長期収載品の選定療養|2026年6月から価格差の2分の1、対象外の条件と高額療養費・医療費控除

高額療養費制度

2024年10月1日に始まった長期収載品の選定療養では、後発医薬品(ジェネリック)がある先発医薬品を患者が自分の希望で選ぶと、通常の1〜3割負担とは別に「特別の料金」がかかります。この料金は当初「先発品と後発品の価格差の4分の1」でしたが、2026年6月1日から「2分の1」に引き上げられました。一方、医師が医療上必要と判断した場合や、薬局に後発品の在庫がない場合は、特別の料金はかかりません。特別の料金は高額療養費の計算には入りませんが、医療費控除の対象にはなります。

この記事は、先発品を使い続けると負担がいくら増えるのかを知りたい患者さんとご家族、そして窓口で「なぜこの料金がかかるのか」と聞かれる医療機関・薬局・保険者の担当者向けです。対象になるかどうかの判断の流れ、料金の計算、払った後の高額療養費・確定申告での扱いを、この順に説明します。

いつから何が変わったか:4分の1から2分の1へ

選定療養とは、患者が自分の希望で選んだ療養について、保険診療と併せて保険外の料金を払う仕組みです。健康保険法第63条第2項(第5号)に定められています。長期収載品とは「後発医薬品のある先発医薬品」のことで、いわゆる準先発品も含みます。

2026年度の見直しで「厚生労働大臣の定める評価療養、患者申出療養及び選定療養等の一部を改正する告示」(令和8年厚生労働省告示第116号)が2026年3月27日に告示され、同年6月1日から適用されています。

期間 特別の料金 例:先発品500円・後発品250円、3割負担の場合の窓口負担
2024年9月まで なし 150円
2024年10月〜2026年5月 価格差の4分の1相当(+消費税) 200円(特別の料金68.75円+3割負担131.25円)
2026年6月以降 価格差の2分の1相当(+消費税) 250円(特別の料金137.5円+3割負担112.5円)

例の数字は協会けんぽの解説によるものです。同じ例で後発品(250円)を選ぶと自己負担は75円なので、先発品を選ぶと175円多く払うことになります。特別の料金を除いた残りの部分(先発品の価格から消費税を除いた特別の料金を引いた額)は、これまでどおり保険給付の対象で、通常の自己負担割合がかかります。診察料や調剤料など、薬剤料以外の費用は変わりません。

対象になる薬の条件

後発品がある先発品のすべてが対象になるわけではありません。厚生労働省の留意事項通知(平成18年3月13日保医発第0313003号の第3の30)では、次の①または②に当てはまり、かつ先発品の薬価が、成分・剤形・規格が同じ後発品のうち最も高い薬価を上回っている品目を対象としています。

要件 内容
①5年経過 その先発品の後発品が初めて薬価収載された月の翌月1日から5年を経過したもの(バイオ医薬品を除く)
②置換率50%以上 5年を経過していなくても、後発品の数量シェア(後発品置換え率)が50%以上のもの(バイオ医薬品を除く)
除外 ①に当てはまっても、後発品置換え率が1%未満の品目は対象外

具体的な品目は、厚生労働省のページ「後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について」に掲載されている対象医薬品リストで確認できます。リストには先発品の薬価と「後発品最高価格」が並んでいます。リストは随時更新されており、記事執筆時点の最新版は2026年6月1日から適用のもの(2026年3月31日更新)です。窓口で案内するときは、その時点の最新版を確認してください。

特別の料金がかからないケース

先発品を受け取っても、次の場合は従来どおり保険給付になり、特別の料金はかかりません。窓口で特に質問が多いところです。

ケース 扱い 補足
医療上の必要性があると医師・歯科医師が判断 保険給付 処方箋の「変更不可(医療上必要)」欄に「✓」か「×」が付いている
剤形の理由で後発品が使いにくいと薬剤師が判断 保険給付 飲みにくい、吸湿性のため一包化できない等。単なる剤形の好みは含まれない
医療機関・薬局に後発品の在庫がない等で提供が難しい 保険給付 出荷停止の品目かどうかではなく、その施設で実際に提供できるかで判断する
院内採用品に後発品がない(院内処方) 保険給付 患者が後発品を選べないため
入院中の処方(退院時処方を含む) 対象外 退院時の投薬は入院中の投薬として扱われる
外来で医療機関が行う注射 対象外 在宅自己注射の処方は対象になる
薬剤料が包括される点数を算定した院内処方 対象外 小児科外来診療料、在宅時医学総合管理料など

厚生労働省の疑義解釈では、医療上の必要性として次の4つが想定されています。①先発品と後発品で承認された効能・効果が違う、②後発品で副作用や相互作用、治療効果の差があった、③学会のガイドラインで切り替えないことが推奨されている、④剤形上の理由。後発品の添付文書でその患者への投与が禁忌になっている場合は、実際に後発品を使わなくても②に当たるとされています。一方、使用感など有効成分と直接関係のない理由は、基本的に医療上の必要性とは見なされません。

処方箋のどこで判断されるか(医療機関・薬局向け)

2024年10月から処方箋の様式が変わり、薬局は処方箋の記載をもとに選定療養に当たるかどうかを判断します。

  1. 「変更不可(医療上必要)」欄にチェックがある:保険給付です。このとき「患者希望」欄にはチェックしない決まりです。
  2. 「患者希望」欄にチェックがある:選定療養の対象です。ただし、薬局で説明を受けた患者が後発品を希望すれば、後発品を調剤して保険給付になります。
  3. 先発品が銘柄名で処方され、どちらの欄にもチェックがない:薬局で後発品を調剤できます。患者が先発品を希望すれば選定療養の対象です。
  4. 一般名処方:両方の欄とも記載しません。患者が先発品を希望すれば選定療養の対象です。

通知では、処方医と薬剤師の両方に、後発品を選べることと、先発品を選ぶと特別の料金が生じ得ることを患者に十分説明するよう求めています。医療機関・薬局は、制度の趣旨と特別の料金について院内の見やすい場所に掲示しなければならず、自ら管理するホームページがない場合を除き、原則としてウェブサイトにも載せる必要があります。特別の料金を受け取ったときは、保険部分の自己負担と特別の料金(自費部分)を分けて書いた領収書を交付します。

特別の料金の計算方法

基本の考え方は「先発品の薬価 − 後発品のうち最も高い薬価」の2分の1です。後発品が複数ある場合は、薬価がいちばん高い後発品との差で計算します。特別の料金は消費税の課税対象なので、算出した額に消費税を上乗せして支払います。厚生労働省の簡単な例では、先発品が1錠100円・後発品が1錠60円なら、差額40円の2分の1の20円(+消費税)が特別の料金になります。

実際の窓口計算は、厚生労働省の事務連絡「長期収載品の処方等又は調剤に係る選定療養における費用の計算方法について」に沿って行います。現在の方法では、価格差の2分の1を所定単位(内服薬なら1剤1日分)ごとに点数に換算し、10円を掛けてから消費税を加えます。端数処理があるため、ちょうど2分の1にならないこともあります。事務連絡の計算例は次のとおりです。

項目 2026年6月〜(現行) 2027年3月1日〜
条件 先発品の薬価100.0円、後発品の最高価格49.3円、1日2錠×30日分、3割負担。厚労省マスタ(対象医薬品リスト)上の「価格差の2分の1」は25.35円、「保険外併用療養費の算出に用いる価格」は74.65円
特別の料金(税込) 1,650円 1,672円
保険対象部分(10割) 4,500円 4,500円
保険対象部分の3割負担 1,350円 1,350円
窓口負担の合計 3,000円 3,022円

2026年9月30日の事務連絡で、2027年3月1日から特別の料金の計算方法が変わることが示されました。点数に換算せず、「価格差の2分の1×投薬全量」で計算し、10円未満の端数を処理(5円未満は切り捨て、5円以上は10円に切り上げ。合計が10円未満なら10円)したうえで消費税を加えます。これは、要指導医薬品・一般用医薬品(いわゆる市販薬)と代替性が特に高い医療用医薬品に係る「一部保険外療養」が同じ日に始まるのに合わせた変更です。

高額療養費と医療費控除ではどう扱われるか

先発品を選ぶと、窓口で払うお金は「保険対象部分の自己負担」と「特別の料金」の2つに分かれます。高額療養費と医療費控除では、この2つの扱いが異なります。

支払いの内訳 高額療養費 医療費控除
保険対象部分の自己負担(1〜3割) 計算に含まれる 対象
特別の料金(消費税込み) 対象外 対象(領収書の保存が必要)

高額療養費:協会けんぽは、保険外併用療養費の差額部分は高額療養費の対象にならないと案内しています。特別の料金はこの自費部分にあたるため、月の上限額を超えたかどうかの計算には入りません。差額ベッド代など、ほかの対象外費用については高額療養費の対象外費用リストにまとめています。保険部分と自費部分を分けて計算する考え方は、先進医療と高額療養費と同じです。なお、高額療養費の上限額そのものも2026年8月から見直されています。

医療費控除:厚生労働省の疑義解釈(その4、2025年3月14日)は、特別の料金は先発品の価格の一部にあたる額を払うもので、治療や療養に必要な医薬品の購入の対価として医療費控除の対象になる、としています。ただし、マイナポータル連携で取り込む「医療費通知情報」には特別の料金が含まれません。申告するときは、医療機関や薬局が発行した領収書を保存しておき、その金額を加える必要があります。

よくある質問

Q. 子ども医療費助成で窓口負担がない子どもでも、特別の料金はかかりますか。

かかります。厚生労働省は、この制度では対象外となる人を設けていないとしています。こども医療費助成のような地方単独の公費負担医療や、国の公費負担医療の対象者でも、先発品を希望すれば選定療養の対象です。医療上の必要性があれば従来どおり保険給付になります。

Q. 生活保護を受けている場合はどうなりますか。

生活保護の医療扶助では、長期入院に関する選定療養以外の選定療養は支給の対象になりません。そのため、医療上の必要性がなく、後発品を提供できる場合は、本人が先発品を希望しても後発品が処方・調剤されます。特別の料金を徴収する場面は生じないとされています。医療上の必要性があれば、先発品も医療扶助の対象です。

Q. 薬局に後発品がなく先発品を渡されました。特別の料金を払う必要はありますか。

ありません。その薬局で後発品を提供することが難しく、先発品を調剤せざるを得ない場合は、患者が希望して先発品を選んだことにはならないため、保険給付になります。

Q. 先発品の使用感が好きだという理由では、医療上の必要性になりませんか。

基本的にはなりません。使用感など、有効成分と直接関係のない理由は医療上の必要性として想定されていません。ただし、同じ形の物への強いこだわりが症状として見られる精神疾患などのため、剤形や色が変わると安定して服薬できないと医師が判断した場合は、医療上の必要性が認められるとされています。

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まとめ

  • 長期収載品の選定療養は2024年10月1日に始まり、2026年6月1日から特別の料金が「価格差の4分の1」から「2分の1」相当(+消費税)に引き上げられました。
  • 対象は、後発品の初収載から5年を経過した品目または後発品置換え率50%以上の品目です(バイオ医薬品と置換え率1%未満の品目は除外)。品目は厚生労働省のリストで確認できます。
  • 医療上の必要性がある場合、在庫などの事情で後発品を提供できない場合、入院中(退院時処方を含む)は特別の料金がかかりません。
  • 特別の料金は高額療養費の計算には入りませんが、医療費控除の対象です。マイナポータルの医療費通知情報には含まれないため、領収書を保存しておく必要があります。
  • 2027年3月1日から特別の料金の計算方法(端数処理)が変わります。

出典

  • 健康保険法 第63条第2項(評価療養、患者申出療養及び選定療養。選定療養は同項第5号)
  • 厚生労働大臣の定める評価療養、患者申出療養及び選定療養等の一部を改正する告示(令和8年厚生労働省告示第116号)
  • 「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」及び「保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等」の実施上の留意事項について(平成18年3月13日保医発第0313003号)第3の30(令和8年3月27日保医発0327第6号による改正後)
  • 「長期収載品の処方等又は調剤について」の一部改正について(令和8年3月27日保医発0327第9号)
  • 長期収載品の処方等又は調剤に係る選定療養における費用の計算方法について(厚生労働省保険局医療課事務連絡、令和8年3月27日改正版および令和8年9月30日改正版)
  • 長期収載品の処方等又は調剤の取扱いに関する疑義解釈資料の送付について(その1〜その4)(厚生労働省保険局医療課事務連絡)
  • 厚生労働省「後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について」
  • 厚生労働省 広報誌「厚生労働」2024年10月号 特別企画3
  • 全国健康保険協会(協会けんぽ)「長期収載品の選定療養について」「高額療養費」

取り扱いは加入している保険者(協会けんぽ・健康保険組合・市町村国保・後期高齢者医療広域連合など)によって異なる場合があります。実際の手続きは、各保険者の窓口で最新の取り扱いをご確認ください。

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