上位所得者だけです。血友病・HIVは所得にかかわらず1万円です。国保や健保組合では上位所得の判定の書き方が異なるので、各保険者の基準を確認してください。
窓口で1万円か2万円かを見分けるには
受療証の表面に「自己負担限度額」の欄があり、1万円か2万円かが書かれています(2006年10月に2万円の区分ができたとき、厚生労働省が様式に欄を加えると示したもの)。窓口では所得を聞かず、受療証の記載で判断します。
医療機関ごと・入院と外来は別
同じ月に複数の医療機関で対象疾病の療養を受けた場合や、同じ医療機関でも入院と外来の両方を受けた場合は、それぞれで限度額までの支払いが必要です(協会けんぽ船員保険部の案内)。「今月はもう1万円払った」という患者には、この点を説明します。
申請の流れ(協会けんぽの場合)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請書 | 健康保険特定疾病療養受療証交付申請書 |
| 医師の証明 | 申請書の医師の証明欄に記入してもらうか、疾病にかかったことを証明する診断書等を添付 |
| 提出 | 加入している協会けんぽ支部へ郵送、または電子申請 |
| 発効日 | 申請月の初日(健康保険に加入した月の場合は資格取得日) |
協会けんぽは「月を遡って発効ができないため、早めのお手続きを」と案内しています。透析の導入が決まった時点で、医療機関の側から申請を案内すると取りこぼしがありません。
マイナ保険証・資格確認書との関係
- 受療証の交付を受けていれば、マイナ保険証で受診したときは受療証の窓口提示が不要になります(協会けんぽの申請書の案内)
- ただし、オンライン資格確認を導入していない医療機関や、保険者にマイナンバーが登録されていない場合は、受療証の提示が必要です
- 資格確認書で受診する場合は、あわせて受療証を窓口に出してもらいます
- 後期高齢者医療では、特定疾病区分を併記した資格確認書を案内している広域連合もあります(兵庫県後期高齢者医療広域連合など)
医療機関の窓口でやること
- 透析の導入が決まった時点で、受療証の申請を患者・家族に案内する(発効は申請月の初日からで、前月以前にはさかのぼれないため)
- 受療証を受け取ったら、表面の自己負担限度額欄(1万円/2万円)と有効期間を確認して登録する
- マイナ保険証で受診した患者は、オンライン資格確認で特定疾病の情報が取れるかを確認する。取れない場合は受療証の提示を求める
- 資格確認書で受診した患者には、受療証もあわせて出してもらう
- 同じ月にほかの医療機関でも対象疾病の療養を受けている患者には、医療機関ごとに限度額までの負担があることを説明する
保険者の給付担当が確認すること
- 申請書の疾病名欄(3つのどれか)と、医師の証明欄の記入または診断書等の添付がそろっているか
- 人工透析で70歳未満の場合、診療のある月の標準報酬月額が53万円以上か(2万円の区分になるか)
- 健康保険に加入した月の申請なら、発効日を資格取得日にする
💡 実務で限度額を判定する立場の方へ。2026年8月改正の所得区分・世帯合算・年間上限をまとめた実務チェックガイドを無料で配布しています。
よくある質問
血友病の患者も、所得が高いと2万円になりますか
なりません。2万円の区分は、人工透析を実施している慢性腎不全の70歳未満の上位所得者だけです。
申請が月末になった場合、その月の分は対象ですか
発効日は申請月の初日なので、申請した月の分は対象です。前月以前にはさかのぼれません。
保険者ごとの様式の入手先は高額療養費の様式はどこで手に入るかにまとめています。
取り扱いは加入している保険者(協会けんぽ・健康保険組合・市町村国保・後期高齢者医療広域連合など)によって異なる場合があります。実際の手続きは、各保険者の窓口で最新の取り扱いをご確認ください。

