医療費控除と配偶者控除を同時申告する還付額の計算方法【実例付き】

医療費控除と配偶者控除を同時申告する還付額の計算方法【実例付き】 医療費控除

医療費が年間10万円を超えた年に「配偶者控除も使えるけど、どちらをどう申告すればいいの?」と迷っていませんか。

結論から先にお伝えします。医療費控除と配偶者控除は独立した制度なので同時に申告でき、正しい方法で申告すれば還付額を最大化できます。 ただし、「夫婦どちらが医療費控除を申告するか」の選択を誤ると、数万円単位で還付額に差が出ます。

この記事では以下のことをすべて解説します。

  • 医療費控除と配偶者控除それぞれの仕組みと計算式
  • 控除の優先順位と最適な申告者の選び方
  • 夫婦2パターンの具体的なシミュレーション実例
  • 確定申告書の書き方・必要書類・提出期限まで

税務署や国税庁の公式資料を根拠に、実務で使えるレベルで解説しますので、ぜひ最後までお読みください。



医療費控除と配偶者控除の基本をおさらい

医療費控除とは

法的根拠:所得税法第73条

医療費控除は、納税者本人または生計を一にする配偶者・親族のために支払った医療費が一定額を超えた場合に、超過分を所得から差し引ける制度です。

医療費控除額 =(支払医療費合計 − 保険金等で補填された金額)− 10万円
※ 総所得金額等が200万円未満の人は「総所得金額等 × 5%」が10万円の代わりに適用
※ 控除の上限額は200万円

たとえば年間医療費が30万円(保険金補填なし)なら、控除額は 30万円 − 10万円 = 20万円 です。

対象となる主な医療費

区分 具体例
診察・治療費 内科・歯科・眼科などの診察費、治療費
薬代 処方薬、治療目的のOTC医薬品
入院費 入院料(食事代含む)、差額ベッド代(医学的必要性がある場合)
移送費 緊急時のタクシー代、救急車費用
不妊治療 人工授精・体外受精・顕微授精
歯列矯正 子どもの成長段階での矯正、医学的必要性がある場合
その他 寝たきり患者のおむつ代(医師の証明書が必要)

対象外となる主な費用

  • 健康診断・人間ドック(異常が見つからなかった場合)
  • 予防接種・予防目的のサプリメント
  • 治療目的でない美容整形・審美歯科
  • 通院のためのガソリン代・自家用車の駐車料金
  • 医療保険・生命保険の保険料

配偶者控除・配偶者特別控除とは

法的根拠:所得税法第83条・第83条の2

配偶者控除は、納税者本人(以下「申告者」)の合計所得金額が1,000万円以下で、かつ配偶者の合計所得金額が48万円以下(給与収入のみなら年収103万円以下)の場合に適用される控除です。

申告者の合計所得金額 配偶者控除額(一般) 配偶者控除額(老人※)
900万円以下 38万円 48万円
900万円超950万円以下 26万円 32万円
950万円超1,000万円以下 13万円 16万円
1,000万円超 適用不可 適用不可

※老人控除対象配偶者:配偶者が70歳以上

配偶者の所得が48万円超133万円以下の場合は配偶者特別控除が段階的に適用されます。


同時申告が可能な理由と控除の優先順位

なぜ同時申告できるのか

医療費控除と配偶者控除は、課税所得を計算する際に適用される「所得控除」という同じカテゴリに属しますが、それぞれ独立した適用要件を持っています。一方を使うともう一方が使えなくなる「二者択一」の関係ではありません。

確定申告書(申告書A・B、または2024年分以降の新様式)では、所得控除の欄にそれぞれ記入欄が独立して設けられており、両方を同時に記載して申告できます。

所得控除の適用順序(優先順位)

所得税法上、所得控除には明確な適用順序があります。課税所得の計算式を確認しましょう。

課税所得金額 = 総所得金額等
            − 所得控除の合計額

所得控除の合計額には以下が含まれる(申告書に記載された順):
① 雑損控除
② 医療費控除(または特例適用のセルフメディケーション税制)
③ 社会保険料控除
④ 小規模企業共済等掛金控除
⑤ 生命保険料控除
⑥ 地震保険料控除
⑦ 寄附金控除
⑧ 障害者控除
⑨ 寡婦控除・ひとり親控除
⑩ 勤労学生控除
⑪ 配偶者控除(または配偶者特別控除)
⑫ 扶養控除
⑬ 基礎控除

重要ポイント:所得控除は「合計した総額を課税所得から差し引く」ため、個々の控除の適用順序によって税額が変わることはありません。医療費控除を先に使うから配偶者控除の効果が薄まる、ということは起きません。両方合算した分だけ課税所得が減ります。

ただし、配偶者控除の適用判定に使う「合計所得金額」には、医療費控除は影響しません。合計所得金額とは各種控除を引く前の所得金額であるため、医療費控除によって配偶者控除の適用可否が変わることはないのです。


還付額の計算式とシミュレーション実例

還付額の基本計算式

還付額(所得税) = 医療費控除額 × 適用税率

適用税率は「課税所得金額」によって決まる(2025年現在):
 195万円以下      :5%
 195万円超330万円以下:10%
 330万円超695万円以下:20%
 695万円超900万円以下:23%
 900万円超1,800万円以下:33%
 1,800万円超4,000万円以下:40%
 4,000万円超     :45%

注意点として、医療費控除の申告によって課税所得が税率の境界をまたぐ場合は、超えた部分と超えない部分で異なる税率が適用されます。


シミュレーション実例①:夫が申告するケース(給与収入600万円)

【家族構成・前提条件】

項目 内容
夫の給与収入 600万円
妻の給与収入 0円(専業主婦)
年間医療費合計 35万円(保険金補填なし)
夫の給与所得控除後の所得 436万円(給与所得控除164万円)

【STEP1:各控除額の計算】

基礎控除:48万円
社会保険料控除:84万円(概算)
配偶者控除:38万円(妻の所得0円、夫の所得900万円以下)
医療費控除:35万円 − 10万円 = 25万円

【STEP2:課税所得の計算(医療費控除なし・あり比較)

◆ 医療費控除なしの場合:
 436万円 − 48万円 − 84万円 − 38万円 = 266万円(課税所得)

◆ 医療費控除ありの場合:
 436万円 − 48万円 − 84万円 − 38万円 − 25万円 = 241万円(課税所得)

【STEP3:所得税額の計算と還付額】

◆ 医療費控除なしの場合(課税所得266万円):
 195万円 × 5% + (266万円 − 195万円) × 10%
 = 97,500円 + 71,000円 = 168,500円

◆ 医療費控除ありの場合(課税所得241万円):
 195万円 × 5% + (241万円 − 195万円) × 10%
 = 97,500円 + 46,000円 = 143,500円

◆ 医療費控除による還付額(所得税分):
 168,500円 − 143,500円 = 25,000円

ポイント:課税所得266万円は10%の税率帯にあるため、医療費控除25万円に対して 25万円 × 10% = 2.5万円 の還付が発生します。


シミュレーション実例②:妻が申告するケース(給与収入150万円)

【家族構成・前提条件】

項目 内容
夫の給与収入 600万円
妻の給与収入 150万円(パートタイム)
年間医療費合計 35万円(保険金補填なし)
妻の合計所得金額 95万円(給与所得控除55万円)

この場合、妻の合計所得金額が48万円を超えているため配偶者控除は適用不可です。代わりに夫は配偶者特別控除(妻の所得95万円の場合、16万円)を受けられます。

【STEP1:妻が医療費控除を申告した場合】

妻の課税所得計算:
 給与所得:95万円
 基礎控除:48万円
 社会保険料控除:14万円(概算)
 医療費控除:35万円 − 10万円 = 25万円

 課税所得 = 95万円 − 48万円 − 14万円 − 25万円
      = 8万円

 所得税額 = 8万円 × 5% = 4,000円
◆ 医療費控除なし(妻)の場合:
 95万円 − 48万円 − 14万円 = 33万円(課税所得)
 所得税額 = 33万円 × 5% = 16,500円

◆ 医療費控除あり(妻)の場合:所得税額 4,000円

◆ 妻が申告した場合の還付額:
 16,500円 − 4,000円 = 12,500円

【STEP2:夫が医療費控除を申告した場合(再掲)】

◆ 夫が申告した場合の還付額:25,000円(実例①と同じ条件)

【比較結果】

申告者 医療費控除額 適用税率 還付額(所得税)
夫(年収600万円) 25万円 10% 25,000円
妻(年収150万円) 25万円 5% 12,500円

結論:所得が高い夫が医療費控除を申告した方が、還付額が2倍になります。


夫婦どちらが医療費控除を申告すると有利か

基本原則:税率が高い方(所得が多い方)が申告する

医療費控除は「控除額 × 適用税率」が還付額になります。したがって適用税率が高い=所得が多い方が申告するほど、同じ控除額でも還付額が大きくなります

例)医療費控除額30万円の場合:

 税率5%  の人が申告 → 還付額 30万円 × 5%  = 15,000円
 税率10% の人が申告 → 還付額 30万円 × 10% = 30,000円
 税率20% の人が申告 → 還付額 30万円 × 20% = 60,000円

例外パターン:妻が申告する方が有利なケース

以下のような状況では、所得が低い配偶者(妻)が申告した方が有利または結果が同じになることがあります。

ケース①:夫の課税所得がゼロに近い場合
夫の課税所得がすでに他の控除(住宅ローン控除など)によって大幅に圧縮されており、医療費控除を追加しても税額がほとんど変わらないケース。

ケース②:住宅ローン控除との組み合わせ
住宅ローン控除は「税額控除」(税金そのものを減らす)であり、所得控除と異なります。夫が住宅ローン控除で所得税が既にゼロになっている場合、医療費控除を夫が申告してもメリットがありません。この場合は妻が医療費控除を申告した方が還付を受けられます。

判断フローチャート

【医療費控除の申告者を決める手順】

STEP1:夫婦それぞれの「課税所得金額」を把握する
    ↓
STEP2:夫の課税所得 > 妻の課税所得か確認
    ↓
STEP3:夫に住宅ローン控除があり所得税額がゼロになるか確認
    ↓
STEP4:住宅ローン控除なし → 所得が高い方(多くは夫)が申告
    住宅ローン控除あり所得税ゼロ → 妻が申告

配偶者控除の適用可否への影響に注意

医療費控除を申告することで、配偶者の所得金額は変わりません(医療費控除は申告者本人の所得から引くため)。したがって配偶者控除の適用判定(配偶者の合計所得が48万円以下かどうか)には影響しません。

ただし、医療費控除の申告によって申告者本人の合計所得金額が変わるわけではない点にも注意が必要です。医療費控除は「合計所得金額」から差し引くものではなく、「課税所得金額」を計算する過程で差し引く所得控除です。そのため配偶者控除の適用可否には一切影響しません。


確定申告の手順・必要書類・提出期限

必要書類一覧

書類名 入手先 備考
確定申告書(申告書B、または新様式) 国税庁HPまたは税務署 e-Taxでも作成可
源泉徴収票 勤務先 夫婦各自のもの
医療費の領収書 各医療機関 5年間保存義務あり(2017年分以降)
医療費集計フォーム(または医療費通知) 国税庁HPよりダウンロード 健康保険組合の医療費通知でも代替可
マイナンバー確認書類 ご自身のもの マイナンバーカードまたは通知カード+身分証
配偶者の所得を証明する書類 配偶者の勤務先等 無収入の場合は不要なことも

2017年分以降の申告から、医療費の領収書は提出不要になりました(ただし申告期限から5年間は自宅での保存が義務)。代わりに「医療費集計フォーム」または「医療費通知(お知らせ)」を添付します。

申告手順(e-Tax利用の場合)

STEP1:医療費の集計

1. 1月1日〜12月31日に支払った全ての医療費を家族分まとめて集計
2. 医療機関ごと・家族構成員ごとに整理
3. 国税庁の「医療費集計フォーム(Excel)」に入力

STEP2:源泉徴収票の確認

1. 給与収入・給与所得・社会保険料控除・源泉徴収税額を確認
2. 既に年末調整で適用済みの控除(配偶者控除など)を確認
3. 住宅ローン控除の適用がある場合は残高証明書も用意

STEP3:確定申告書の作成(国税庁「確定申告書等作成コーナー」)

1. https://www.keisan.nta.go.jp にアクセス
2. 「所得税」→「給与・年金の方」を選択
3. 源泉徴収票の数値を入力
4. 医療費控除の欄に集計フォームの合計額を入力
5. 配偶者控除(または特別控除)の欄を確認・入力
6. 還付金額が自動計算されることを確認

STEP4:提出

【e-Tax提出】マイナンバーカード+スマートフォンまたはICカードリーダー
【郵送提出】申告書を印刷し、税務署宛に簡易書留で送付
【窓口提出】管轄の税務署に直接持参

申告期限・還付申告の特例

申告区分 申告期間 備考
通常の確定申告 翌年2月16日〜3月15日 2024年分は2025年3月17日まで(土日のため)
還付申告(医療費控除のみの場合) 翌年1月1日〜5年間 還付のみが目的の場合は期間外でも申告可能

重要:給与所得者が医療費控除のみを目的に確定申告する場合は「還付申告」となり、翌年1月1日から申告できます(2月16日を待つ必要はありません)。


住民税への影響と見落としがちな注意点

住民税も自動的に軽減される

確定申告で医療費控除を申告すると、翌年の住民税(市区町村民税+都道府県民税)も自動的に軽減されます。住民税の税率は一律10%です。

住民税の軽減額 = 医療費控除額 × 10%

例)医療費控除額25万円の場合:
 住民税軽減額 = 25万円 × 10% = 25,000円(翌年度分)

つまり実例①(給与収入600万円の夫が申告)のケースでは、

所得税還付額:25,000円
住民税軽減額:25,000円
合計節税効果:50,000円

と、所得税の還付だけでなく翌年の住民税も合わせると節税効果は2倍になることを忘れないでください。

見落としがちな注意点5選

注意点①:保険金で補填された金額は必ず差し引く
医療保険・生命保険・高額療養費制度で受け取った給付金・還付金は、支払医療費から差し引いた後の金額が控除の対象です。受け取った給付が申告書に反映されていないと、税務署から修正を求められることがあります。

注意点②:高額療養費との二重控除は不可
健康保険の高額療養費制度で払い戻しを受けた金額は、医療費控除の計算から除外が必要です。申請中で未受領の場合は、受領見込み額を差し引いて計算します(後日受領後に修正申告が必要になる場合も)。

注意点③:医療費控除と「セルフメディケーション税制」は選択適用
2017年から始まったセルフメディケーション税制(OTC医薬品の購入費が1.2万円超の場合に適用)は、通常の医療費控除との選択適用です。どちらか一方しか使えません。どちらが有利か試算してから選びましょう。

注意点④:配偶者の医療費を自分の申告にまとめられる
「生計を一にする」配偶者や家族の医療費は、誰が支払ったかに関わらず、一人の申告にまとめることができます。家族全員分の医療費を所得の高い方の申告に集約することで、10万円の壁を超えやすくなり控除額も増えます。

注意点⑤:確定申告後に源泉徴収票の記載内容が変わることがある
年末調整で適用済みの配偶者控除が確定申告で変更になる場合(たとえば配偶者の収入が後から判明した場合)、源泉徴収票を再発行してもらう必要が生じることがあります。


よくある質問(FAQ)

Q1. 医療費控除と配偶者控除は必ず同じ人が申告しなければならないですか?

A. いいえ。医療費控除と配偶者控除は別々の人が申告することはできません。ただし、「医療費控除は夫が申告し、配偶者控除は夫が受ける」という形は問題なく、一人の申告書に両方記載できます。医療費控除は「誰の医療費か」ではなく「誰が支払ったか(または生計を一にしているか)」で申告者が決まります。

Q2. 妻が無収入でも医療費控除の申告は必要ですか?

A. 妻の収入が0円で所得税がゼロの場合は、妻が医療費控除を申告しても還付はゼロです。その場合は夫の確定申告書に家族全員分の医療費をまとめて記載し、夫が医療費控除を受けるのが正解です。

Q3. 年末調整で配偶者控除を受けましたが、医療費控除の確定申告が必要な場合、また配偶者控除の書類を出し直す必要がありますか?

A. 年末調整で配偶者控除を適用済みであれば、確定申告書を作成する際にその情報を引き継いで入力します。改めて勤務先への書類提出は不要です。ただし確定申告書内で配偶者控除の欄も正確に記載することが必要です。

Q4. 医療費控除を申告すると配偶者の「扶養」が外れることはありますか?

A. ありません。医療費控除は申告者本人の課税所得を減らすだけで、配偶者の収入や所得には一切影響しません。配偶者控除の適用要件(配偶者の合計所得48万円以下など)は変わらないため、扶養が外れる心配は不要です。

Q5. 過去の医療費控除を申告し忘れていた場合、今から申告できますか?

A. できます。医療費控除を目的とした「還付申告」は、該当年の翌年1月1日から5年以内であれば申告可能です(所得税法第122条)。2020年分であれば2025年12月31日まで申告できます。過去の領収書と源泉徴収票を用意して、税務署または e-Tax で申告してください。

Q6. 医療費控除と住宅ローン控除を同時に申告できますか?

A. できます。ただし、住宅ローン控除は「税額控除」(算出された所得税から直接引く)であるため、医療費控除(所得控除)で課税所得を減らした後の所得税から住宅ローン控除が引かれます。住宅ローン控除で所得税がすでにゼロになっている場合、医療費控除を夫が申告してもメリットがない可能性があります(注意点②も参照)。


まとめ:医療費控除と配偶者控除の同時申告で還付を最大化する3つのポイント

この記事の要点を最後にまとめます。

① 医療費控除と配偶者控除は同時申告できる
両者は独立した制度であり、一方が他方の申告を妨げることはありません。確定申告書に両方記載するだけです。

② 医療費控除は所得が高い方(税率が高い方)が申告する
同じ控除額でも、適用される税率が高いほど還付額が増えます。ただし住宅ローン控除で所得税がゼロになっている場合は例外です。

③ 住民税の軽減も見落とさない
所得税の還付に加えて翌年の住民税も軽減されるため、両者をあわせた節税効果を正確に把

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